冬の僅かな間にしか出会う事がない、イリオモテボタル(イリオモテボタル科、絶滅危惧種)のメス成虫です。成虫でありながら見た目は芋虫状のまま(ネオテニー、幼形成熟)です。メスはお尻を上げ光と共に性フェロモンを出しオスを誘います。ホタルの中にはメス成虫は光らないか、光っても薄っすら光る程度の物が多いようですが、イリオモテボタルの場合は逆でオスが光りません。光らないオスを見つけるのは難しく、見たい時はお尻を上げているメスの側でじっと待つのが一番でしょう。イリオモテボタルは自然と人との境界が今よりあやふやだった頃、オイラが石垣島に来た20年ほど前は民家の石垣や道端でまだ見る事が出来ました。しかしここ数年はなかなか見つける事が出来ず、今冬も市街地側では出会えず、島の先輩方のお陰で何とか撮影する事が出来ました。
一枚目の画像はLEDライトに赤いフィルターをかけ、光量はバルブで数秒開けて映る程度に落として撮影した物です。なぜ赤い光りでの撮影かと言うと、通常の灯にくらえべ刺激が少なく特に夜行性の生き物に対し有効だとされるからです。たまに昆虫は赤色が見えないから赤色灯を使っていると言う方がいますがそれは半分間違いです。実際には同じ昆虫でも種類によって、また性別によっても違ってきます。ただ昆虫に限らず夜行性の生物は2色覚が多く、赤と緑が見ずらいようです。これは色で見分けるより濃淡で見分けた方が(特に夜)獲物や敵を識別しやすいからです。人間も赤緑色弱の人は夜目が利き、昼間でも通常の人より生き物を見つけるのが早いと言います。猟師さんや漁師さんでやたら獲物を取るのが上手い人がいたら、このタイプの方かも知れません。ちなみに人にも3色覚よりもさらにもう1色覚、紫外線が見えている方がいます。これは哺乳類が爬虫類から進化した名残だと言われています。そして赤緑色弱が男性の20人に1人と言う高確率で存在するのもかつての哺乳類が夜行性だった名残だとも言われています。
たしかにホタルも夜行性ですから赤緑が見え辛い可能性はあります。ただし赤けりゃ良いってものではありません。例えば普通の光量の灯なら赤灯でも光を当てると嫌がり、光るのを止め隠れてしまいます。ですからホタルの為にも撮影したい自分の為にも、かなり暗い光量でないといけません。撮影時こんな事がありました。月が明るい夜、月明かりがモロに当たる場所ではホタルは出て来ませんでした。自然の月明かりでも嫌がるのですから人口の灯は嫌に決まってる!と言う事です。
2枚目の画像はこれだけ書いておきながらなんですが、通常の白色灯をほんの一瞬当てて撮影した物です。ただし言い訳になりますが、光量は三日月時の夜の明るさよりも暗いんじゃないか?と思うくらい落としています。ホタルのお尻の光より体の方が暗く写っているのがその証です。そしてどうやったら極力短い瞬間だけ当てる事が可能か?を考えました。方法は2通り。いきなり本番は不味いので、夜自宅の庭でテストをしました。1つ目、スイッチでカチカチッと「点けて消して」をやる。2つ目、手か何かで光を「当てて隠して」をやる、です。結果は2つ目の手でやって、さらに灯自体を同時によそに向ける、でした。これが一番少なく当てるのに適していました。
ちなみにこれらの方法は私がまだ内地にいる頃「部屋の様子も照明器具も一枚の画の中でキレイに出したい」という注文を受けた時の応用です。当時はまだポジフィルムでの撮影だったので、今だったらデジタル合成でめっちゃ簡単ですがフィルムの時代は「フィルムスキャンしてフォトショップで合成」より、多重露光とかバルブで工夫して撮影した方が楽(自分の儲けが増える)でした。実際にはこの撮影の真逆をホタルに試して見た訳です。オイラの基本は報道でしたが、フリーだったので頼まれれば何でも撮影していたのが今になって役にたっています。
★今考えているのはストロボの光量を物凄く落とす事が出来るのなら、それが一番瞬間的に当てる事が可能だろうと思います。なにせストロボの発光時間は数万分の1秒です。またもしホタルが動かないでいてくれるのならば、ホタルの光とホタル本体を数枚に分け撮影し深度合成した方が、ホタルへの光りの負担もより少なく(上手くしたらゼロに)、キレイな一枚になるかも知れません。
★著作権保護の為、見苦しい画になっている事をお詫びします。
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