土曜日・日曜日と写真を撮り歩くさなか、イヤホンで聴いた好きなラジオ番組からスイッチを変える。
大抵そういう時は、歩く中でやっとエンジンが掛かってきたときで、アズテックカメラ、デペッシュモードなぞのアルバムを通して伴侶としたが、そこに混じってムニューっと唐突に現れた曲を、自分はデペッシュモードの曲だと思い込んでいた。
ハウス~(90年代以降の新しい解釈としての)アンビエントを改めてデペッシュモードという眼を通して音として出すと、このような新しい角度からの解釈となるんだ、と浸って聴き入っていた。
既に陽は沈み、私が持つ録音用mp3プレイヤーは、暗闇で文字を見られる機能さえ無い。
そもそも涙が出るような北風は身を切る冷たさで、アルミニウムで出来たカメラのボディを持つことさえつらい。
そんなうちに、この曲は終わり次の曲に変わってしまった。それを巻き戻してリピートする。
途中、この曲を確認すべく缶コーヒーを売る自動販売機の明かりを頼りに、左から右へ流れる小さい文字をすがめて追う。
しかし「トラック1」としか書かれていない。
私のmp3プレイヤーには、CDなどから移し替えた曲が入っていて、管理もずさんなのでそういった曲名を振ることもしていない。
果たしてこの曲はデペッシュモードの曲なのだろうか?そんなわだかまりを持ちながらも、目の前を逃がすわけにもいかず、一路歩いた。
こうは書いたものの、クロスオーバーイレブン等々ラジオから曲名や誰の演奏か?も分からずに、偶然出会う音からもらう新たな展開と恩恵を味わってきたので、このようなわだかまりはとても大事な「体験」。
今夜、その曲が何だったか調べて分かった。
2006年あたり音楽日記のように、持つCDから落とした曲とダウンロード出来た曲をミックスさせて生CDに焼く。そういったシリーズを創っていた。
最近、紙ゴミの中から、そのCD収録曲を紙に焼いた束が出てきた。
「その27」つまりシリーズ27枚目の1曲目に入った曲だった。
デペッシュモードの曲でも、そのリミックスでも無かった。
この曲は、ジ・オーブ登場以降の流れを感じさせると共に、細野さんの「メディスン・コンピレーション」(1993)収録曲『メディスン・ミックス』の闇にある狂気を想起させる。
CDに焼いたは良いものの放置されていたため、すっかり忘れていた。
作業に没頭すると、当初目的だった「音楽を聴く」行為から離れてコレクト(収集)にいつの間にか終始してしまう。そんな知覚の盲点をまざまざと感じた。
それすらもこうして、今では何事も無くネット上に「在る」ことは半分は”確認できた安堵”かもしれないが、逆に、曲名もミュージシャンも分からない方がよかったのかもしれない。