今週月曜日から後期の授業が始まった。月曜日から早速一コマ担当授業があった。応用言語学科・英日併修コースの一年生向けの「日本文明」で、これは前期担当した「日本文明入門」の続き。
週一時間の授業で、受講者は四〇名程度。まあ、概してよく聴いてくれているけれど、受講者諸君が実のところ日本のどんなところに関心をもっているのはよくわからずに授業内容を組み立てている。
前期の最初の三回は、現代日本を代表する名作アニメーション映画である『かぐや姫の物語』『君の名は。』『聲の形』をそれぞれ題材とするという、若者の「気を引く」という戦術を採用し、これは見事に当たった。
その後の三回はけっこう重厚な内容を扱ったが、問題そのもの ―〈和〉の原理の根本的欠陥、二次的自然の文化的創造、『風姿花伝』における「花」― には関心をそれなりもってくれたようで、前期中間試験の成績はまずまずであった。
後半は、日本列島の地理的紹介。北海道から沖縄まで、一道・三十二県、日本列島を南下する形で紹介していった。試験結果はまあまあってところ。近畿地方の二府五県と関東地方の一都六県は時間が足りなくて触れることさえできず、後期に回し、一昨日の授業で足早に紹介した。
この地理的紹介の目的は、日本列島全体についての地理的イメージ、特にその多様性を理解してもらうことにある。というのも、日本学科の学生でさえ、日本の地理を一通り勉強する機会はなく、近畿や関東など日本の中心的な都市が集中する地方については歴史の授業でいくらかは知識を得ることはあっても、おそらく都道府県名を全部言える学生はゼロに等しく、ましてや各県・各地方の特徴を簡単にでも説明できる学生はいない。
かねがねこのような地理的知識の欠落が気になっていたが、今年度一年生のこの授業を担当する機会を与えられ、その欠をいくらかでも補うべく微力を尽くした次第である。
後期は、科目名から「入門 introduction」という語が外れて「日本文明 civilisation japonaise」となったから(私がそうしたわけではなく、カリキュラム上そうなっているだけのことだが)、もう好き勝手にやることにした。
科目名を直訳すれば「日本文明」だが、実質は「日本事情 choses japonaises」紹介みたいなものであり、日本史は、ニ年次・三年次に古代から現代まで通史を勉強するから、歴史には直には触れないという制約もあり、日本についての知識がまだ乏しく無邪気なフランスの若者たちに、「日本ってこんな感じですよ」と、数十年にわたって蓄積された豊富な経験と深い知識と凝り固まった偏見に基づいて、一方的に講釈するってところですかね。
誰ですか、学生たちが可哀想って、呟いているのは?