＜幻の糸＞とデイ＝ルイス

１９５７年４月２９日、ロンドン出身のダニエル・デイ＝ルイスは、８０年代英国美青年ブームの中、スティーヴン・フリアーズ監督…

「マイ・ビューティフル・ランドレット」（８５）、ジェームズ・アイヴォリー監督「眺めのいい部屋」（８６）で注目されます。

「父の祈りを」（９３）、「ギャング・オブ・ニューヨーク」（０２）でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、受賞したのは…

「マイ・レフトフット」（８９）、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」（０７）、「リンカーン」（１２）と３回もあります。

出演作が寡作なのは靴屋になると修行したり、大工になったり、俳優業から休業したりと、俳優に固執していないからのよう。もったいない…。

そんなデイ＝ルイスをずっと見て来たファンとしては、とうとうこの日が来た…という感じです。はっきりと＜引退作＞とうたった作品が…

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のポール・トーマス・アンダーソン監督「ファントム・スレッド」（１７）。１９５０年代のロンドン。

英国ファッション界で中心的存在の仕立屋レイノルズ・ウッドコック（ダニエル・デイ・＝ルイス）。ある日、ウエイトレスのアルマ…

（ヴィッキー・クリープス）と出会い、彼女をミューズとして迎え入れます。しかし、アルマの存在が規則正しいレイノルズの日常を…

変えていくのでした。果たして？レスリー・マンヴィル共演。アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた本作。見届けます。

クルーニー兄貴とコーエン兄弟

ジョージ・クルーニーが、ジョエル＆イーサン・コーエン兄弟監督と組んだのは、「オー・ブラザー！」（００）から。

続いて「ディボース・ショウ」（０３）、「バーン・アフター・リーディング」（０８）、「ヘイル、シーザー！」（１６）があります。

俳優の他、監督、製作者としても活躍するクルーニーの最新監督作に、コーエン兄弟が脚本家として参加。クルーニー自身と…

彼の製作会社Ｓｍｏｋｅ Ｈｏｕｓｅの共同設立者グラント・ヘスロヴも加わっています。それが「サバービコン 仮面を被った街」（１７）。

１９５９年、郊外の街サバービコン。ニッキー・ロッジ（ノア・ジュープ）少年は、会社員の父ガードナー（マット・デイモン）と…

足の不自由な母ローズ（ジュリアン・ムーア）と暮らしています。ある日、自宅に侵入した強盗によって、母ローズが亡くなります。

その後、ローズの双子の妹マーガレット（ムーアの２役）がニッキーの面倒をみるため、サバービコンにやって来ます。

なんとか日常を取り戻そうとする３人。その頃、白人だけのコミュニティに黒人一家が越して来ます。アメリカン・ドリームを実現した…

完璧なニュータウンの裏側とは？そして街の人々と家族の正体にただ一人、気付くニッキーは？実際に起こった人種差別暴動を描いた本作。

「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」（１３）のオスカー・アイザック共演。コーエン兄弟とクルーニー。うふふ。

氷の上のスキャンダル

トーニャ・ハーディングは、１９７０年１１月１２日オレゴン州ポートランド出身のフィギュアスケート、アメリカ代表選手でした。

１９９２年アルベールビル・オリンピックでは、第４位。そして１９９４年１月６日、リレハンメル・オリンピック選考会の…

全米選手権大会会場で、練習を終えたライバルのナンシー・ケリガンが何者かに膝を殴打され、負傷。ハーディングは優勝します。

世に言う『ナンシー・ケリガン襲撃事件』です。果たして、ハーディングとはどんな人物だったのでしょう？そして事件の真相は？

「ラースと、その彼女」（０７）、「ミリオンダラー・アーム」（１４）、「ザ・ブリザード」（１６）のクレイグ・ギレスピー監督…

「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」（１７）で、それがわかります。当時はニュースやＴＶで大騒ぎでした。

貧しく暴力が日常の家庭で生まれ育ったトーニャ（マーゴット・ロビー）は、幼い頃からスケートを初め、天性の才能と努力を重ね…

９２年アルベールビル、９４年リレハンメル・オリンピックに出場することに。ところが、元夫のジェフ・ギルーリー（セバスチャン・スタン）の…

友人ショーン・エッカート（ポール・ウォルター・ハウザー）が、ケリガン選手を襲撃。やがて、トーニャ自身も疑われ…果たして？

代表となったリレハンメルでの結果は、第８位。現在４７歳の彼女はボクサーとか。話題は、母ラヴォナ役アリソン・ジャネイの怪演。楽しみ！

ボストンよ、強くなれ！

昨年６月に公開された、ピーター・バーグ監督「パトリオット・デイ」（１６）。マーク・ウォールバーグ主演で、２０１３年４月１５日に…

起きたボストンマラソンでの爆弾テロ事件を描いたサスペンスドラマでした。５０万もの観衆の中から、犯人を探し出すという実話を…

元にしていますが、事件発生からわずか１０２時間（４日間）で逮捕に至るまで、映画は緊張感を持って進行。未見でしたら、ぜひ。

映画の中でも取り上げられましたが、この事件を機にテロに屈しない姿勢を示す合言葉が、『ボストン・ストロング』でした。

デヴィッド・ゴードン・グリーン監督「ボストン ストロング～ダメな僕だから英雄になれた～」（１７）が、公開されます。

原作は、事件の被害者となったジェフ・ボーマンと「ミケランジェロ・プロジェクト」（１３）の原作者、ブレット・ウィッターの共著。

ボストンで暮らす２７歳のジェフ・ボーマン（ジェイク・ギレンホール）は、ごく普通の青年。別れたけど今もヨリを戻したいと願う…

元カノのエリン・ハーレイ（タチアナ・マズラニー）が、ボストンマラソンに出場するので、会場に応援に駆け付けます。

ところがゴール地点近くで爆破テロが発生！両足を失い、昏睡から目覚めたジェフは警察に協力し、そのおかげで犯人逮捕へと繋がります。

しかし、ジェフの戦いはこれからでした。果たして？共演はミランダ・リチャードソン、クランシー・ブラウン。絶対見ます。

実録、ＦＢＩに逮捕されるまで。

イドリス・エルバは、１９７２年９月６日ロンドン出身、４５歳。父はシエラレオネ出身、母はガーナ出身。映画デビューは…

グレゴール・ジョーダン監督「戦争のはじめかた」（０１）。見てました。その後、スティーヴン・ホプキンス監督「リーピング」（０７）に出演。

見てました。他にガイ・リッチー監督「ロックンローラ」（０８）、ケネス・ブラナー監督「マイティ・ソー」（１１）、リドリー・スコット監督…

「プロメテウス」（１２）、ギレルモ・デル・トロ監督「パシフィック・リム」（１３）、ジャスティン・チャドウィック監督…

「マンデラ 自由への長い道」（１３）、ジェームズ・ワトキンス監督「フレンチ・ラン」（１５）、ジャスティン・リン監督「スター・トレック ＢＥＹＯＮＤ」（１６）

ニコライ・アーセル監督「ダークタワー」（１７）などに出演。見てました。次期００７役の候補にあがっているという、エルバですが…。

絶対条件の英国人であることはクリアですが、果たして？それはともかく、最新作はアーロン・ソーキン監督「モリーズ・ゲーム」（１７）。

２００２年、モーグルのオリンピック代表の選考大会でケガをし、断念したモリー・ブルーム（ジェシカ・チャステイン）。

ロサンゼルスで１年間休暇を取っている時、勤務先の上司から違法ポーカーゲームのアシスタントを頼まれます。巨額の金を賭けるセレブたち。

やがて自分のゲームルームをオープンするモリーでしたが…。エルバはモリーの弁護士チャーリー・ジャフィ役。父親ラリー役はケヴィン・コスナー。見ます。

主役降板、撮り直し、オスカーノミネート！

新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストの娘パトリシアは、１９７４年２月４日誘拐されます。１９歳でした。現在は６４歳。

大西洋単独無着陸飛行に初成功したチャールズ・リンドバーグの息子ジュニア１歳８か月は、１９３２年３月１日誘拐、殺害されました。

事情は違うものの、お金持ちの子供たちは、誘拐事件に巻き込まれやすいのです。石油王ジャン・ポール・ゲティも例外ではありません。

「レジェンド 狂気の美学」（１５）の原作者ジョン・ピアソンの小説を映画化。それが「ゲティ家の身代金」（１７）です。

監督はリドリー・スコット。実は撮影は終了し、公開１か月前に主演のケヴィン・スペイシーがスキャンダル（本当に残念）で降板。

急遽、クリストファー・プラマーに交代し、監督は撮り直したそうです。そしてプラマーは、本作でアカデミー賞助演男優賞にノミネート。

１９７３年７月ローマ。石油王ジャン・ポール・ゲティ（クリストファー・プラマー）の１７歳になる孫、ジャン・ポール・ゲティ３世…

（チャーリー・プラマー）が誘拐されます。身代金は１７００万ドル。しかし、彼は支払いを拒否。実は彼、世界一の大富豪でありながら…

稀代の守銭奴、ケチだったのです。ポールの母ゲイル（ミシェル・ウィリアムズ）は、離婚でゲティ家の一員ではなく、支払いは不可能。

息子を取り戻すには、ゲティとも戦うことに。果たして？マーク・ウォールバーグ、ロマン・デュリス、ティモシー・ハットン共演。ぜひ。

シュワちゃんの長男、パトリック

アーノルド・シュワルツェネッガーも、現在７０歳。そんな年なんですね。当然、私生活も色々あって、子供もいっぱいいます。

と言っても、私生活にはまったくと言ってくらい関心がないんですが、親と同じ俳優、女優の道に進めば話は別です。

シュワちゃんの息子も俳優になっています。母親は、マリア・シュライヴァー。彼女はジョン・Ｆ・ケネディの妹、つまりケネディ家の一員。

それが１９９３年９月１８日、Ｌ．Ａ．出身のパトリック・シュワルツェネッガー。モデルからスタートし、０６年から映画に。

初めての主演作品が公開されます。スコット・スピアー監督「ミッドナイト・サン　タイヨウのうた」（１７）です。オリジナルは…

日本の「タイヨウのうた」（０８）で、ハリウッドリメイクなんですね。１７歳のケイティ・プライス（ベラ・ソーン）は、幼い頃に…

色素性乾皮症（ＸＰ）と診断され、太陽の光に当たることができず、日中は父親ジャック（ロブ・リグル）と２人で家に過ごしていました。

夜しか外出できないケイティの楽しみは、駅前でギターの弾き語りをすること。そんなある夜。以前から気になっていた隣人の…

チャーリー・リード（パトリック・シュワルツェネッガー）が、やって来ます。初めて会うケイティに一目惚れするチャーリー。

しかし、ケイティは病気のことを隠したまま、恋に落ちるのでした。果たして？親友のモルガンにクイン・シェパード共演。気になります。

２００１年、１２人の騎馬隊

タイカ・ワイティティ監督「マイティ・ソー バトルロイヤル」（１７）で、ロン毛のソーがいきなりものすごい短髪になってしまい…

びっくりして、ガッカリしました。だってロン毛のクリス・ヘムズワースが、お気に入りだったから。ああ～。短すぎるでしょ！

と思ったら、この作品のせいだったんですね～。それがダグ・スタントン原作、ニコライ・フールシー監督「ホース・ソルジャー」（１７）。

ＣＭ監督、報道写真家のフールシー初監督作品です。“ホース・ソルジャー”とは、アメリカ陸軍特殊部隊グリーンベレーの騎馬隊のこと。

２００１年９月１１日アメリカ同時多発テロ発生。翌日、対テロ戦争の最前線部隊に志願したミッチ・ネルソン大尉（クリス・ヘムズワース）。

特殊作戦実行部隊１２名の隊長に任命され、アフガニスタンへ。任務は、反タリバンの地元勢力を率いるドスタム将軍（ナヴィド・ネガーバン）の…

協力の元、わずか３週間でテロ集団の拠点マザーリシャリーフを制圧すること。しかし、行く手に立ち塞がる敵の数、なんと５万。

さらに、険しい山岳地帯の最大の武器は＜馬＞だと教えられます。果たして？本作は、最高機密とされてきた実録を元にした作品。

マイケル・シャノン、マイケル・ペーニャ、ウィリアム・フィクナー共演。製作を務めるジェリー・ブラッカイマーは、「トップガン」（８６）、

「ザ・ロック」（９６）、「コン・エアー」（９７）、「アルマゲドン」（９８）、「ブラックホーク・ダウン」（０１）などがあり、超期待！

６０年代ＳＦ映画はここから。

こんな映画があったなんて！予告編を見た時、かなり衝撃を受けました。そしてぜひ見たい！と。それがインドゥジヒ・ポラーク監督…

「イカリエーＸＢ１」（６３）で、共産主義下のチェコスロヴァキアで作られた本格的なＳＦ作品。今から５５年も前なんですもん。

さらにこの作品は、デジタルリマスター版で、しかも日本初公開！２０１６年に４Ｋ修復され、その年の第６９回カンヌ国際映画祭…

カンヌ・クラシックスで上映されたそうです。何がすごいかというと、共産主義下のチェコスロヴァキア映画というのもですが…

その後のＳＦ映画に多大なる影響を与えたという事。１９６６年製作のＴＶシリーズ「スタートレック」（６６～６９）や…

スタンリー・キューブリック監督「２００１年宇宙の旅」（６８）、登場するロボットはＴＶシリーズ「宇宙家族ロビンソン」（６５～６８）の…

フライデーのオリジナル？２１６３年、宇宙船イカリエーＸＢ１は生命探査のため、アルファ・ケンタウリ系へと向かっていました。

途中、漂流中の朽ちた宇宙船を発見します。かつて地球から旅立った宇宙船で、船内には謎の死を遂げた乗組員たちの死体が…。

さらにこの船に積まれた核兵器が爆発。調査に入ったクルーたちが犠牲に。そのまま旅を続けるイカリエーＸＢ１、果たして？

『ソラリスの陽のもとに』などのスタニスワフ・レム原作、ＳＦ小説『マゼラン星雲』の映画化。ＳＦ好きには、素晴らしい機会です。ぜひ。

ルーヴルの肖像画たち

まだ写真がなかった頃、自分や家族の顔や姿を遺すには、肖像画が一番。彫刻だとちょっと大変そう。でも、そもそも肖像画を遺そうと…

いう人はリッチだから。ところで絵画展でのお気に入りは？宗教画、風景画、風俗画、人物画、静物画、歴史画、自画像などたくさん。

個人的には、宗教画や人物画、肖像画、自画像が好き。公開中の「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」は、その点からも素晴らしい。

そして今年最大の話題は、国立新美術館での「ルーヴル美術館展 肖像芸術 人は人をどう表現してきたか」です。

本展では、古代メソポタミアの彫像や古代エジプトのマスク、そして１９世紀ヨーロッパの絵画や彫刻まで、ルーヴル美術館全８部門の…

約１１０点が来日します。ポスターの絵は、ヴェロネーゼ（本名パオロ・カリアーリ）作『女性の肖像』（１５６０年頃）…

通称『美しきナーニ』と呼ばれる、ルーヴルが誇る肖像画の至宝だそうです。素晴らしい！他にも、アントワーヌ＝ジャン・グロ作…

『アルコレ橋のボナパルト（１７９６年１１月１７日）』（１７９６年）、アンヌ＝ルイ・ジロデ・ド・ルシー＝トリオゾンの工房…

『戴冠式の正装のナポレオン１世の肖像』（１８２７年）、ジャック＝ルイ・ダヴィッドと工房『マラーの死』（１７９４年頃）、

レンブラント・ファン・レイン作『ヴィーナスとキューピッド』（１６５７年頃）など。もちろん、彫刻たちも見逃せません！