万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の軟化-早くも抑止効果を発揮した安保法案

2015年07月18日 15時17分56秒 | 国際政治
谷内氏、中国首相と会談「対話重要」で一致
 安保法案の衆議院本会議での可決とほぼ時を同じくして、谷内正太郎国家安全保障局長が中国を訪問していました。日本国政府からの局長訪問に対して、中国政府は、これまでの冷淡な態度を改めて、異例の厚遇を以って応じたと報じられております。

 この中国の厚遇ぶりは、早くも現れた安保法案の抑止効果と言えそうです。法案の採択を前にして、中国紙などは、当法案の真の狙いが対中包囲網の形成にあるとする見解を述べており、中国当局も、その可決が、自国の拡張主義的な軍事戦略を狂わすことを十分に承知していたはずです。法案が成立した以上、南シナ海や東シナ海等での無謀かつ違法な行動は、集団的自衛体制の下で阻止される可能性が格段に高くなったのですから、中国としても、強硬姿勢に慎重とならざるを得なくなったことは想像に難くありません。威圧的な対日姿勢を貫くよりも、一先ずは矛を収めて友好を演出する方が得策と考えたのでしょう。ここに、明確な安保法案の抑止力を読み取ることができます。もっとも、中国の軟化に永続性があると信じるには早計に過ぎます。言葉での軟化は行動を伴いませんと無意味ですし、一時凌ぎの巧妙な策略である可能性も否定はできないからです。実際には、海洋覇権を諦めず、着々と軍事力の強化に努めるかもしれませんし、表面では友好のポーズを装いながら、裏では対中包囲網の切り崩しにかかるかもしれません。

 中国の軟化は、安保法案の抑止力の効果であると同時に、対日懐柔政策、あるいは、対中包囲網切断作戦の始まりのサインであるかもしれません。笑顔の中国の方が、強面の中国よりも、遥かに警戒すべき存在なのではないかと思うのです。

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コメント (6)
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