Tony Bennett / Snowfall ( 日本 CBS・ソニーレコード SONX 60088 )
先日亡くなったトニー・ベネットの最初のクリスマス・アルバム。と言っても1968年発売で、他のビッグネームと比べると遅いリリースだ。
経緯はよくわからないが、クロスビーやシナトラ、ナット・キング・コールらの有名アルバムがある中では制作に慎重だったのかもしれない。
メル・トーメやサラ・ヴォーンもこの時期にはアルバムを作っていない。おそらく、アメリカではポピュラー歌手たちが数えきれないほどの
クリスマス・アルバムを作っていただろうから、そういう有象無象とは一線を引いたものにしなければという自負があったのかもしれない。
私が子供だった頃に比べると、最近のクリスマスはその有難みのようなものは随分と希薄になってしまったような気がする。昔は12月になると
デパートに行くのが楽しみで仕方がなかった。飾り付けはクリスマス一色となり、ジングルベルのメロディーがずっと流れていて、そこはまるで
別世界だった。今よりも冬はもっと寒かったが、そこだけは暖かく、甘い匂いが漂い、人々は幸せそうな顔をしていたような気がする。
私がクリスマス・アルバムが好きなのは、自分の中でクリスマスがそういう記憶と結びついているからだろう。
ゴージャスなオーケーストラをバックに、トニー・ベネットの歌声が響き渡る。いつものことだが、オーケストラのサウンドに負けることのない、
素晴らしい声だ。亡くなったことが今更ながらだが悔やまれる。
クリスマス・アルバムはそれ自体が幸せだ。トニー・ベネットがクリスマス・アルバムを残してくれたことを噛みしめて聴いていたい。