中学生の頃、ジャパンを聴く自分に「あんた、また暗い音楽聴いてんのかい」と言った、男気溢れるお袋さん。
胃がんで2/3の胃を切除した10年前「もう駄目だ」と思う、目の前の見たことの無いお袋さんの姿。
それをも越え・80歳をも越えて、TVに映る老人を「年寄りは嫌だねえ」とのたまいながら、朝っぱらから大音量でディープパープルやハードロックを掛けて料理する。
その傍らには、ぽわーんとしたまみちゃんやコチャコが居た。
うるさいなあ、と言うニュアンスを伝えると「音楽で勢いを付けなきゃ、料理なんか作れるか!」とのたまった。
永久不滅という勘違いをした自分の目の前で、日に日に痩せ衰えていくお袋さんの姿。
緊急を要するというのに、救急車すら見捨てた上、適当の処理を得意とする、現代の医者。
「かれら」の所に行って、ケツにライターを灯し・根性焼きを入れた昨日。
兄がそこに更に押し込みを掛けて、今日、本人の希望通り、夜も不安からいったん開放される入院をさせることが出来た。
「なあに、辛気臭い顔してんのさ」とお袋さんに言われないように、今日は、この曲を贈る。
今夜はおやすみ、お袋さん。
■U2&Brian Eno 「約束の地(Where The Streets Have No Name)」1987■
『走りたい 隠れたい
ぶっ壊してやりたい
自分を閉じ込めるこの壁を
手を伸ばして
あの炎に触れたい
通りに名前もついてないその場所で
降り注ぐ太陽の光を頬で感じたい
ダストの噴煙が消えていく
跡形もなく
毒の雨からシェルターに避難したい
通りに名前もついてないその場所で
僕らは相変わらず築いては
愛を全部焼き払ってしまう
愛を全部焼き払ってしまう
でもあの場所に行くときは
君も一緒に連れていく
それが僕にできるすべて
町は洪水にのまれて
愛は錆に変わる
僕らは打ちひしがれて風に吹かれて
踏みにじられて泥まみれ
きっと君に見せてあげるよ
広い砂漠の荒野を見下ろす高台にある
通りに名前もついてないその場所を
僕らは相変わらず築いては
愛を全部焼き払ってしまう
愛を全部焼き払ってしまう
でもあの場所に行くときは
君も一緒に連れていく
それが僕にできるすべて
愛が錆に変わる
みんな打ちひしがれて風に吹かれて
風に吹っ飛ばされてる
ああ、愛が見えるよ
錆に変わっていく僕らの愛が
僕らは打ちひしがれて風に吹かれて
風に吹っ飛ばされてる
ああ、でもあの場所に行くなら
君も一緒に連れていくよ
それが僕にできるすべて』
(市村佐登美さんのHPより引用させて頂きました)
80年代「劣化したロックに未来はかけらも無い」と言い切ったブライアン・イーノ。
そんな彼に、熱烈な崇拝をもっていたボノ。
彼からの熱い要望を受けて作品を共に創った理由を、イーノはこう言った。
「U2の音楽にソウル(魂)を感じた。」
そして、この一見して結び付く線が全く無い者同士が、水面下の底通する流れで融合することにより、不毛の砂漠の地に、豊穣なる化合物が立ち上がる。一輪の花が実を結んだ。
元々、祈り・宗教的側面を持ったU2の音楽にイーノが加わることで出来た名曲。この名曲は、永遠に劣化しない。体内にアドレナリンが流れる。