二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

「春」は鳴る、その2

2013-04-02 09:47:01 | ■工房便り 総合 
春は軽やかになりますね、バッハの弦楽曲など聴いていると桜の花びらが、風に吹かれてコロコロと地面の上を舞う様な楽しさがあります。

先日初めて気が付いたのですが、何十年も桜を見ていたのに。

桜の花びらと言うのは地面を転がるのですね。

フワっと落ちて来たかと思うと、地をはうような風に乗って、転がって行きます。

花びらの付け根のところが、丸くふくらんでそこに風が上手くからまるのでしょう。

何十年見て来ても気がつかない事と言うのはありますね。

「春」と言う楽器が出来上がって気が着かされたことも有ります。

二胡の胴は大きければなるということではありません。

中国の楽器もこの30年少しずつ変化してきています。

1950年代以前の物と言うのは今の二胡より随分小さく、直径で85ミリくらいの物も多いのです。

以前見せて頂いた、20年前の王名人の楽器なども、とても小さく感じました。

光舜堂にも50年以上前の円い二胡があります。

これも胴の直径が87ミリと今の二胡より一回り小さいのですがとても良く鳴なります。

今作られている二胡の平均の大きさ92ミリくらいの物より良く鳴なります。

胴全体が響くような感じなのです。

「春」も小さいです。

子供用にと以前試作したものですから直径で87ミリぐらいで図らずも昔の二胡の大きさになっています。

もしかしたらこのくらいの大きさの方が蛇皮の振動と言うのを一番良く響かせるのかもしれません。

但し、重厚感と言うのはあまりありません。

胴が小さいですから、木の量も少なく、基本的な音と言うのが高いのかもしれません。

ずっしりとした感じはないのです。

しかし、この「春」には重厚感も有りました。

バリっとした鳴り方をします。

押さえが効かない位な雑音感も有ったのです。

通常私の作る二胡はかなりクリアーな音を響かせます。

雑実の無い純粋に木の良さを引き出す事を考えて、胴も一枚の板から取り、棹も同じ木のなるべく硬い所で採っています。
ですから弾きやすく雑実も無く雑音も無く高音の音も裏返るようなことはないのですが、この「春」に限って言えば4種類の木の合計の音と言う感じなのかもしれません。

棹のバリサンダー

胴のココポロ

木軸のチンチャン

台の花梨。

基本的には、皆紫檀系ではあります。

がそれぞれに持ち味の違う音色であるのも間違いないのです。

以前、ある演奏家にお会いした時に、ご自分の楽器の由来をお聞きしました。(音色が良いと言われている楽器です)

胴は黒檀で、あとから、紫檀の中胡(棹が少し太い)の棹を差し込んだのだそうです。

紫檀と黒檀の組み合わせです。

実はこれやってみたのです。

ただその時には、作り上げた最初そうとう雑味が出て来てこれは使えないなと判断してしまいました。

もう少し突っ込んで研究すべきだったかもしれません。

その当時はとにかく全音が鳴るということ音の大きさ、音色の純粋さと言うのを追求するのが一杯だったのです。

このところどんな木を使ってもある一定以上の鳴りを実現出来て来るようになりました。

ほぉさんの言うシガイができなくもなったのです。

どれもとてもクリアーに良い音色を響かせてくれます。

木そのものの良い音が響きます。

そこに、「春」です。

自分が作ったとはいえ、自分で解らない物が有ったのです。

残念ながら、「春」は出来上がってすぐお渡ししてしまったので今のところその音の記憶でしかありません。

もう少し育った頃自分でも確認したいものです。

そうするともしかしたら、これこそ二胡と言うのが出来る可能性もあるのです。

この木の音色、ではなく。

昔のバイオリンなども、様々な木が使われていたようです。

ストラデバリも、裏板に、ポプラなど使っています。

それ以前の物は、ウォールナットなども使われていました。

1700年代の最余の頃に胴も今のメープルと、スプルスの組み合わせに定着したようです。

時代の要求で音色より鳴りと言うのが重視されて来たためと思われます。

しかし、先日、バイオリン作りの福岡君に以前試しに使ってみてと渡しておいた、ある木のバイオリンが出来上がったのです。

その音色の良さは、、、これは言葉では言い表せません。

とにかく素晴らしかった、メープルだけがバイオリンではないなと感じたのも有ります。

二胡は、まだまだバイオリンなどに比べてその研究と言うのは、1000分の1もなされていません。

歴史が違いますし、それに関わってきた人々の数も決定的に違うのです。







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