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Tommy Flanagan / Moodsville 9 ( 米 Prestige MVLP 9 )
"Overseas" を名盤にしているのはエルヴィンのブラシワークと "Verdandi" という曲の力だと思うけど、よくよく聴くと全体的にかなり硬い演奏で、
横揺れ感も意外と希薄だ。 フラナガンのピアノはミスタッチも目立つし、かなり雑に弾いているけど、そういう粗いところをエルヴィンのブラシが覆い
隠してくれている。 本場のジャズメンが来訪してくれたということで、スタジオには大量の酒が差し入れされて、彼らはレコーディングしながらそれらを
全部飲み干してしまい、かなり酔っていたそうだ。 だからピアノトリオの名盤と言われる割には粗っぽい演奏になっている。 ただ、出てくる音の雰囲気が
如何にもスウェーデンの旧いスタジオで録音されました、というレトロな感じを醸し出していて、それが名盤の風格を出すのに一役買っている。
それとは対照的なピアノが聴けるのがこのアルバム。 レーベルコンセプトに沿ったムーディーな選曲になっているせいもあるが、ここでのフラナガンは
万全のデリケートさで鍵盤を撫でるように弾いていく。 普段は欠点とされるRVGが創るピアノの水に溶かした水彩絵具の滲みのような色彩感も、ここでは
このレーベルが描こうとする世界観を映し出す上では逆に好ましい効果を挙げていると思う。 ムード音楽スレスレのところできちんと踏み止まっている
ところに、当時のジャズメンの力量を感じることができる。
これはまだ廃盤だオリジナルだなんてことを知らなかった学生時代から好きだった作品で、未だに飽きずに愛聴できている1枚。 冒頭の "In The Blue
Of Evening" が始まると、独特の雰囲気が立ち上がる。 個人的にはトミー・フラナガンはピアニストとしてはoverestimateされていると思うけど、
Moodsvilleという企画はこの人にうまくハマっている。 同レーベルにもう少し作品が残っていても良さそうなものだが、当時のアメリカではあまり
評価されていなかったようだ。 マイルスもこの人にはまったく興味を示さなかった。