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平成18年度日医母子保健講習会報告(1)

2007年04月12日 | こども・小児科
平成18年度日医母子保健講習会
日時 平成19年2月25日(日)
会場 東京都 日本医師会館

 今年度から乳幼児保健と母性保健を合わせた母子保健講習会に名称が変わり、メインテーマである「子ども支援日本医師会宣言の実現を目指して」産科と小児科が一体となって取り組む必要性を強く打ち出した講習会になりました。
 現在進行している産科と小児医療の危機的状況を打開するために、講演とシンポジウムの大半を費やして提言および議論が交わされました。

講演

1)産科医療の現状と改革への提言
          海野信也(北里大学産婦人科学教授)

 産科医療危機は、臨床研修必修化と昨年の事件報道で顕在化したが、実際にはそれ以前より産婦人科医の減少、診療所分娩取扱医の高齢化、女性医師の割合の増加、産婦人科内での他の分野へのシフトなどが進んでいた。分娩数は減少しているが、リスクの高い高齢の分娩はむしろ増え、現場の負担は増している。これまで小規模の病院・診療所を中心に分散して分娩に対応しながら、世界最高水準の成績を上げてきたが、このシステムは限界に達している。6割を越える若手女性医師が10年後も現場に居続けられることが必須の状況にある。
 母子の安全性の確保と産科医が働き続けられる環境を整えるために、分娩施設の集約化・重点化や地域における連携体制の構築を推し進め、地域小児科センターに相応する地域産婦人科センターをつくり、24時間救急に対応できる産婦人科医(10名)を確保する。同時に、地方では中小規模の施設(医師3名)を残す必要もある。分娩施設数は現在の3分の1、分娩数は大規模施設で60%(施設あたり1286)、中小規模で40%(同450)、産婦人科医の人数は現在のレベルを維持できれば対応でき、助産師は大幅な増員が必要というモデルが示された。

 また短期的に、いま勤務医の開業や診療所の分娩中止を防ぐための改革として、医療事故・逮捕関連の諸問題や看護師内診問題の解決、勤務・労働条件の改善などが急務であり、住民・行政の理解の元に経済的なインセンティブや政策的な誘導の必要性も提言された。

2)小児医療の現状と改革への提言
            別所文雄(日本小児科学会会長)

 小児医療の需要とは「24時間365日設備の整った施設で小児科専門医に診てもらいたい」という患者側の要求に基づくものであり、単に夜間救急を新設しても時間外受診者総数を増やすだけで病院受診者は減らない。病院小児科勤務医の過半数は週60時間以上労働しており、当直明け勤務の危険性は飲酒運転に匹敵する。
 小児科医師数は微増の状態だが、空間的(病院と開業)、時間的(夜間)、生物学的(高齢者や女性)偏在が顕著で、小児科医が2人以下の病院が約半数を占め、7人以上は16%しかなく、集約化・重点化は急務である。しかし、地方では集約化は医療過疎の拡大につながる。
 絶対数でも、日本小児科学会のモデルを達成するために約千人、現体制で当直明けの増員をするために約二千人の小児科医が必要になる。
 医療供給体制の改革のためには、患者・行政側だけでなく、医師供給体制を「公」化し、役割分担を適正化するなど、医療供給側の意識改革も必要であると提言された。

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