踊る小児科医のblog

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「ウエストナイル」か「西ナイル」か

2005年10月05日 | こども・小児科
国内初の「ウエストナイル熱」患者発生とのことでニュースになっていましたたが、まずは言葉から。
「西ナイル熱」「西ナイルウイルス」という用語が報道では使われていますが、非常に違和感があり、医療関係者でこのように部分的に訳した用語を使う人はいないでしょう。
「ウエストサイドストーリー(ウエストサイド物語)」を「西サイド物語」と訳さないのと同じことで、学術的な固有名詞ですからウエスト=西だからといって勝手に変えない。下記の感染研や厚労省のサイトでも「ウエストナイル」のままですね。

今回は国内ではなく米国における感染であり、このウイルスは「人から人への感染はない」ことから、特に新たな対策が必要ということではありません。

詳しくは、
ウエストナイルウイルス(国立感染症研究所)
ウエストナイル熱・脳炎Q&A(厚労省)
などのページをご覧いただきたいと思いますが、トリが中間宿主で蚊を媒介して感染する日本脳炎の近縁のウイルスで、ここ数年間で全米に汚染地域が拡大してしまった。(日本脳炎は豚-蚊-人のサイクル)

実際にはほとんどの人は感染しても重症化して脳炎になることはなく軽症の「かぜ症状」だけで終わってしまう。このあたりも、日本脳炎と似ています。診断は、感染地域への渡航歴などから、まず「疑うこと」が第一。疑って検査しなければ症状からは見分けはつきません。

ワクチンはなく、予防法は「蚊に刺されないようにすること」なのですが、これも非現実的であり、渡り鳥や空港付近の蚊のチェックを行ってウイルス侵入を食い止めることに尽きるようです(これは実際に行われています)。アメリカのようになってからでは遅いわけです。

それならアメリカに住んでいる人はどうすればいいのと言われると困るのですが、蚊が発生しやすり不衛生な水溜まりや下水など、一昔の日本と同じような環境をできるだけなくしていくしかない。現実には、格差の大きいアメリカよりも日本の方がずっと都市環境は良くなってますから、こんなところにも米国社会の歪みが影を落としていると言えるのかもしれません。