二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

楽器の遠鳴りは体で感じます。

2023-04-22 12:58:41 | 二胡の救急箱に書かなかったこと
良い楽器と言われるものの象徴的なのが、遠鳴りをする、という事かもしれません。
ようするに、大きなホールで一番後ろまで音が届くという事でしょう。
もちろん楽器ですから音色や響きの良さというのは、除外できません。
でも、遠鳴りする(大きな音がするのとは違います)という事が良い楽器の一つの条件になっています。
特にストラデバリウス、ガルネリ・デジュス。
二胡でも、音の大きさにこだわる制作家というのはいますし、演奏家もジョージガオさんのように独自に楽器を開発している方もいます。
二胡の場合は元々が小さな胴です。振動板の大きさはヴァイオリンの7分の1くらいきりありません。
それにしては、良く響くとは思うのですが。
ヴァイオリンは,やはりストラディバリウスなのでしょうか、この200年近くそれこそ、万を超える人たちが研究してきていると思います。
材料の問題、構造の問題、塗装の問題。
不思議なことに、ネック(棹)の事を研究したという書物に、あまり出会っていません。
勿論、当然研究した人はいるとは思うのですが、遠鳴りという事良い楽器という事を書いた本にはあまり出てこないのです。
一つには、現在のヴァイオリンのネックは、そのほとんどが、例えストラデバリの作ったものでさえも、1800年代の半ばころから、ネックそのものを変えたり、あるいは元の物を作りなおして、角度を変えたりしたものだからかもしれません。
そしてその頃から、ストラディバリウスやガルネリの評価が上がってきているのです。
まあ、そのころから、名演奏家というのが出て来たりしたという事もあるかもしれませんが。
この、ヴァイオリンのネックの問題は、また何時か考えようと思っています。

二胡の場合、遠鳴りするというのは、いくつかの要素があります。
一つは、胴の材料の厚みです。
全体に厚すぎると、音の鳴りは小さくなります。
棹の穴と胴の後ろの真ん中あたりが薄いと胴はとても良く振動します。
弾いていてそれほど大きくは感じないのですが、離れたところで聞いていても音は小さくなりません。
集団の中で引いていても、その楽器の音だけ聞こえて来たりもします。
それと、やはり材質でしょう。
コウキ紫檀(小葉紫檀)そして、ブラジリアンローズ。
これは、木の中の遠鳴りする樹種の双璧です。
密度が高いというのが一つ、そして適度に導管が発達している。
みっちり詰まった木部の中に、適度な空気層があるというのは木が良く振動することになります。
遠くまで音を響かせるのには楽器の胴の木の厚みというのは、そうとう楽器の遠鳴りに影響するようです。
二胡はどうやっても、音の大きさということでは限界があります。
ヴァイオリンのように、オーケストラと一緒にその中で生音で響いてくるような二胡というのは、あり得ないでしょう。
しかし、そんな中でも遠鳴りする二胡というのはあります。
遠鳴りするというのは、遠くまで音が届くということだけでは無いと思います。
それは体に響いてくる音、振動なのです。
二胡の場合楽器自体を構成する木がとても硬いです。良く振動するまでにとても時間がかかります。
ヴァイオリンなどのように比較的軽い木を使った楽器でも相当弾きこまないと良い振動にはなってこないのですが、硬い木の二胡は更に時間がかかると、私は思います。
だからでしょう沖縄の三線などの棹は代々受け継がれていくのです。弾きこまれて初めて遠鳴りもしてくるようです。

楽器は必ず体の一部に触れています。
二胡などはもろに骨盤やお腹に響きますし棹の振動は左手に響きます。
ヴァイオリンの凄いところは、肩と顎を通じてもろに脳を刺激するのです。
その時に、とても、深い感動を呼び起こす振動があるのだともいわれます。
木で作られた楽器は、振動させるごとに様々木の持っている奥深い振動を引き出してきます。
良い楽器、遠鳴りする楽器は弾いて気持ち良いのです。
気持ちいい――!!
それが良い楽器を弾いている時に出てくる言葉です。
そして離せなくなります。
ただひたすら、気持ち良いのです。
その時には、人の耳で聞く音色や響きより体自体で感じる、計測器などで測り切れない振動が、弾く人の感動を呼び起こすのではないのでしょうか?
ストラディバリウスが何故あれほどもてはやされ凄い楽器だと、演奏家代々に引き継がれていく理由はそのあたりにあるのではないでしょうか?
いくら精密なデジタル系の計測器であっても、弾いた時に体を通して感じる振動は計り切れないのではないでしょうか?
そのように感じながら、みなさんも二胡を弾くときに体で感じる音を大切に弾いていけば、その楽器の持っている力を引き出してやりさえすれば、もしかしたら、その楽器はどんどん進化して名器に近づいていくのだと思うのです。
工房光舜堂西野和宏&ほぉ・ネオ





Comment    この記事についてブログを書く
« ベルリンの高橋徹さんへ!光... | TOP | 光舜松脂を塗る前には、以前... »
最新の画像もっと見る

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Recent Entries | 二胡の救急箱に書かなかったこと