万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日中韓三者三様のナショナリズム

2015年11月03日 15時31分57秒 | アジア
「対日正常化を一歩先に」…韓国メディアが評価
 昨日、韓国のソウルで開かれた日韓首脳会談において慰安婦問題の”妥結”の加速が合意された件について、マスコミ等では、ナショナリズムの視点を絡めた解説が多々見受けられます。しかしながら、日中韓三国のナショナリズムの性質は三者三様で、一括りにすることはできません。

 近年の中国のナショナリズムとは、経済大国から軍事大国への道を歩むアジアの大国としての自負から発しており、国威の発揚や”偉大なる漢民族の復興”を目指すものです。共産党一党独裁体制に対する国民の不満や批判も、ナショナリズムを満足させれば解消できると見なしているため、常に外部に打倒すべき”敵国”を造る必要があります。このため、中国のナショナリズムは攻撃的であり、常に、国民に見せるための具体的な行動を伴う危険性があります。一方、韓国のナショナリズムは、劣等感の裏返し、あるいは、虚勢とも指摘されている歪んだ自己中心主義に特徴を見出すことができます。自らの面子を保つ、実利を得る、あるいは、上位の地位を得るためには、手段を選ばずに他国を貶めるため、中国とは違った意味での攻撃性や他害性があります。もっとも、自らを被害者として強調するのは、過去に惨めな境遇であったことをアピールして同情を引くためではなく、現在において、相手国に要求を飲ませるための”弱者の恫喝”作戦ですので、韓国ナショナリズムは、実利追求が最優先なのかもしれません。それでは、日本国のナショナリズムはどうでしょうか。マスコミなどでは、しばしば、中韓のナショナリズムには”格別の配慮”を示しても、日本国のナショナリズムについては無視するか、”偏狭なナショナリズム”として批判しがちです。おそらく、それは、日本国のナショナリズムは、中韓のナショナリズムに対する”対抗ナショナリズム”として、国民レベルで自然発生したことが原因していると推測されます。中韓による反日政策、特に、”歴史認識”の押し付けと国際プロパガンダ活動は、両国のナショナリズムに内包する攻撃性が日本国に向けられたことを示しています。日本国のナショナリズムは、政府主導でも、マスコミ主導でもなく、不条理で理不尽な誹謗と攻撃に対する自然な国民感情であるとも言えます。実際に、中韓、並びに、反日政策を継続している北朝鮮以外の諸国に対して、日本国が明示的に対抗的な反応を示すことは殆どありません。

 日中韓の三国間のナショナリズムの性質が全く違うことを考慮しますと、攻撃型で共通している中韓のナショナリズムを満足させる解決とは、”日本国の敗北”とならざるを得ません。しかしながら、この解決策では、日本国のナショナリズムが強く反発しますので、”三国のナショナリズムの克服”という課題の”解”とはならないのです。中韓のナショナリズムの相互性が欠如した攻撃性、そして、愛国のためなら犯罪をも無罪とする過激性を考慮しますと、むしろ、両国のナショナリズムのあり方こそ是正を要するのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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