本日の日経新聞には、TPPを軸とした経済連携の枠組みの多層的拡大を提唱する社説が掲載されておりました。この社説から判明したことは、既に締結されている中韓二国間の中韓FTAでは、農産品に加えて自動車分野をも排除しており、かつ、中国の李克強首相が、この中韓FTA協定をモデルとした三国間の日中韓FTAを構想していることです。
ところで、今月1日に開催された日中韓首脳会談の結果として、唯一、合意らしい合意として公表されたのは、日中韓FTA協定妥結に向けた交渉の加速化でした。日本国の経団連も賛意を示していると伝わりますが、この協定、三国の”共存共栄”となるのでしょうか。当協定には、懸念すべき点が幾つかあります。第一に、上述したように、近年の対中貿易は、資本財よりも消費財に比重が移りつつありますが、日本国から中国への消費財輸出の大きな部分を輸送機器、即ち、自動車が占めています。仮に、自動車分野が自由化対象から外されるとしますと、日本国のメリットは大幅に低下します。第二に、中国経済の特徴は、政府系企業が優遇されていることです。このため、国策として特定の製品分野に肩入れする行動が見られ、巨大企業による過剰生産は、国際市場における価格破壊の元凶ともなってきました。昨今の報道によりますと、次なるターゲットは液晶パネルとされており、中国製低価格製品の大量流入も予測されます。中国当局は政府系企業に対しては競争法の適用も甘く、かつ、有形無形の政府の輸出支援もあり得ますので、日本企業は、国内外の市場からの撤退を余儀なくされるかもしれません。一事が万事であり、日中韓自由貿易圏内では、競争条件が著しく中国に有利となる可能性があるのです。第三に、日本国を除く、中国と韓国は、依然として為替操作国であり、中国に至っては、人民元の相場は当局の管理下にあります。TPPでは、為替操作国対策が講じられましたが、日中韓FTAでは、両国が輸出拡大を目的とした自国通貨安を実施した場合、日本企業は不利な条件を強いられます。また、第四として、中国は、自国独自の通商ルールの国際的普及を目指しているわけですから、知的財産権の保護等についてTPPと同程度の高レベルのルールが設けられるとは限らず、ルールの質的劣化の可能性も否定できません。
以上に主要な懸念材料を挙げてみましたが、このような問題がある以上、日中韓FTAの交渉加速には疑問があります。中韓の結託により日本国が”一人負け”となる怖れもありますので、日中韓のFTAには、慎重であるべきと思うのです。
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以上に主要な懸念材料を挙げてみましたが、このような問題がある以上、日中韓FTAの交渉加速には疑問があります。中韓の結託により日本国が”一人負け”となる怖れもありますので、日中韓のFTAには、慎重であるべきと思うのです。
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