廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

クラリネットでジャズを演る狙い

2020年10月24日 | Jazz LP (Decca / Coral)

Tony Scott / In Hi-Fi  ( 米 Brunswick BL 54021 )


トニー・スコットがワンホーンで滑るようになめらかに演奏した佳作。出てこい出てこい、と念じていたら、ちゃんと出てきた。
念ずれば通ずる、レコード漁りの不思議である。

当時のモダン・クラリネットは、トニー・スコットとバディ・デ・フランコがポール・ウィナーを巡ってデッドヒートを繰り広げていた。
入れ替わり立ち代わりという感じだったようだが、この2人は作る音楽のタイプが結局違っていたので、途中からは道が分かれて、
お互いがそれぞれ別の道へと進んで行くことになる。このアルバムは、わが道を行く前のオーソドックなスタイルを捉えたもの。

ただ、そうは言っても、他のクラリネット奏者たちとは一線を画す独特の浮遊感を見せている。サックスやトランペットのように
大きな音で音楽をリードすることには元々向いていないが、音楽を丸ごと包み込んでフワッと浮かせて柔らかく漂わせるような芸当が
クラリネットにはできる。トニー・スコットがこの時期にやろうとしていたのはそういうことだったのではないか。

わざわざクラリネットでモダン・ジャズをやるということは、サックスやトランペットとは違うことを狙ってのことだろう。
トニー・スコットにはその自覚が明確にあったように感じる。そして、それは上手くいった。このアルバムがそれを証明している。


コメント (2)
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