

Bill Evans / Hooray For Bill Evans Trio ( Session Disc 113 )
こちらは1960年4月30日、5月7日にバードランドへ出演した時の演奏で、(1)と同じ時期のもの。レパートリーは似たような内容で、
この時期のライヴの定番だったのだろう。細部を比べればテイクごとにいろいろと違いはあるものの、大きくは同じ傾向の演奏だ。
ライヴらしく奔放で明るい演奏となっており、聴いていて楽しい。このバードランド・セッションはまとめてCD化もされているし、
ブートの生い立ちなどについてもネットに詳しい記事がたくさん載っている。ここまでくると、ブートというよりは事実上の公認の
記録と言ってもいいかもしれない。
これらの演奏を聴いていると、我々が知ったような気でいるビル・エヴァンスの姿というのは、本当にごく一握りのものでしかないんだな
と思う。場所も時間も離れている以上はしかたのないこととは言え、正規にプロデュースされ、きちんとパッケージ化されたものだけを
聴いても、実は何もわかっていないのだということを痛感させられる。
スコット・ラ・ファロのベースがしっかりとした音で録れており、それは大きなウッドベースの太いネックの木材の質感がわかるような音で
そんな細かいところに感銘を受けたりする。そういう小さなことの積み上げがやがては大きな感銘へと発展していく。
"Come Rain or Come Shine" や "Autumn Leave" が繰り返し演奏されるけれど、またか、という印象にはならない。聴くたびに新たな
感銘が湧いてくる。
これらの演奏もヴァンガードでのライヴのように内容を厳選して1枚のアルバムとしてリヴァーサイドがリリースしていれば、後世に残る
名盤となっていただろう。その原石がここには眠っているのだと思うと、このブートの価値の重さを今更ながらに実感する。