今までに飲んだことない蔵元さんのお酒を飲むときドキドキする。これはぼくばかりではなく、日本酒好きな方であればだれでもそう思うはずだ。
今回はまだこちらの東海地方にほとんど紹介されていない山梨県の武の井酒造株式会社が造る【青煌(せいこう)・純米吟醸雄町つるばら酵母】をテイスティングしてみた。
■【冷やして】まず最初に花酵母の豊かな香りが広がり澄みきった青空を連想させる。そして高貴でおだやかな飲み口にうっとり・・・。2杯目、雄町特有のやわらかく膨らむ酒質と若干抑え気味になったと感じる香りがベストマッチ!!! 1杯目とはまったく別物に感じてしまうほど幻想的な味わい。
■【熱燗で】だいたい香り系のお酒の場合熱燗にするとバランスが崩れ駄酒になってしまうのが通例ですが、このお酒は違う・・・・。華やかだった香りが控えめになり旨みを押し出す仕事に専念している。雄町を原料に使用するとダイナミックな味わいになるけれども、このお酒はそこまで広がらずコンパクトに凝縮され、まばたきをすることすら忘れてしまうほどドラマチックな至福の時を過ごせる。
この蔵元さんは、難しそうに見えるスペックだが、自分の造りたいお酒をスマートにそして何よりも的確に表現することにより、ぼくに訴えかける・・・。
飲んで旨いと思うお酒は数あれど、飲んで飲み手に何かを感じさせたり、また考えさせたりするお酒は決して多くはない。【青煌】は後者のほうだとぼくは思う。
このお酒を飲んでぼくは考える・・・。かつて雄町を原料に使用したお酒でこのような凝縮された表現力のかたまりを感じたことがあったのだろうか、そしてそれもスマートに端的に表現している。
かつて作家の井伏鱒二が「端的な表現ほど説得力のあるものはない」と何かの文献に執筆していたように記憶しているが、このお酒に、この言葉を捧げたい。
この蔵元さんは、日本酒というものの数年先を見ている。花酵母を生かすための瓶火入れ、たぶん、もろみ日数30日弱に押さえ酒質とインパクトのバランスを熟慮し、ラベル、瓶の色を含めてトータル・コーデュネイトされた唯一無二の酒だとぼくは思う・・・・。
▲まずは冷酒で▲
▲次に【燗たのし】を使用してお燗に▲
▲スペック▲