二胡工房 光舜堂

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蛇皮の善し悪し。その8

2011-04-20 11:40:47 | ■工房便り 総合 
蛇皮の見た目に解らないというもう一つの問題は、弾力です。

二胡の場合、三線や、三味線ほど引っ張って皮が切れる寸前になるまで、硬く張るわけではありません。

あの胴の9センチぐらいの6角形に張って、劉継紅先生のおっしゃるような、ファ、の音が出るくらいに張るというのは、多分6角の偏や角それぞれに、80キロぐらいの力の様です。

ちなみに76キログラムの私の重さを皮の一点に載せて、引っ張る道具の代わりにして見ましたが、多少それでは足りない感じですから。

蛇皮は強いものですね。

さて弾力です、これはどうも3、4歳の若い蛇や、雌の方が弾力があるようなのです。

ある様と言うあいまいな言い方しかできないのは、雌がなかなか手に入らず、

これは雌の蛇皮ですよと渡されたのが、今までに2枚だけでしたので、比較が完全にはできないのです。

確かに雌皮と言われるものは、弾力がありました、同じようなファの音に張って、それからその皮を押して見ると、他の蛇よりは沈むのです。

音としては同じ音が出るのに、柔らかいのです。

そして高音が伸びます。

今まで高音に(ハイポジション)に力を入れて開発してきた私としてはとてもうれしい限りでしたが、

残念なことに、殆ど試しに使ったのと、2枚だけお曲様の張り替えに使ったので終わりです。

この弾力が見た目に解ったらとても良い鳴りを確保できるのですが。

そうは言っても、雌は卵をうみますから、それほどは出荷されないとのことでした。

ではほかにこの弾力を確保できないのか、

様々人に聞いて、どうも脱皮したばかりの蛇は雄でもかなり弾力があると教えてくれた方がいらっしゃいました。

その見分け方はと聞いてみますと。

沢山張ってみると解りますよ、たくさん買って下さいとのこと、当然輸入業者さんとしてはそうあるべきでしょう。

蛇は脱皮したばかりだとしても、一番表面には次の脱皮する皮が薄く乗っています。

多分このあたりの質の問題や、加工していてその表皮がはがれやすいかはがれにくいかなどではないかと大体の見当は付いてきたようです。

そして比較的若い蛇は弾力があるようです。

3、4歳の物ですね。

ただしこれには問題もあります。皮が十分に厚くないのと、

張ってから、かなり狂います。

通常使っている5、6,7歳の物に比べると、これで十分な張りになったと思っても、

しばらく置いておくと、妙な緩み方をします。

また弾きこんでいったしても、なかなかその狂いが取れず、雑音が後から出てきたり、

妙に張りのない音になったりもします。

このことは、もしかしたら木の若いのと同じことかもしれません。

若い細い木は、狂いやすいのです。まだ生命力が伸びる最中だからかもしれません。

蛇の場合、3、4歳までは年に数回脱皮すると言いますから、新陳代謝も旺盛なのでしょう。

それからもうひとつ、弾力の確保の方法があります。

蛇皮を削る方法です。

これは、もしかすると、中国ではやっていないかもしれませんが、

胴の木に張る部分の近く、要するに外回りの皮を多少削り込むと、弾力が確保されます。

厚いものより薄いものの方が弾みますよね。それと同じです。

スピーカーのウーハーなども外周部分は真ん中より薄くなっていると言います。

同じ効果なのかどうか?

このように削り込むと確かに、高音は音が伸びてきます。

高音はどうしてもその鳴る弦の長さが短いです、振幅幅が小さくなりますから音が伸びにくくなります。

ピアノの鍵盤を弾いてみて、高い方へ行くと音が短く止まってしまうというのと同じですね。


それを少しでも伸ばす方法の一つにこの蛇皮の削り込みの方法があります。

一枚一枚厚みも伸び方も違う、(この伸び方が違うというのは、どうもトグロを巻く方向が、個体差があるようです、蛇は必ずしもみな同じ方向へとぐろを巻くわけではないようです)のですから、その伸び率に合わせて、削り込まないといけません。

仮張りをしながら、右か左かどちらか強く張る方を多めに削ります。

こんなことをしながら蛇皮張っていますのでどうしても量を作るというのは難しいですね。

今までよりさらに時間がかかって行ってしまいます。

でも皮張りが命の楽器ですから、二胡は。


この項続く

西野和宏

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