踊る小児科医のblog

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インフルエンザの診断、治療、合併症、登園・登校

2006年02月01日 | こども・小児科
症状 年長児や大人で典型的な場合は、突然の高熱と頭痛、関節痛などから始まり、全身の倦怠感が強く、咳は熱のピークが過ぎてからも日を追って強くなります。いったん下がりかけた熱が4~5日目にかけて再び高くなるのが特徴です(二峰性発熱)。

合併症 気管支炎・肺炎、中耳炎、熱性けいれん、脳炎・脳症などがあり、流行状況やウイルスのタイプによっては、脳炎・脳症で亡くなる子が全国で多発することもあります。インフルエンザではうわごとや譫妄(せんもう)状態などの精神・神経症状を起こすことがあり、熱性けいれんも持続時間が長くなりやすく、いずれも脳炎・脳症の初期症状との区別がつきにくいため救急外来(23時までは急病診療所、それ以降は輪番病院=消防案内参照)を受診した方が無難です。発熱などの主な症状だけのときには、夜間に救急外来を受診しなくても、翌朝一番にみせてもらえば大丈夫です。

診断 典型的な症状・経過で、周囲の流行もはっきりしていれば、全ての人に検査する必要はありません。また、乳幼児では症状や経過で判断するのが難しい場合もあります。インフルエンザの迅速検査は、流行の初期やピークを過ぎた後、症状・経過だけから他の風邪との区別がつきにくい場合などに行いますが、検査結果で100%全てがわかるわけではありません。

 1)検査で陽性(+)→インフルエンザの診断はほぼ間違いない
 2)検査で陰性(-)→インフルエンザの可能性を否定できない

 熱が上がってからの時間が短いときや、鼻水がまだあまり出ていないようなとき、綿棒で鼻の奥の方までちゃんとこすれなかったときなどには、本当はインフルエンザなのに検出されない場合があります。そういうわけで、検査の時には鼻の奥が少し痛くなる程度に3回くらいこすり取ることになりますが、必要な手技ですのでご容赦下さい。

 なお、昨年、一部の学校でA型とB型を区別するために検査結果を報告するように言われたケースがありましたが、医師会から教育委員会に申し入れて、全員にそのような検査をする必要はないことを確認してあります。

治療 抗インフルエンザ薬である「タミフル」が中心になります。漢方薬の「麻黄湯」もタミフルに劣らず発熱の期間を短縮することがわかってきており、特にタミフルが使いにくい乳児には用いられます。合併症として気管支炎を起こしているような場合には、抗生物質も処方します。(タミフルは最初の3日までで、耐性ウイルスの出現を考えてそれ以上長くは使いません)

 タミフルを使うと、通常3-4日続く最初の高熱が1日半から2日間ぐらいに短縮されて軽くすむことが多いのですが、すぐに下がった場合でも、二峰性の発熱がみられたり、咳がひどくなったり、疲れやすかったり、症状がぶりかえしたりすることがありますので甘く見てはいけません。

副作用報道について 一部の新聞でタミフルを服用したインフルエンザの子が錯乱症状を伴って死亡したことがタミフルの副作用として報道されましたが、厚生労働省や日本小児科学会の見解でも、タミフルとの因果関係ははっきりしない(否定も肯定もしない)とされています。

 元々、上記のようにインフルエンザでは精神・神経症状をともないやすい上に、3年ほど前から日本国内ではインフルエンザの患者さんに対してかなりの高い割合でタミフルが投与されています。この場合、タミフルが原因なのか、インフルエンザそのものの合併症なのかを区別するためには、タミフルを服用した群と服用しない群で統計学的に比較する必要がありますが、現状では困難です。

 よって、いずれの場合でも精神・神経症状の出現に注意をする必要はありますが、特にタミフルの使い方についてこれまで以上に慎重を期する必要はないというのが現段階での見解です。(ただし、このように高い割合で検査してタミフルが投与されている国は世界中で日本だけだということも留意しておく必要はあるでしょう)

 なお、タミフルは1歳未満の乳児には安全性が確立していないため慎重投与となっていますが、全国の小児科医が参加した調査でも、それまで乳児に投与した例で特別の副作用が多いという結果はみられておらず、兄弟での発症例や、1歳近い子で重症感のある場合など、必要に応じて相談の上でタミフルを使うこともあり得ます。それ以外は麻黄湯で対処してみましょう。

登園・登校 インフルエンザの出席停止期間は、熱が下がってから最低2日以上とされていますが、タミフルですぐに下がった場合でも、上記のように諸症状が続くことが多いので、目安としては症状の出始めから5日~1週間は休んで、咳や食欲、体力が回復したのを確認してから登園・登校させた方がいいでしょう。インフルエンザは、日常的に子どもがかかる感染症の中では別格に「強い感染症」であり、急性期が1週間、回復期が1週間、あわせて2週間かかる病気と考えて、なるべく長く休ませるようにして下さい。

 「○日に大事な○○に出る必要がある」のであれば、なおのことしっかりと長く休ませることです。あせって早めに行かせると、かえって長引かせたりぶり返させたりして、「大事な○○」に参加できなくなってしまいます。