内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

予断は許されないが、希望を持つことを禁じられているわけではない

2020-12-17 23:59:59 | 講義の余白から

 明日、私が金曜日に担当している二コマの授業の前期期末試験があります。その前日である今日木曜になって、ある学生から悲痛な叫びのようなメールが届きました。その女子学生はとても真面目で、成績も申し分ありません。宿題の小論文でもよく考えられた文章を毎回提出しています。
 今週は試験が続き、その準備にそれこそ朝から晩まで机に向かっているのに、どうしても集中力が続かず、思うように勉強が捗らない。明日の二つの試験のうち、「近代日本の歴史と社会」の準備に全力を傾注している。もう一つのメディア・リテラシーの方まではもうとても手が回らない。後者だけ、来週か年明けに試験を延期することはできませんか。
 およそそういう文面でした。このような苦境に置かれているのは、おそらく彼女だけではないでしょう。「近代日本の歴史と社会」の試験問題は、他のすべての試験勉強を擲たなければ太刀打ちできないほどの超重量級の問題ですから、学生たちも選択を迫られます。この科目を捨てて、他の科目に集中する学生がいたとしても、それはそれで一つの賢明な選択だと言えるでしょう。それは彼らの自由です。
 15日には外出禁止令も解除され、夜間外出禁止令がそれに取って代わりましたが、試験が続く学生たちにとっては、そんなことは何の助けにもならず、外出禁止令下と同様、家に閉じこもって試験勉強をこの二週間ほど続けてきています。この時期、試験が集中するのは毎年のことですが、今年の場合、11月以降、授業は遠隔のまま終了し、そのまま年内の試験はすべて遠隔ですから、その間にストレスも溜まり、それが集中力低下を引き起こす要因にもなっていることは容易に想像できます。テキトーにできない学生ほど苦しみは大きい。
 とはいえ、さすがに今さら試験を延期するわけにはいきません。そこで、どうしても明日の試験のうちの一つの受験が無理なら、後日別途に答案を提出してもよいと返事しました。今年度から追試が廃止され、学生たちにはそれに代わる「第二のチャンス」を与えることが新評価システムの条項の中に明記されており、私の提案は、その枠内に収まり、例外的な特別措置というわけでもありません。
 ストレスに耐えて勉強をする精神的耐性を身につけることも大切です。あるいは、ストレスを溜めないようにする日々の工夫も必要です。しかし、今年は、コロナ禍に因る外出禁止令と遠隔授業への全面的移行という未曾有の事態に二回も見舞われ、学生たちのメンタルも相当に疲弊していることは否めません。ここは激励の意味も込めて柔軟な対応をすべきと判断しました。
 来月、第三週から始まる後期は、どうやら最初から対面でできることが今日の大学当局からの通達でわかりました。もちろん、予断は許されません。しかし、希望を持つことが禁じられているわけではありません。