Jackie Paris / That "Paris" Mood ( 米 Coral CRL 56118 )
ジャッキー・パリスはその声質が嫌いなタイプの典型なので一切買わないが、このレコードだけはなぜか例外的によかった。
古いコーラルの10インチで、誰からも顧みられず、エサ箱の片隅で1人寂しそうに転がっていた。
静かなビリー・テイラーのピアノトリオにチャーリー・シェイヴァースが加わり、これまた静かにオブリガートを付ける。
選曲の趣味が良く、地味ながらも心温まるメロディーが切なく歌われる。エヴァンスも取り上げた "Detour Ahead" を歌っている。
全曲がスロー・バラードとしてアレンジされていて、ジャッキー・パリスがとても丁寧に歌っているのがいい。
寒い季節、暖炉で薪がパチパチと音をたてて燃える中、ジャッキー・パリスの静かなバラードを聴いているような光景が浮かんでくる、
そういうタイプの音楽。本人の名前にかけてパリの街並みがデザインされているけれど、内容はそれとはまったく関係なく、
古き良きアメリカの優しい音楽。この手の古い10インチのレコードでしか味わえない独自の世界が素晴らしい。