熊本熊的日常

日常生活についての雑記

Mind the gap

2012年07月23日 | Weblog

朝、ネットラジオでニュースを聴いていたら、ロンドン大学の調査チームが地下鉄の駅を単位とした地域割で、それぞれの平均寿命を試算して地図にプロットしたものを作ったと報じていた。調査方法の詳細はわからないが、結果のほうはたいへん興味深いものだ。その調査によれば、平均寿命が最も長い場所はオックスフォード・サーカスで96歳。最も短いのはDLRのスター・レインで75歳。その差は21年もある。同じ路線でもテムズ川を挟むと格差が生じる姿も見て取れる。ビクトリア線のピムリコは84歳、テムズを挟んだ隣駅のボクソールは78歳だ。これほど極端ではないが、ノーザン線のバンク/モニュメントとロンドン・ブリッジの間、ジュブリー線のカナリー・ワーフとその前後との間、ウォータールーとエンバンクメントやウエストミンスターの間などにもある。

だいぶ昔の話だが、深代惇郎がエッセイでこんなことを書いている。

さて、さきほど紹介した世論調査には、次の質問項目があった。
「階級を識別するのにもっとも重要な要素を、あなたはなんだと思いますか」
回答は、話し方(33%)、住所(28%)、友人(27%)、職業(24%)の順。服装(12%)や車(5%)はかなり低位にある(一人が複数の要素をあげる場合もあるので、回答の合計は100%を超える)。(『深代惇郎エッセイ集』朝日新聞社 23頁)

どこに住んでいるかというのはその人の育ちを物語るらしい。確かに通りひとつ隔てると雰囲気が微妙に変わるというようなところは、殊に欧州や米国の大都市ではよくあることだ。だからこそ、前衛的な人が敢えて難しい環境の地で活動しようというようなこともあって、かつてのスラムが再生したり、逆にそこそこの場所だったところが荒廃したりすることも、これまたよくあることだ。それでもこうして人の平均寿命というデータを見ると、土地の歴史というのは容易には変わらないものなのだとの思いを強くする。

ところで、東京はどうなのだろうか。なんとなく路線によって乗客の雰囲気が違うような気がするのだが、近頃は相互乗り入れで路線毎の差異が薄まっているかもしれない。東京オリンピックの前に首都高を整備したり、町名を変更したり、その土地の歴史を塗り替えるかのようなことを行政が果敢に実行したようだ。その目的はなんとなくわかるが、それで東京の暮らしはどれほど良くなっただろうか。所期の目的は達せられたのだろうか。

Metro Maps of the World: v. 2 (World Maps)
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