再び1985年に戻る。
自分の好きなケイト・ブッシュが、「ドリーミング」という多重録音の極みの異常なアルバムから3年ぶりに第5作目の「ハウンズ・オブ・ラヴ」(邦題;愛のかたち)をリリースした。
9月21日に先行して発売されたシングル「神秘の丘(RUNNING UP THAT HILL)」。
その1週間後の9月28日にアルバム「ハウンズ・オブ・ラヴ」が発売された。
輸入盤で入手した7インチシングル「神秘の丘」は、今でも宝物として保管してある。
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1985年、時勢は、フェアライト・サンプリングマシンが横行する時代の流れ中、ドラムはマシンの激しいアタック音・ビートは24⇒36⇒72と刻みを増し・「音像」全体の空間が密度を埋め尽くし濃くなっていく中、ご多分にもれず、この「神秘の丘」というシングル曲も、その影響は少なからずあったものと思われる。
途中から激しい爆発音のようなドラム。
攻撃的な全体の音圧。
しかし、このような曲が全部か、といえば、むしろ、この曲だけが突出しているだけで、全体は穏やかな世界である。
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ケイト・ブッシュを初めて聴いたのは、1982年9月リリースの前作「ドリーミング」だった。
キチガイと紙一重の奇才ぶりに、すぐ引き込まれた。
タイトル曲「ドリーミング」は、36チャンネル高多重録音だったが、このアルバムに3年も費やしたのがよく伝わる、奇妙な音が現れては消える不思議な曲だった。
本人自体も、ノイローゼになったが、それくらいに入り込んで作った作品だった。
そんな曲ばかりかと言えば『オール・ザ・ラブ』のようなスローな美しい曲もあったりと、バラエティに富んだ曲が入った1枚であった。
ジャケットの美しさも手伝って、想い出の1枚である
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ケイト・ブッシュは、1958年生まれ。
・・・・ということは、「ドリーミング」リリースは24歳(!)という事になる。
早熟にも、程があるものである。
神様などというものがあるか否かはともかく、「天は2物を与えるものなのだ」と思う。
代表曲にもなろうが、『嵐が丘』が1977年11月、つまり、19歳(!)ということだし。
こんなに美しい人が、こんなに才能があるのだから。
静かな曲の好きなかたちんばとしては、彼女の2枚目のアルバムの中に入っている『バブーシュカ』、それに、4枚目のアルバムの中に入っている『オール・ザ・ラブ』が、癒される美しい曲かな・・・。