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Sarah Vaughan / Linger Awhile ( 米 Columbia CL 914 )
サラ・ヴォーンはコロンビアに3枚のアルバムを残したが、"After Hours" や "In Hi-Fi" はジャズのインストでも演奏されるスタンダードが中心に
収録されているので昔から定番としてよく取り上げられるが、このアルバムはインストでは演奏されることのないポップスばかりが収録されているせいか、
ジャズの世界では相手にされてこなかった。 でも、それは間違っている。 若き日のサラ・ヴォーンの最もスイートな歌声が聴けるのがこれだからだ。
収録された楽曲の良さは、このアルバムが1番だ。
彼女がコロンビアと契約していたのは1948年から53年までで、この時期にたくさんの曲を録音した。 コロンビアのレコードにはレコーディングの詳細が
書かれていないが、この時期の彼女のマネージャーで音楽指導していたのはジョージ・スレッドウェルで、彼自身がトラペッターだったこともあり、彼が
レコーディング時にスタジオに集めたミュージシャンはなかなか凄いラインナップだった。 曲によってはマイルス・デイヴィス、J.J.ジョンソン、
バド・パウエルも参加してる。
この時期のサラの歌声は素晴らしく、ノンヴィブラートで真っすぐに伸びていく声量の強さや声質の深みには他を寄せ付けない神々しさがある。 そういう
彼女の声をコロンビアの十分な録音設備が非常にノスタルジックな色合いを活かして上手く録り切っており、彼女の歌を最高の形で残すことができた。
このアルバムで聴かれる "A Lover's Quarrel"、"I Confess"、"Sinner or Saint" などは本当に素晴らしい。
ただ、彼女はこういうポピュラーソングを歌うことにだんだん飽きてきて、もっとジャズ色の濃いレコードを作りたいと思うようになった。 契約時期の
後期でマイルスをスタジオに呼んでスモールコンボ形式で演奏してもらったのも彼女のそういう意向からだったが、やがてコロンビアとの契約を解消し、
マーキュリー・レコードへ移籍する。
後年の大御所扱いされるようになってからのイメージが強いだろうが、彼女にだって若い頃があったのだ。 すらりと細身で、精一杯おしゃれをして、
無心に歌っていたこの時期の作品はどれも本当に素晴らしい。