廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

前哨戦としての一枚

2017年10月28日 | Jazz LP

Kronos Quartet / Monk Suite ; Plays Music Of Thelonious Monk  ( 米 Landmark Records LLP-1505 )


日本でクロノス・カルテットが一般的に認知されたのはこのアルバムが出た時で、当時ジャズ誌のディスク・レビューに載って好意的に書かれていたのを私も
よく憶えている。 このユニットがやっているのはクラシックではないけれど、それでもクラシックがジャズに手を差し伸べた、という友好的な姿勢として
歓迎されていたように思う。 ただ今の耳で聴くと、スコープがはっきりしないなという感は否めない。 特にビル・エヴァンス集を知っていると尚更そう感じる。

その1つの要因は、ロン・カーターのウォーキング・ベースにある。 いつものぼやけた感じでベースを弾いているのはまあいいとして、ベースを入れてこういう
弾き方をさせているのは、つまり音楽全体をジャズとして建付けているということで、これがあまりパンチがない。 弦楽四重奏がその魅力を発揮するのは
こういうジャズのような音楽ではないから、そもそも弦楽四重奏としての良さは全然ないし、ジャズとしてのスリルも希薄なことから、どっちつかずの状態で
宙ぶらりんな感じになっている。 これが例えばデイヴ・ホランドがウォーキング・ベースを弾いていたら、またちょっと違った印象に仕上がったと思うけれど、
ロン・カーター先生では限界があるように思う。

楽曲を魅力的に演奏するという観点で見ても、"Round Midnight" はあまり成功しているとは言えないし、"Brilliant Corners" はオリジナルのほうが
全然迫力があって、その足元にも及ばない感じだ。 モンクの音楽なんだから、その一番の本質であるヒップさが上手く表現されなければ、何をやってみても
しっくりこないのは当たり前かもしれない。 ユニークなアプローチだとは思うけれど、企画の面白さだけで終わってしまった感がある。

だた、これを踏まえて翌年のエヴァンス集には取り組んだようで、あちらは名作に仕上がっていて一安心である。 そういう意味では、このモンク集は
前哨戦の位置付けだったのかもしれない。 

以前はCDで聴いていたが、レコードのほうが音はずっといい。 だから、今回拾った安レコで聴くと、以前よりも音楽自体はよりしっかりと把握できるようにはなった。
但し、その分、粗も見えてしまうことにはなる。


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