音楽において、チャイナ・クライシスは(自分の親たるYMO周辺領域は別として)特別な存在。
精神的な幸福、と漢字で書けば実に堅苦しいが、湿ったこころの上に、そっと触れてくるような音楽。
それが、自分にとってのチャイナ・クライシス。
好きな曲の数々を「何ゆえに好きなのか述べよ」と質問を受けても、理屈で述べられない。
たぶん、自分の皮膚感覚に一番合うから、とだけしか言えない。それだけに、人に薦める気もない。
ギャリー・デイリーとエディ・ランドンの2人は、自分が生まれ育った工場地帯の町が忘れられないのだな、ということが音楽から漂ってくる。
好きな想いを大事に心中に抱く彼らが創る音楽は、野望やビジネスとは相容れない。
生活費の源泉が音楽である限り、本来は職業欄に「音楽家」と記載するのだろうが、彼らにはそういった匂いが無い。
まるで、永遠に「ただ、音を奏でるのが好きな人」であり続ける。しかし、アマチュアではない。
どうあがいても経済の渦中に居る。その中でメシを喰い続けながらも、浴びせられる泥をかいくぐって、純潔で居られる困難さ。
「好きこそ、ものの上手なれ」ということわざがあるが。
自分が例えばみうらじゅん先生&なかまたちの言行に、ついつい微笑み、幸福の源泉を見い出すのも同じなのだろう。
■China Crisis 「Singing The Praises Of Finer Things (live in Liverpool)」■
(1989年作品「ダイアリー・オブ・ア・ホーロー・ホース」収録曲)
1982年「スクリーム・ダウン・アット・ミー」で初めて出会った頃の、2人の音楽の持つみずみずしさは、今の自分には変わらない響きをしている。
今だから、やっと良さが分かった曲も多い。
愉しんで音を鳴らす2人の姿を見ていると、変革・改革といった類のチャラチャラしたプロパガンダ用語が「デマカセ」に過ぎないのも、よく見える最近である。