
濃霧は、今日も続き、奇妙な生ぬるい温度。気のせいだが、つい地震がよぎる。不気味な気配。
そんな折、社会側からいつもの通り(だが、いつもよりキツイ)一撃を喰らってしまう。
帰路。呆然としながら電車に揺られる。
時の波間に佇む。
そんな時にも、自分で自らを救い・補完するのは音楽。「そんなことで死ぬな」と自分に言う。
スティーヴ・ライヒの「ミュージック・フォー・18ミュージシャンズ」を聴いていた。
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ジョン・ケージ、スティーヴ・ライヒ、フィリップ・グラス、テリー・ライリー、エリック・サティに影響を強く受けたブライアン・イーノ。
それらの現代音楽とイーノに影響を受けた坂本龍一。
その教授のサウンドストリート第一回目放送(1981年4月8日)の始まりが、スティーヴ・ライヒの「フォー・オルガンズ」だったのは、「B-2UNIT」を経てYMO「BGM」発表(1981年3月21日)に至る流れ。
■Steve Reich 「Four Organs」■
その後、リピートミュージックの可能性について語ることが多くあったサウンドストリートは、思えば「テクノデリック」(11月21日発表)制作中のことだった。
1982年春。細野さんの新作「フィルハーモニー」は、ペンギン・カフェ・オーケストラ、マイケル・ナイマン等の存在への「気付き」と教授経由で聴いてきた現代音楽が絡み合い、傾倒が深まった結果の産物。
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時を経て、ブライアン・イーノが提唱した概念「アンビエント」は、ハウスを経由して、90年代に水面に現れる。
この流れの中、ティアーズ・フォー・フィアーズを共に支えたクリス・ヒューズが1994年にスティーヴ・ライヒのカバーCDを発表した。
また、ケン・イシイらが、スティーヴ・ライヒをリミックスした作品集を出したことには妙に納得した。
そんな一方、ロック的フィールドに現代音楽を持ち込んだトータスの1998年作品「TNT」には脳天をやられた。正直驚いた。
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イーノがよく言っていた言葉。
聴いても聴かなくても良い音楽。これは、サティの「家具の音楽」から来ている。調度品のように、ただそこに「在る」。
訳せば、起承転結が無くても時間進行と無縁に、垂直に立った音楽。
巻き戻しも早送りも、そんな機能も必要としない音楽。
写真が時を止める薬効を持つように、スティーヴ・ライヒ他一連の音楽は、ささくれた神経を、時の進行から開放してくれる効能を持っている。
【おすすめアルバムの一部】

左:スティーヴ・ライヒ、フィリップ・グラス、ジョン・アダムス「ミニマル・セレクション」
右上:「スティーヴ・ライヒ入門」
右下:クリス・ヒューズ「シフト」

左:トータス「TNT」
右:アルバムではないし、ライヒとは別の領域。。。というか新時代のテクノですが。。。
ケン・イシイ「オーヴァーラップ」シングルCD