内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

私の電子書籍活用法

2019-04-09 19:20:44 | 読游摘録

 これまでも何回か電子書籍のことを拙ブログで話題にしてきた。使い始めて一年半ほどだが、購入書籍数は日英仏語あわせて800冊近くなる。しかし、読書のためというよりも、主に仕事の道具として使っている。
 例えば、昨日の記事で例に上げたようなある表現の使い方の実例検索するときなどに電子書籍はその威力を発揮してくれる。
 「すると」と「そこで」の用例を、数日前に購入した加藤陽子の『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社、2015年)で検索してみた。それぞれ二箇所見つかった。それらの用例から、「すると」は、与えられた前件の結果として生じた事態を客観的に記述する場合に用いられ、「そこで」は、二例とも、著者というか、この本の基になっている中高生相手の講義の講師である加藤陽子自身が、与えられた条件下において自分がどのような選択を行ったかを伝えるときに用いられている。いずれの場合も、入れ替えできない明確な使い方がされていることがわかる。
 次に検索してみたのが、同時にまとめ買いした本の中の一冊、木村草太の『憲法という希望』(講談社現代新書、2016年)である。「すると」は用例なし。それに対して「そこで」は17例ヒットした。そのすべてが著者自身あるいはその文脈での主体の意思決定あるいは選択がある条件下に行われていることを記述する箇所で使われている。このことは、著者がある意思決定あるいは選択がどのような条件下で行われているかをその都度明確に示すことに注意を払っていることを意味している。
 このように、電子書籍は、単に用例検索に便利なだけでなく、著者の思考の提示法や文体の特徴を特定の表現の使用頻度から浮かび上がらせるためにも使える。
 と、ここまで褒めておいて上でのことだが、電子書籍にはまだまだ改善されるべき点があると言わなくてはならない。何が問題かと言うと、これは以前にも話題にしたことだが、検索機能の使い勝手の悪さである。この点、Kindleはかなりよくできているのだが、hontoリーダーの方は是非改善していただきたい。例えば、上記のように多数の例がヒットした場合、それらの箇所を連続的に検索できないのだ。一箇所本文を見たら、また検索を実行しないと次の箇所に移動できない。検索ヒット件数が多いとき、これが実にわずらわしい。
 そもそも検索というのは、ただ一箇所あるいはほんの数カ所を検索するためだけにあるのではなく、網羅的にある語あるいは表現を探すためのものではないのか。紙の本の巻末にある索引は、当該語が出てくる頁数を網羅的にまとめてあるからこそ便利なのだ。だた、紙の本の場合、索引は変更も追加もできない。もちろん、読み手が手書きで訂正したり追加したりはできるが、それは読んでいて気づいた副産物であり、わざわざ索引に遺漏がないかどうかを調べるためにすべての本を隅から隅まで通覧するほどの暇は誰にもないだろう。
 その点、電子書籍は、検索機能を使って「マイ・インデックス」を簡単に作ることができる。だから、そのための機能向上を是非望みたいのだが、こういう目的で電子書籍を使う人というのはやはり少数派なのだろうか。それで、改善の要望もあまりないのだろうか。あるいは、技術的に面倒なのだろうか。
 私などは、すでに紙版で持っている書籍の電子版をたくさん購入した。電子版のおかげで、ある著者のある特定の語の使用例がたちどころに網羅的に検索できて、そのデータが研究にも役立っている。研究以外のことで忙しい中、こういう調べ物にかける時間を大幅に短縮できて、とても助かってもいる。
 とはいえ、一冊の紙の本をその質感を手に感じながらゆっくりと読んだり、参考文献を机の上に何冊も広げ、あちこち飛び回るように頁をめくったり、あるいは机の左右の本棚に並ぶ書籍の背表紙を眺めたりしながら、何時間も思索に耽る愉悦は、やはり私には何ものにも替えがたい。












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