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東通村「五歳児就学と六・四制度」特区徹底批判

2005年03月18日 | こども・小児科
まずはこの記事をご覧下さい。
「5歳で小学入学、東通が教育計画」(東奥日報)
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 プランでは、学力充実を図るため小学校就学年齢を一年前倒しして五歳児就学とする。これに伴い小学校に六年間就学し、中学校は四年間とする「六・四制度」とする。小学校入学は一年早まるが、中学校卒業年齢は変わらない。
 また乳幼児施設を統合し幼保一元化施設を設置、村独自の乳幼児教育プログラムに沿った教育を展開。幼小中一環教育を行い、中学校最終学年に当たる四年生の全生徒は生徒寮に入寮することも構想に入っている。
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ただただ呆れてものが言えません。こういったプランが一つの方向性として「あり得る」ことは認めましょう。幼保一元化などは全国ですぐにでも進めるべき政策です。また、小学校就学年齢に関しては早めるのではなく逆に遅くすることができる(選べる)という方式も考えられるはずです。こういった大きなことが「学力充実を図る」などという短絡的な発想で東通村のような(失礼ながら)力のない村で実現できるとはとても思えませんが、それもまた別の議論。

このプランを申請して認められる可能性はゼロに近いとは思いますが、最大の問題は、こういう根幹に関わる問題は特区などという一つの地域、一つの市町村で勝手にやってバラバラの制度が国内に乱立していいものではなく、教育というのは子どもたちにとってかけがえのない、やり直しのきかない真剣勝負なのだから、思いつきのようなやり方でチョロチョロといじくられるのは子どもにとって迷惑でしかない。繰り返しますが、「五歳児就学と六・四制度」が絶対的にダメだと言っているのではなく(良い制度なのかもしれませんが)、これは国全体で議論すべき問題であり北の果ての小さな村で扱う問題ではないということです。転校生のことなんかこれっぽっちも考えていないのでしょうが、小中学校時代「謎の転校生」を繰り返した私としては発言しないわけにはいけません。宮城県の浅野知事が昨年8月にメルマガに書いてくれていますので、一部引用させていただきます。(全文は下記リンクをご覧下さい)

「義務教育費国庫負担金廃止問題」(浅野史郎メールマガジン)
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 知事会の決定と前後して、河村文部科学大臣から、6・3制に変わる制度も各地域の決定で採用できるようにするという「改革」の方向が示された。これは驚くべきことである。こういった基本的なことまでも「地域の裁量で自由にどうぞ」ということになれば、国の責任の放棄にすら見える。義務教育の根幹に触れる6・3制のようなものは、地域ごとに区々にやられていいものとは思えない。実際に、県を越えた引越しをした子女が、小学校6年生に編入されると思ったら、中学校1年生になっていたなどということになるのは、いかがなものであろうか。「全国共通の義務教育」ということに、真っ向から反する事態ではないか。
 この「改革」案の提示で、「ほらこのとおり、知事さん方の裁量の幅はこんなに広がるのですよ」というメッセージを送りたいのだろう。カードを切り間違えている。義務教育への国家の関わり、責任の堅持という、「義務教育費国庫負担金廃止反対論者」が常に持ち出す論拠から見ても、これは禁じ手である。こんな禁じ手を打たなければならないほどに、文部科学省は義務教育費国庫負担金の廃止をさせたくないという思いが透けて見える。
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4 コメント

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記者からも相手にされていない (くば)
2005-03-26 22:23:37
某紙の記事は最初から「?」つきで、鼻から相手にされていない感じですね。それで当然ですが。



http://jyoho.kahoku.co.jp/member/news/2005/03/20050324t23024.htm

5歳で小学校入学? 青森・東通 義務教育6・4制検討

 青森県東通村は、小学校の入学年齢を1年早める義務教育6・4制の導入に向けて検討を始める。越善靖夫村長の諮問を受けた「村教育デザイン検討委員会」が23日、答申した教育改革案に盛り込まれた。ただ、義務教育は法律で年数などが定められており、現在の制度では実現は不可能。村は教育特区の申請を目指すとしている。

 改革案は学力向上を図り、優秀な人材を育てるとともに、先進的な教育の村として移住を促進するのが狙い。

 答申の主な内容は、小学校と中学校の入学年齢をそれぞれ5歳、11歳に1年前倒しし、中学校を4年制に延長。中学4年生の1年間は全寮制とする。幼稚園と保育園は一体化し、乳幼児段階から系統的な英語やIT教育を取り入れる。

 東通村は、学力検査の平均点が小中とも下北郡平均を下回る。建設中の原発を軸に合併しない村づくりを掲げるが、人口減に悩んでいる。

 越善村長は「すべて実現可能な施策だと思う。具体的な検討は新年度から村教委が進める。特区申請も含め全面的に支援する」と話した。財源には原発に伴う交付金などを充てる考えだ。

 しかし、義務教育は教育基本法や学校教育法で期間や入学年齢が決められている。転入出する子どもの学年の扱いなども問題となりそうだ。

 文部科学省初等中等教育企画課は「憲法の定める義務教育が地域によって期間、学年が違うというのはどうか。特区の申請があれば慎重に検討するが、現状では難しい」としている。
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教育特区につきまして (濱野成秋)
2007-07-20 10:27:03
教育特区は必要なことです
 東通村の教育については読売新聞で紹介され、興味を持ちました。日本では、明治当初の義務教育を全国に広げた頃から、貧困の中での就労を妨げるものとして農民からの反発が大きく、公教育はある一定のレベルで義務化し断行をしなければならない不幸な時代が続きました。この必要がなくなったのは、戦後も20年も経ってからで、経済成長を背景としております。その結果、63制そのものが却って教育のスムーズな成長にブレーキをかけることとなり、レベル向上のために、より高い教育環境と進学を求めて、私塾へ通わせる家庭層が激増しているわけです。
 公教育を担当する者がそのいびつな現状を改善し、ミドルクラスの平均的家庭のニーズに合わせて、少々のエリートかな、といったレベルの初等教育や中等教育に地方の自治体が本腰を入れることは、多くのやる気のない自治体に比べ、立派だと誉めてやるべき努力だと思います。むしろ意欲的な取り組みとして評価なさったほうがいいのです。
商店を絞るべきは、内容的にどれくらいアドバンスしているか、そのへんがポイントです。そこで気づいたことなどを、より建設的な意見として、行政当局になさると、喜ばしいことと思います。私はこの行政とは縁のない遠方からの投稿者ですが、ご参考までに以上、述べさせていただきました。あしからず。
 
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教育特区のコメント字句の訂正 (濱野成秋)
2007-07-20 10:33:32
上記拙論の一部訂正です。下から4行目、「商店」は「焦点」の変換ミスです。訂正します。
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ありがとうございます (basil)
2007-07-21 14:09:07
少し古い記事で、この特区についてその後どうなったのか経過をフォローしてませんでしたが、丁寧なコメントありがとうございます。
東通村が真剣に考えて見当したことについては疑っておりませんが、地域の実情に合わせて行う教育と、全国統一して行うべき教育制度とについて、制度の変更をする場合に各地域でバラバラにして良いこととそうでないこととがあるだろうと考えております。
その試行としての特区という位置づけなのでしょうが、子どもにとって、それが良いことなのかそうでないのか、なかなか評価しがたいことです。
いずれにせよ、私は専門家ではありませんが、経緯を見守りたいと思います。今後ともよろしくお願いします。
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