廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

10インチの中の古き良きアメリカ音楽

2020年10月18日 | Jazz LP (Vocal)

Jackie Paris / That "Paris" Mood  ( 米 Coral CRL 56118 )


ジャッキー・パリスはその声質が嫌いなタイプの典型なので一切買わないが、このレコードだけはなぜか例外的によかった。
古いコーラルの10インチで、誰からも顧みられず、エサ箱の片隅で1人寂しそうに転がっていた。

静かなビリー・テイラーのピアノトリオにチャーリー・シェイヴァースが加わり、これまた静かにオブリガートを付ける。
選曲の趣味が良く、地味ながらも心温まるメロディーが切なく歌われる。エヴァンスも取り上げた "Detour Ahead" を歌っている。
全曲がスロー・バラードとしてアレンジされていて、ジャッキー・パリスがとても丁寧に歌っているのがいい。

寒い季節、暖炉で薪がパチパチと音をたてて燃える中、ジャッキー・パリスの静かなバラードを聴いているような光景が浮かんでくる、
そういうタイプの音楽。本人の名前にかけてパリの街並みがデザインされているけれど、内容はそれとはまったく関係なく、
古き良きアメリカの優しい音楽。この手の古い10インチのレコードでしか味わえない独自の世界が素晴らしい。


コメント
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