二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

二胡と刀、その6。

2012-05-27 09:29:33 | ■工房便り 総合 
では、鉄は待たないのかというと、これは沢山待つのです。

真っ赤にして叩いて、また炭の中に入れて待つのです。

炭の中に入っていますから、その色が見えません。

温度が判らないのです。

これはもう感でしか有りません。

炭の中から何回も出して見てみればよいのではないかと、思われるかもしれません。

炭の中に居る間は、鞴(フイゴ)で送り込んだ空気は炭を燃やすのに使われますが、

炭から出したとたんに、外の空気に触れます。

そうするとたちまち、酸化が始まり、もたもたしていると酸化膜が発生します。

それを叩けば、鉄の中に酸化膜まで叩きこんでしまうことになります。

何回も二つに折って、畳みますから、その間に酸化膜が入ってしまい、鉄どうしが密着しなくなります。

ですから、鍛冶屋はじっと我慢して、叩く温度、伸ばす温度にまで鉄が赤くなるのを待ちます。

炭から出したとたん、親方の叩く手槌で叩いた場所を、大槌が三人でリズム良く叩きます。

「あいずちをうつ」、という言葉はここから出ています。

そしてまた赤めます。今度は、二つに折る為ですから、温度を少し上げます。

1200度くらいでしょうか。

二つに折って更に赤めます。

これは、一気に叩いて二枚になっている鉄どうしを付けるのですから、温度は限りなく、融点に近くしなければいけません。

鞴の風を送りながら、待つ事10分。

金床の上に、水をまいて、真っ白になった鉄を、一気に、大槌で叩きます。

この時爆発音がします。かなり大きな音がするのです。

金床(かなとこ、かなしき)にまいた水が、1500度に近い熱に接触し、上からの打撃で、水蒸気爆発を起こすのです。

この水蒸気爆発の爆発力も、二枚の鉄を接着する力の一つになると言われています。

これは、気持ちいいですよ。

この音が綺麗に、瞬間、短く大きく聴こえれば聞こえるほど、接着(鍛接と言います)が上手くいった証拠です。

これを繰り返す事、10数回です。

この間、それぞれの作業に必要な温度に上がるまで、鍛冶屋は待ちます。

二胡作りも、鍛冶屋も、この待つことの大切さが分からないと良い仕事ができません。

今の時代、この待つことの大切さを忘れた時代になってしまったような気がします。

人との関係も同じようになって来てしまいました。

じっくり付き合っていくと見えるものが違いますし、付き合えば付き合うほどに味わいのある関係というのが出来にくくなったような気もします。

待つ事、タイミングを計る事、この二つが自然を相手にする仕事の上では、良い仕事をさせてくれます。

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