私が担当している授業は、いずれも現代日本社会そのものを対象とはしてない。同僚の一人がそれを対象とした授業を担当しているから、それと被らないようにしないといけない。同僚は、社会学者で、主に現代日本の社会的問題を扱うから、私が担当する「日本文明・文化講座」では、たとえ現代社会に関わる問題を取り上げる場合であっても、それを私独自のアプローチで取り上げるように心掛けている。
学部最終学年で私が担当している「日本文明・文化講座」は、語学の授業を除けば、日本語のみで行う唯一の授業である。しかし、学生たちのレベルに合わせると、あまり立ち入った話、込み入った話はできない。かといって、フランス語の日本紹介書に書いてあるようなことを繰り返しても、つまらないし、勉強にもならない。
そこで、日本についてできるだけ新しい情報と動向を参照しながら、学生たちが日本の社会・文化についてより深い理解ができるようになることを狙いとして、授業内容を構成しているつもりだ。
だが、日本社会・文化の特異性についていくばくかの(しかもしばしば浅薄なものにとどまる)理解を得させるというところにとどまりたくないとも思っている。日本の特異性の理解から翻って、自分たちの社会・文化の問題を見直し、具体的な事例から出発して、より普遍的な仕方で問題を立てることを学んでほしいと願っている。
それには、私自身がまずその方法論を実践できていなくては話にならないことは言うまでもない。
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