[3月14日10:00.財団仙台支部事務所 敷島孝夫]
「参事、今日はホワイトデーですが……」
総務部の執務室内で、課員に話し掛けられた敷島。
「ああ。いつものパターンだと、リンが真っ先に来るな」
「兄ちゃーん!」
「ほら、来た」
鏡音リンが入ってきた。
後ろからはエミリーが走って来る。
「鏡音リン。入館手続き・せよ」
「うあぁあぁあ!」
エミリーに首根っこを掴まれ、ズルズルと引きずられていった。
「参事?」
「なに、毎年のことだ」
敷島はズズズと茶を啜った。
「プロデューサー、すいません。毎年のことで」
“双子の弟”の鏡音レンが申し訳なさそうに言った。
「本当は“弟”のボクから渡した方がいいんでしょうが……」
「いいんだよ、お前は」
「でも……」
「イベントでファンに渡すホワイトデーの方がよっぽど価値があるよ」
「あ、はい。この後、そういうイベントがあって……」
「精が出るな」
「いえ。応援してくれるのは嬉しいですから」
「KAITOなんか、朝から駆り出されてるらしいな?」
「ええ。それにしても、リンには来年はちゃんと、もっと静かに入って来るようにさせますから」
「そのうち、エミリーの手をすり抜けるようになるかな?」
「さすがにエミリーはムリですねぇ……」
「はははっ!」
「マリオとルイージなら倒しましたけど」
「なにいっ!?」
[同日11:00.同場所研究室 敷島孝夫&鏡音レン]
「通りで、リン遅かったんだな?」
敷島とレンはドアの隙間から研究室を覗いた。
「あ、あの……リン、そろそろイベントの仕事が……」
「シャラップ!どうやって、マリオとルイージを倒したのか、そのデータを取ってからよ!」
リンは、ほぼ拘束されている状態だった。
アリスがリンのメモリーを解析して、マリオとルイージを倒した経緯について分析している。
「フム。ここの瞬間、一気に数値が上がってるわね。どういう現象で、そんなことが……」
「エミリー!助けてーっ!」
「天罰・だ」
エミリーは拘束具から逃れようとしているリンを押さえ付ける役をやっていた。
[同日12:00.同場所総務部 敷島孝夫&MEIKO]
「リンがマリオとルイージを倒したですって?」
「そうなんだよ」
「……プロデューサー、4月1日まであと何週間あると思って?」
「嘘じゃないから!作者のエイプリルフールネタじゃないから!」
「で、アリス博士に捕まってると」
「まあ、そうだな。あっ、それでお前へのホワイトデーだが……」
「❤」
「ブラ・ショーツのセットでいいな?」
「このヘンタイ!……まあ、いいけど。……もしかして、ミク達も?」
「バレた?」
「アンタもワンパターンだね!」
「リンだけ違うよ。リンはゲーム機欲しいって言ってたからさ」
「ああ、だっけ?」
と、そこへ……。
「うへ……。やっと終わったYo〜!」
フラフラになって戻って来たリンだった。
「全く。とんだ弱点だったわ」
その後からアリスもやってくる。
「おおかた、リンの『歌』で怯んだ隙に、レンがブースターで体当たりしたってところかい?」
敷島が言うと、
「アンタ、知ってたら教えなさいよ!」
「お前、俺と敵対してた時にそのネタ、使ってただろ?まあ、あの時ブッ壊したのはバージョン4.0の方だけど……」
「そんなのいちいち覚えてないよ!」
「じゃあ、リン。お前にホワイトデーのプレゼントだ。PS4な」
「おおっ!さすが兄ちゃん、太っ腹〜!」
リンは大歓喜で、ゲーム機の入った箱を受け取った。
「一体、何なの?」
アリスが訝し気な顔をした。
「アリス、お前にもやるよ。ブラ・ショーツのセット」
「アリス博士にも用意してたの!?」
MEIKOは目を丸くした。
「あ、アリガトウ……」
その後、初音ミクや巡音ルカも事務所を訪れ、敷島は彼女達にもプレゼントを贈った。
……ここまでは良かった。
[3月15日 09:00 宮城県仙台市内 敷島のマンション 敷島孝夫]
事務職である敷島は基本、土日・祝祭日は休み。
ゆっくり寝ていようとしたのだが、枕元のケータイが鳴り響き、それで起こされた。
「うーん……。何だ、何だ?」
敷島は寝ぼけまなこで電話を取った。
発信元はMEIKOになっている。
「はい、もしもし?」
{「ちょっと、プロデューサー!昨日もらった下着なんだけど!」}
「気に入ってくれなかったかい?」
{「ていうかさ、何か間違えてない!?」}
「は?何が?」
{「緑のストライプ柄だったんだけど、これって本当に私用?」}
「あれ……?」
{「ミク用だよね?明らかに」}
「そ、そうだな……。あれー……?ちょっと……ゴメン。すぐに確認するわ。……うん。ちょっと待ってて」
敷島は電話を切った。
「……あっ、そうだ。アリス!アリス!」
すると、アリスの部屋から、エミリーが出て来た。
「敷島・さん。ドクター・アリスは・研究所に・行かれました」
「何だよ、こんな時に……。いや、アリスにも俺が渡したプレゼント間違えてなかったかなって……」
「その・下着を・着用されて・ましたが?」
「何か言ってた?」
「ノー。何も・仰って・おりません」
「ということは、アリスに送ったのは間違い無いんだな。MEIKOとミクのが入れ替わったのか。よし」
敷島は初音ミクに電話した。
{「おはようございます!たかおさん!」}
「おう、おはよう。悪いな、朝から」
{「いいえ。何のご用ですか?」}
「昨日、お前に送ったプレゼントなんだが……」
{「あ、はい。マネージャーさんからは、サイズも違うし、あまり似合わないって言われちゃって……」}
「だよな。ゴメン。実はそれ、MEIKOに送ろうと思ってたヤツでさ。手違いで、入れ替わっちゃったみたいだ」
{「そうなんですか。MEIKOさんなら、大人の女性として似合ってますものね」}
「ああ。だから、後で取りに行くから、悪いけど保管しててくれる?」
{「分かりました。でも、黒系の下着なら、MEIKOさんより、むしろルカの方が似合ってると思いますけど……」}
「……今、何て言った?」
{「ごっ、ごめんなさい!わたし、そういうつもりで言ったんじゃ……!ごめんなさい!ごめんなさい!」}
「いや、そういうことじゃない。俺がMEIKOに送ろうとしたのは、白いヤツだぞ?」
{「え?じゃあ、これはルカに送ろうとしたものですか?」}
「ちょっと待て……」
敷島は軽い頭痛を覚えた。
「えーと……。ゴメン、後でまた連絡するわ」
敷島は電話を切った。
「こりゃ、アリスに送ったものも間違えてるっぽいぞ?」
「イエス……」
敷島はアリスに電話を掛けた。
{「何よ?ヒトがシャワー浴びてた時に……」}
「改築中の研究所に行って、何のんきにシャワー使ってんだ、オマエは?」
{「うっさいね。水回りのチェックしてただけだよ」}
電話越しに不機嫌さが伝わって来る。
「……もしかしてさ、変な下着送ったこと、怒ってるってヤツ?」
{「そんなんじゃないよ。水道は開通してるけど、ガスが開通してなくて、水浴びしちゃったのよ」}
「3月半ばに何やってんだ、オマエ。南里研究所は場所柄、都市ガスが引けなくてプロパンガスだぞ?」
{「それ、早く言って!で、何の用?」}
「俺がお前に送った下着なんだが、間違えてた感無かったか?」
{「そんなことないよ。とてもキュートで気に入ったわ。早速今、着てるところよ。……画像送る?」}
「そうだ。送ってくれ」
{「このヘンタイ!アブノーマル!」ブツッ!}
「な……なに怒ってんだ、コイツ?」
敷島が整理をしていると、今度はリンから電話が掛かって来た。
「何だ、リン?ちょっと今忙しいんだ。また後にしてくれ。お前には下着を送ったわけじゃないから……あ!?」
{「兄ちゃんなんか大ッ嫌い!!」ブツッ!}
「な、何なんだ?何なんだよ?」
敷島が困惑していると、また着信があった。今度はレンからだった。
{「あっ、プロデューサー。おはようございます」}
「おう、レン。どうした?」
{「さっきはリンが失礼しました。後で、ボクから言っておきますから」}
「何か俺、間違えた?」
{「まあ、実はそうなんです」}
「PS4。プレイステーション4だよな?“ペルソナ4”じゃなくて」
{「そうですよ。でも箱を開けてみたら、中身はPSXでしたよ?」}
「……違うっけ?」
{「全然違います!」}
「わ、分かった。また改めて送るから。リンには後で謝っておくよ」
敷島は電話を切った。
「つまり、MEIKOに送ったのがミクに送るはずだったもので、ミクにはルカに送るつもりのヤツだったか。で、ルカの所に行ったのは、アリスにあげるもので、アリスにはMEIKOに送るものだったと」
敷島はトントンとボールペンで机を叩いた。
「全然バラバラじゃん!最悪だな!」
因みに全部、ネット購入だったという。
と、そこへまた電話が掛かって来る。
「今度は何だ?」
「キール・です」
エミリーは艶やかな表情になった。
「はい、もしもし?」
{「あっ、敷島参事。お忙しいところ、申し訳ありません」}
「ホントだよ。何だ?男のお前には、ホワイトデー送ってないぞ?」
{「何を仰っているのかは分かりませんが、先週、十条博士に送られたプレゼントのことでお話があります」}
「ああ。十条理事の誕生日に、熱海一泊旅行のチケット送ったヤツだろ?金沢から熱海までちょっと遠いけど、高級旅館にタダで泊まれるんだから……」
{「参事は静岡県の熱海温泉のつもりで送られたと伺いました」}
「そうだよ」
{「あのチケット、熱海は熱海でも、磐梯熱海温泉の宿泊券でしたよ?」}
「は?」
{「熱海温泉まで行ってみて、そこで発覚した次第です。十条博士は物凄くお怒りで……」「こりゃっ!敷島君!よくもこのワシをハメおったな!?さすが、南里を憤死させた男よの!後でクレーム出しに行くから、首根っこ洗って……うっ……!」}
「あれ?十条理事、どうしました?」
またキールに変わる。
{「すいません。博士、急に血圧が上がって……。失礼します」}
電話が切れた。
「俺……今後、プレゼント送るのはやめた方がいいのかな?」
「イエス……あ、いえ、ノー……イエス……いえ、ノー……」
エミリーも答えに窮してしまったという。
結局、プレゼントを喜んだのはアリスだけだったとのことである。
因みにエミリーには何も送らなかったのは、エミリーは下着ではなく、特殊加工金属でできたビキニ・アーマーを着用しているからである。
「参事、今日はホワイトデーですが……」
総務部の執務室内で、課員に話し掛けられた敷島。
「ああ。いつものパターンだと、リンが真っ先に来るな」
「兄ちゃーん!」
「ほら、来た」
鏡音リンが入ってきた。
後ろからはエミリーが走って来る。
「鏡音リン。入館手続き・せよ」
「うあぁあぁあ!」
エミリーに首根っこを掴まれ、ズルズルと引きずられていった。
「参事?」
「なに、毎年のことだ」
敷島はズズズと茶を啜った。
「プロデューサー、すいません。毎年のことで」
“双子の弟”の鏡音レンが申し訳なさそうに言った。
「本当は“弟”のボクから渡した方がいいんでしょうが……」
「いいんだよ、お前は」
「でも……」
「イベントでファンに渡すホワイトデーの方がよっぽど価値があるよ」
「あ、はい。この後、そういうイベントがあって……」
「精が出るな」
「いえ。応援してくれるのは嬉しいですから」
「KAITOなんか、朝から駆り出されてるらしいな?」
「ええ。それにしても、リンには来年はちゃんと、もっと静かに入って来るようにさせますから」
「そのうち、エミリーの手をすり抜けるようになるかな?」
「さすがにエミリーはムリですねぇ……」
「はははっ!」
「マリオとルイージなら倒しましたけど」
「なにいっ!?」
[同日11:00.同場所研究室 敷島孝夫&鏡音レン]
「通りで、リン遅かったんだな?」
敷島とレンはドアの隙間から研究室を覗いた。
「あ、あの……リン、そろそろイベントの仕事が……」
「シャラップ!どうやって、マリオとルイージを倒したのか、そのデータを取ってからよ!」
リンは、ほぼ拘束されている状態だった。
アリスがリンのメモリーを解析して、マリオとルイージを倒した経緯について分析している。
「フム。ここの瞬間、一気に数値が上がってるわね。どういう現象で、そんなことが……」
「エミリー!助けてーっ!」
「天罰・だ」
エミリーは拘束具から逃れようとしているリンを押さえ付ける役をやっていた。
[同日12:00.同場所総務部 敷島孝夫&MEIKO]
「リンがマリオとルイージを倒したですって?」
「そうなんだよ」
「……プロデューサー、4月1日まであと何週間あると思って?」
「嘘じゃないから!作者のエイプリルフールネタじゃないから!」
「で、アリス博士に捕まってると」
「まあ、そうだな。あっ、それでお前へのホワイトデーだが……」
「❤」
「ブラ・ショーツのセットでいいな?」
「このヘンタイ!……まあ、いいけど。……もしかして、ミク達も?」
「バレた?」
「アンタもワンパターンだね!」
「リンだけ違うよ。リンはゲーム機欲しいって言ってたからさ」
「ああ、だっけ?」
と、そこへ……。
「うへ……。やっと終わったYo〜!」
フラフラになって戻って来たリンだった。
「全く。とんだ弱点だったわ」
その後からアリスもやってくる。
「おおかた、リンの『歌』で怯んだ隙に、レンがブースターで体当たりしたってところかい?」
敷島が言うと、
「アンタ、知ってたら教えなさいよ!」
「お前、俺と敵対してた時にそのネタ、使ってただろ?まあ、あの時ブッ壊したのはバージョン4.0の方だけど……」
「そんなのいちいち覚えてないよ!」
「じゃあ、リン。お前にホワイトデーのプレゼントだ。PS4な」
「おおっ!さすが兄ちゃん、太っ腹〜!」
リンは大歓喜で、ゲーム機の入った箱を受け取った。
「一体、何なの?」
アリスが訝し気な顔をした。
「アリス、お前にもやるよ。ブラ・ショーツのセット」
「アリス博士にも用意してたの!?」
MEIKOは目を丸くした。
「あ、アリガトウ……」
その後、初音ミクや巡音ルカも事務所を訪れ、敷島は彼女達にもプレゼントを贈った。
……ここまでは良かった。
[3月15日 09:00 宮城県仙台市内 敷島のマンション 敷島孝夫]
事務職である敷島は基本、土日・祝祭日は休み。
ゆっくり寝ていようとしたのだが、枕元のケータイが鳴り響き、それで起こされた。
「うーん……。何だ、何だ?」
敷島は寝ぼけまなこで電話を取った。
発信元はMEIKOになっている。
「はい、もしもし?」
{「ちょっと、プロデューサー!昨日もらった下着なんだけど!」}
「気に入ってくれなかったかい?」
{「ていうかさ、何か間違えてない!?」}
「は?何が?」
{「緑のストライプ柄だったんだけど、これって本当に私用?」}
「あれ……?」
{「ミク用だよね?明らかに」}
「そ、そうだな……。あれー……?ちょっと……ゴメン。すぐに確認するわ。……うん。ちょっと待ってて」
敷島は電話を切った。
「……あっ、そうだ。アリス!アリス!」
すると、アリスの部屋から、エミリーが出て来た。
「敷島・さん。ドクター・アリスは・研究所に・行かれました」
「何だよ、こんな時に……。いや、アリスにも俺が渡したプレゼント間違えてなかったかなって……」
「その・下着を・着用されて・ましたが?」
「何か言ってた?」
「ノー。何も・仰って・おりません」
「ということは、アリスに送ったのは間違い無いんだな。MEIKOとミクのが入れ替わったのか。よし」
敷島は初音ミクに電話した。
{「おはようございます!たかおさん!」}
「おう、おはよう。悪いな、朝から」
{「いいえ。何のご用ですか?」}
「昨日、お前に送ったプレゼントなんだが……」
{「あ、はい。マネージャーさんからは、サイズも違うし、あまり似合わないって言われちゃって……」}
「だよな。ゴメン。実はそれ、MEIKOに送ろうと思ってたヤツでさ。手違いで、入れ替わっちゃったみたいだ」
{「そうなんですか。MEIKOさんなら、大人の女性として似合ってますものね」}
「ああ。だから、後で取りに行くから、悪いけど保管しててくれる?」
{「分かりました。でも、黒系の下着なら、MEIKOさんより、むしろルカの方が似合ってると思いますけど……」}
「……今、何て言った?」
{「ごっ、ごめんなさい!わたし、そういうつもりで言ったんじゃ……!ごめんなさい!ごめんなさい!」}
「いや、そういうことじゃない。俺がMEIKOに送ろうとしたのは、白いヤツだぞ?」
{「え?じゃあ、これはルカに送ろうとしたものですか?」}
「ちょっと待て……」
敷島は軽い頭痛を覚えた。
「えーと……。ゴメン、後でまた連絡するわ」
敷島は電話を切った。
「こりゃ、アリスに送ったものも間違えてるっぽいぞ?」
「イエス……」
敷島はアリスに電話を掛けた。
{「何よ?ヒトがシャワー浴びてた時に……」}
「改築中の研究所に行って、何のんきにシャワー使ってんだ、オマエは?」
{「うっさいね。水回りのチェックしてただけだよ」}
電話越しに不機嫌さが伝わって来る。
「……もしかしてさ、変な下着送ったこと、怒ってるってヤツ?」
{「そんなんじゃないよ。水道は開通してるけど、ガスが開通してなくて、水浴びしちゃったのよ」}
「3月半ばに何やってんだ、オマエ。南里研究所は場所柄、都市ガスが引けなくてプロパンガスだぞ?」
{「それ、早く言って!で、何の用?」}
「俺がお前に送った下着なんだが、間違えてた感無かったか?」
{「そんなことないよ。とてもキュートで気に入ったわ。早速今、着てるところよ。……画像送る?」}
「そうだ。送ってくれ」
{「このヘンタイ!アブノーマル!」ブツッ!}
「な……なに怒ってんだ、コイツ?」
敷島が整理をしていると、今度はリンから電話が掛かって来た。
「何だ、リン?ちょっと今忙しいんだ。また後にしてくれ。お前には下着を送ったわけじゃないから……あ!?」
{「兄ちゃんなんか大ッ嫌い!!」ブツッ!}
「な、何なんだ?何なんだよ?」
敷島が困惑していると、また着信があった。今度はレンからだった。
{「あっ、プロデューサー。おはようございます」}
「おう、レン。どうした?」
{「さっきはリンが失礼しました。後で、ボクから言っておきますから」}
「何か俺、間違えた?」
{「まあ、実はそうなんです」}
「PS4。プレイステーション4だよな?“ペルソナ4”じゃなくて」
{「そうですよ。でも箱を開けてみたら、中身はPSXでしたよ?」}
「……違うっけ?」
{「全然違います!」}
「わ、分かった。また改めて送るから。リンには後で謝っておくよ」
敷島は電話を切った。
「つまり、MEIKOに送ったのがミクに送るはずだったもので、ミクにはルカに送るつもりのヤツだったか。で、ルカの所に行ったのは、アリスにあげるもので、アリスにはMEIKOに送るものだったと」
敷島はトントンとボールペンで机を叩いた。
「全然バラバラじゃん!最悪だな!」
因みに全部、ネット購入だったという。
と、そこへまた電話が掛かって来る。
「今度は何だ?」
「キール・です」
エミリーは艶やかな表情になった。
「はい、もしもし?」
{「あっ、敷島参事。お忙しいところ、申し訳ありません」}
「ホントだよ。何だ?男のお前には、ホワイトデー送ってないぞ?」
{「何を仰っているのかは分かりませんが、先週、十条博士に送られたプレゼントのことでお話があります」}
「ああ。十条理事の誕生日に、熱海一泊旅行のチケット送ったヤツだろ?金沢から熱海までちょっと遠いけど、高級旅館にタダで泊まれるんだから……」
{「参事は静岡県の熱海温泉のつもりで送られたと伺いました」}
「そうだよ」
{「あのチケット、熱海は熱海でも、磐梯熱海温泉の宿泊券でしたよ?」}
「は?」
{「熱海温泉まで行ってみて、そこで発覚した次第です。十条博士は物凄くお怒りで……」「こりゃっ!敷島君!よくもこのワシをハメおったな!?さすが、南里を憤死させた男よの!後でクレーム出しに行くから、首根っこ洗って……うっ……!」}
「あれ?十条理事、どうしました?」
またキールに変わる。
{「すいません。博士、急に血圧が上がって……。失礼します」}
電話が切れた。
「俺……今後、プレゼント送るのはやめた方がいいのかな?」
「イエス……あ、いえ、ノー……イエス……いえ、ノー……」
エミリーも答えに窮してしまったという。
結局、プレゼントを喜んだのはアリスだけだったとのことである。
因みにエミリーには何も送らなかったのは、エミリーは下着ではなく、特殊加工金属でできたビキニ・アーマーを着用しているからである。