二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

二胡に張る蛇皮について、下加工その5

2012-01-05 10:12:29 | ■工房便り 総合 
2回目に水につけて、6時間ぐらい待って、私の場合は、手つくりの鉄できたクリップで、皮の角と辺を12ヶ所挟みます。



これを二胡の形に作った、台に置きターンバックルと言う、回すと締まる金具でゆっくり締め上げます。

この時に一度に沢山締め上げると、皮は破れますし、繊維も切れます。

良く聴くとぴしぴしと言う小さな音が聞こえます。

これはだめですね、張り上がっても、音が抜けてしまいます。

普通、は皮の6辺に細い棒を縫い付けて、それを紐を掛けて締め上げますから、それほど強くは締められませんが、私の方法ですと、1平方センチ当たり、8キロぐらいの力を掛けることが出来ますから、気をつけなければいけません。

唯この12か所を締め上げると言うのは、皮の伸び率が違うと言うことを最大限平均化出来る方法です。

一ヶ所一か所同じような張力で締めあげられますから。

このような状態で、乾かします。

大体、季節にもよりますが2日程かかります。

この間1時間置き位に、肘なり手なりで、皮を押しこんだり叩いたりします。

和太鼓などは子供たちに、張っている最中にその上を飛び跳ねさせると言います。

乾き始めるまで、半日は手を止められません。

これを皮によっては、最大8回ほど、繰り返します。

これは使う使わない関わらず、日々4台ほどやっています。

要するに皮を下加工の伸ばしに入ると、手をかけっぱなしになるのです。

ここで手を止められないのです。

少しずつ皮が伸びてきて、最初は、押すと乾いた時でもまだはずみが有りますが、

最終段階になると、殆どはずみません。

叩いて見ると、音はEの音ぐらいになってきます。

このあたりが最終段階の前になります。

ここで何日かそのまま置きます。

叩いたり肘で押したりを繰り返して、様子を見ます。

1週間ほどして、殆ど伸びが無ければ、音がEより下がらなければ下加工は終わりです。

現在の中国での下加工の状態もこれと変わりないと思いますが、量産物は、この下伸ばしの回数が、1,2回と言われています。

それと、皮の伸び率に構わず、型で伸ばしますから、物によっては後から伸びてしまうことも多いのです。

とにかく皮を張ると言うのは、一枚一枚が違う伸び率ですから、如何にそれに合わせるかと言うのが問題です。

そして、最終の張り込みになります。

使う二胡の胴に本張をするのです。

本張は、工程としては同じです、数時間水につけておいて、水をよく拭きとり、

ボンドないしは、ニカワを胴につけて、皮を当てがって又締め上げます。

(ボンドと言うのは会社名です、ボンド社のホワイトグルーが、いつの間にか木工用の接着剤の一般的な名詞になってしまったようです。)

私の使っているのは、タイトボンドと言う、アクリル系の接着剤です。

これはバイオリンや、ギターを作る人たちも使っている物です。

この接着剤の良いところは、硬化した後に大変硬くなることです。

普通、皆さんが使っている、日本製のいわゆる木工ボンドと言うのは、ビニール系なのです。

ですから弾力性は有りますが、柔らかく、音が伝わりにくいのです。

ニカワは、硬化するとかなり硬くなりますから、その点で良いのですが、接着力としては、むしろ弱い物の内に入るでしょう。

ですから、時々中国製の二胡には、皮の剥がれている物を見かけます。

なにせ、ぬれている物を着ける接着剤と言うのは、それほど強いわけではありません。

ニカワは皆さんご存知のように、水で薄まりますから。

伝統と言うのは大切なものですが、それにこだわると、作る物の完成度と言うのは進化しないときも有ります。

最後に、皮の仕上げです。

この時に中国では、ぬれている間に、蝋をつけてアイロンで蝋を溶かしこみます。

これは何でやるのか判りません。

蝋の溶ける温度と言うのは、大体90度前後ですし。

イボタ蝋などでしたら、95度位です。

これは、生の繊維には火傷の状態を起こします。

やっては見たのですが、最後に仕上げる時に良く磨くと光ると言うことぐらいが良いことかもしれませんが、それなら最後に、ワックスを塗っても同じ事のはずです。

多少、出来上がってからすぐ鳴り始めるし柔らかい音にはなります。

でも柔らかい音と言うのは、皆さんの感性と、右手がつくりだすものです。

何回かやっては見ましたが、熱をかけること自体皮にはよくありません。

たぶん皮はやけどします。(生皮ですから)

ですから私はやりません。自然が一番。

これは台湾の二胡作り李十三さんとも同じ考えでした。




Comments (3)    この記事についてブログを書く
« 1月2日(日) 2012初光舜堂 ... | TOP | 二胡に張る蛇皮について、下... »
最新の画像もっと見る

3 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
ウッチーさんところで (じみ)
2012-01-05 17:54:05
王根興さんが皮張りしている動画が載せていらっしゃいます。
一般的な皮張り作業ですが、焼き鏝で蝋らしいものを塗っているシーンもありますね。見た感じ、皮の周辺を重点的に塗っているような気がしました。最初は膠を上手く溶かして接着を確実にしているのかとも思いましたが。

どちらなのかは映像では判断できませんが、蝋らしいものに鏝をあてていたので前者かなと。
返信する
じみさん (nishino)
2012-01-05 18:52:31
動画見ました。

皮を張っているおはボンドですね。

ニカワならば湯煎していますから。

皮には確かに、何か塗っていますね。

蒸気の上がり方からすると蝋かもしれません

ただ蝋にしても、あの白さからすると、パラフィン系ではないでしょうか、それと、液状になっていましたから、何か溶剤で溶かしたもので、かなり低温なのではないでしょうか。

もっと高温だとすると、もうしばらく蒸気が上がっていないといけないと思います。

この辺に秘密は無いでしょう。

それより不思議なのは、皮がかなりしっかりしていて、それほどぬれているようには見えない事です、最終は多少濡らしていて張るのかもしれません。

今度やってみます。
返信する
そうそう (じみ)
2012-01-05 19:05:52
私もあの映像に秘密はないと思いました。

その蝋らしきものを塗るときに、液状のものに鏝を漬けたあと、白い固体らしきものにも当ててました。あれが何かなぁと思ってましたです。で、やっぱり皮の周辺部に重点的に塗ってるようです。あれはどうなんでしょうかね。
返信する

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Recent Entries | ■工房便り 総合