Artie Shaw / Plays Cole Porter ( 米 MGM E-517 )
レギュラー盤の新入荷コーナーでパタパタしていて、フッと手が止まったレコード。メル・トーメが歌っているではないか。
"What Is This Thing Called Love" 、"Get Out Of Town" の2曲だけだけど、こんなところで歌っているなんて知らなかった。
アーティー・ショウと言えば ”Moonglow" だし、ビリー・ホリデイを専属歌手にして史上初めて白人バンドに黒人歌手を常設したり、
グラマシー5という小編成のコンボもやるなど、見かけのイメージとは違ってなかなか硬派なところがあった。
ショウ・ビジネスの世界で大成功し、50年代中期に早々と音楽界からは引退したので、残ったレコードはスィング時代のものが多く、
この10インチもそんな中の1つだが、テディー・ウォルターズやキティー・カレンの歌も入っており、全編が楽しく聴ける。
アレンジもナチュラルで、ハーモニーも柔らかく上質で、ビッグ・バンド臭さもなく洗練されている。ベニー・グッドマンや
ウディ・ハーマンのようなアクの強さがなく、そこがいい。
10インチくらいのサイズの方が飽きずに聴けてちょうどいい。2曲とは言え、メル・トーメの歌が聴けるのだから、
これはこれで立派な稀少盤と言っていい。どん底のレコード漁りの日々で渇いた心が、ほんの少しではあるけど潤った。