なんだか最近、今までになかったというような天候が続きますね。
14号台風の影響は、大丈夫でしたか?
皆さんに、被害がなかったことをお祈りいたします。
そんな天候の中、昨日はこれから台風が接近というような、不安な天候状況の中、CDMの張替えの楽器を取りにこられたかたが、まあ、職場が立川というとても近しい方でしたので。
大変上手な方で、音の立ち上がりの良さは抜群、CDMも大変気に入っていただいたようで、ほっとしています。
このところ不定期に、工房へ来られる方が続いていまして、良い楽器が欲しいと、やはり楽器を弾く方には良い楽器を手に入れるというのは一番の願いでしょうね。
この十年くらい二胡屋をやってきていて、お会いした方々、それこそトッププロから初心者の方まで、いろいろ話を聞いて、二胡の良い音ということだけでも、相当皆さんの意見に違いがあります。
先日、お二人の二胡の先生がいらして、西野二胡の蛇皮の物や人工皮の物など弾き比べていかれました。
お一人の方は、人工皮の音を聞いて(弾いてみて)二胡が鳴りだした時の良い音がすると,とても気に入っておられたのです。
もうお一人方は、もっときっぱりとした蛇皮の新しい感じが好きなようです。
ある中国人の演奏家にも、そういう方がいらっしゃいました。
ですからその方は、4,5年すると新しい楽器あるいは気に入った楽器の蛇皮だけ張替えるのだそうです。
それにしても、先日のお二人とも、西野二胡の音の鳴りの良さはとても気に入られたようで、大きく響く楽器が一番とおっしゃっていました。
そのよく鳴る!ということなのですが。
大きく音が出る。ということと、大きく響く、そして遠くまで鳴る、様々に表現もあります。
洋の東西を問わず、楽器は大きく鳴らせるというのを一番に楽器の評価としている方も多いです。
ヴァイオリンにしろ二胡にしろ、大きな音がするというのは、楽器として優秀であると、そして弾き方としても大きく鳴らせるというのは良い楽器であるという価値観もあります。
しかし、ヴァイオリンにも、二胡にでも大きい音がするけれど、良い音と感じないものもあるのです。
弾いてみて一瞬は大きな音だなとは思うのですが、なんだかうるさいと感じるものもあるのです。
以前、まだ神田の光舜堂があるころ、みなさん集まって弾いている中にとても飛び抜けて大きな音のする楽器を弾いている方がいらっしゃいました。
合奏していてもその方の二胡の音がとても良く聞こえていたのです。
数カ月して、そのお客様が再度楽器の調整ということで来られました。
二台持ってこられて、「新しいのを買ったのです」とのこと、
「へーー、あの楽器よく音が出ていたではないですか」と私。
「そうなんですけど!長い時間弾いたりすると気持ちよくないのです。なんだか大声でわめいているようで、弾いているのも疲れてしまうので、新しく買い直したのです」
確かに持ってこられた2台を弾き比べると、新しい楽器は前のに比べてそれほど音は大きくはなかったです。
そこで駒を変え、新しい皮に合わせて削り込み、木軸なども削り合わせて弾き比べてみました。
音も大きくなったのですが、音色は新しい方が気持ちに響いてくる感じがあり良かったです。
「音大きく鳴ったですね」とお客様
「比べてみますか?」
そこでたまたまいらしたもう一方に、隣の部屋に入って、弾いてみてもらいました。
ほとんど同じくらいの音の大きさに聞こえたのですが、以前の物は高音になると極端に小さくなるようです。
目の前で弾いていた時にはそれほど感じなかったのです。
「何が違うのでしょう?」とお客様。
「棹の振動が違うのですよ。ほら、新しい方は棹の振動が手によくわかるでしょ。棹まで振動しているので全体によく鳴っているのです。前の楽器は棹の振動がそれほど感じないですね。胴だけなっている感じ。二胡や三味線の様に棹の長さが長いと、棹の振動が音の大きさにも影響してきて棹がよく鳴ると、楽器全体が振動するのです。これは良い楽器だと思います」
オペラ歌手の様に体全体を振動させるのと、喉だけで大声出すのとの違いですね。
棹が良く振動する楽器というのは良い楽器の一つの例でしょう。
ヴァイオリンなんかにもネックが良く振動するという楽器もあります。
このこと、弓にもありますし、松脂にもあるのです。
遠鳴りする楽器、弓そして松脂。
ですから、楽器や弓、そして松脂など選ぶとき、ご自身で弾くだけでなくほかの人に聞いてもらうのも、一つの方法でしょう。
あるいはほかの人に弾いてもらって聞いてみるというのも。
工房光舜堂西野和宏&ほぉ。ネオ