万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ヨーロッパにはテロ発生要因が揃っている-三つ巴の昆明

2015年11月16日 15時09分38秒 | 国際政治
難民政策変更なし=テロリストと申請者は違う―欧州委員長
 今月13日の晩、パリで発生した無差別テロ事件は、容疑者がシリア難民であることを示唆する旅券が発見されたことから、ヨーロッパを震撼させる事態に至っております。メルケル首相の発言を契機にヨーロッパ諸国は大量の難民を受け入れていますが、ISILは、既に難民に自らのメンバーを紛れ込ませたと宣言しているからです。

 ”テロ事件が頻発しやすい要因とは何か”という問題を設定してみますと、現在のヨーロッパを悲観せざるを得ません。何故ならば、現代のヨーロッパの状況を分析してみますと、テロが発生しやすい要因が揃っているとしか言いようがないからです。第一の要因は、テロリストの内部化です。フランスの人口の約1割が移民系住民と言われるように、ヨーロッパでは、長年にわたって継続してきた移民政策により、既に、多数の移民が居住しています。その全てがテロリストではないものの、居住国に反感を持つ、あるいは、敵視している国を出身国とする移民をも受け入れていますので、一定数のテロリストを抱え込んでいると推測されます。第二の要因は、テロリストの組織化です。移民が個人として入国し、一般市民として個人に徹して生活する限り、テロの脅威は大幅に低下します。しかしながら、集団で移民した場合や居住国内で組織が結成されている場合には、武器や資金の供給網が形成されると共に、組織的な活動が可能となりますので、今般の事件のように、計画的、かつ、大規模なテロ事件に繋がります。こうしたテロ組織が、本国のテロ集団に帰属している場合には、本部からの指令によって、移民の居住国がテロ攻撃を受ける危険性はさらに高まります。以上の二つの条件はテロリスト側に関するものですが、第3の要因は、受入側の居住国において、”世界市民”的な思想が一定の影響力を持っていることです。近代人権思想の危険性については、侵害者に対する脆弱性、並びに、敵味方関係の無視による無防備性として既に指摘しましたが、こうした弱点は、テロに対する抑止力の解除をも意味します。相互性の欠如した個人の基本的な権利と自由の尊重は、テロリストにも行動の自由を与えるのです。そして第4の要因とは、近代人権思想を信奉するの左派の人々が、移民政策に反対する人々を攻撃すべき”敵”と見なしていることです。右派のみならず、安全を求める一般国民の声も、左派の人々によって抑えられてしまいますので、テロリストにとりましては、左派勢力は間接的には擁護者となります。

 以上にテロが頻発しやすい条件を挙げてみましたが、これらの要因は、現在のヨーロッパが解き難い三つ巴の様相を呈していることをも示しています。テロ対策の強化を求める右派勢力、近代人権思想の申し子でもある左派勢力、そして、内部の同族、並びに、外部の出身国とも繋がるテロ組織です。テロの撲滅には、テロリスト以外の三者が結束して当たるべきなのでしょうが、そうならないところに、ヨーロッパのテロと移民対策の難しさと昆明があるのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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