二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

『 二胡の救急箱 』 著者あとがき より

2018-10-13 12:00:00 | ■工房便り 総合 
〈著者あとがき〉

弾き込んで“音色育て”をしてください
           
今回、この本のタイトルを『二胡の救急箱』としました。

それは二胡愛好家の皆さんが、お持ちの楽器に不調が出た場合に、

病院へ行く(修理に出す)前のご家庭内での応急処置にお役立ていただきたかったからです。

まずは皆さんにお持ちの二胡のことを正確に知ってもらい、

ご自身である程度の調整をしていただけるよう、簡単な修理の方法や調整の基本を書きました。

また、治す治さないという以前に、楽器の扱いをきちんとすれば、

大きな不具合など発生しにくい物でもあります。

よく読んでいただいて、この本に書かれている事に気を付けるだけでも、

かなりのダメージ回避や予防になるはずです。

それでも治らない時は無理せず専門家に修理を任せましょう。

楽器の調整というのは、木でできた楽器には当然つきものです。

三味線なども木軸の削り直しや指板の削り直しなど数年に一度行われていますし、

ヴァイオリンなども駒はやはり数年に一度交換するものです。

駒の交換だけでなくペグ(木軸)の削りや、各木部の固定など必須のことでもあります。

10年ほど前から二胡の世界でも楽器の調整という事が言われてきています。

外国から来た楽器のため、その状態の良し悪しというものが判らず、皆さんはネットなどの情報を探り、

どれが正しいという事より、ご自分の楽器が何とか良い音色に鳴るように工夫されてきています。

ただ二胡の場合、蛇皮の状態の良し悪しが誰にも判断することは出来ず、

結局は先生に頼むか、ネットなどで情報を仕入れるくらいしか出来ませんでした。

その状態は今も続いています。特に大都市圏は別にして、それ以外には頼む楽器屋さんも無く、

先生頼みが普通です。また大都市圏でも、楽器屋さんそれぞれに調整という事が定義づけられておらず、

せいぜい千斤の巻き直しや駒の選別くらいしかありません。

今でも駒を変えることが調整と考えている人たちは多く、

いろいろなブログなどでも千斤の巻き直しや駒交換で調整が完了するような書き方でしかない状態です。

また不思議なことに、二胡の専門といわれる楽器屋さんでも自社で販売した楽器以外は見ないという所がほとんどです。

その上その楽器屋さんの開いている教室に入っていない人の楽器はたとえ自社で販売しても見ないという所まであるのは、

一般的な商習慣からしてとても納得しづらいことでもあります。

二胡の調整とは、楽器の各部分がその正当な働きをするために、固定するものは固定し、

動かすものはよりスムーズに動かせるようにし、その楽器の皮の進化に合わせて弦を選び駒を選んで、

またその駒も皮の進化に合わせて高さを決め、底面を皮面に合わせ、

その二胡の持っている最大の力が出せるようにする作業です。

楽器の各部分それぞれが正当に働くためのバランスを総合的に考えて整えることです。

確かに駒を替えるだけで音色は変わります。

しかし皮に合っていない限り、すぐにその替えた駒の音色の効果も落ちてしまいます。

本来の二胡の音色は、その形づくる木に由来します。

二胡を作っている木の音色がその二胡の音色なのですし、

弾き込んでその音色を実現するのが皆さんの役割であり本来の楽しみでもあるという事です。

その音色育てをするにあたり、皆さんが楽器に何の心配も無く楽しめるようにしていくのが二胡の調整です。

皆さんの二胡、たくさん弾いてやってください。
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