[3月7日21:00.長野県内の森の中にあるマリアの屋敷 マリアンナ・ベルゼ・スカーレット]
悠久の時を生きる魔道師。世界の歴史を陰に陽に操ることさえ厭わない、人とも妖とも違う存在。
世界を股に掛けて当然の魔道師だが、1人は日本国内に潜伏している。
その理由は不明だが、それはつい5年前に魔道師になったばかりの新人。
金色の髪を肩まで伸ばし、昼は魔道書を読み漁って日々魔術の鍛練。夜は『人形使い』の名に相応しく、人形作り。
つい昨年まではフランス人形を作るだけだったが、今では日本人の少女をモデルにし、デフォルメ化したものを作っている。
昨日も街まで出かけた時、アイドルもかくやと思う女子中学生くらいの美少女を見たので、それをモデルにしている。
モデルにされた方はその後どうなるか、【お察しください】。
「ん?誰か来たの?」
部屋の中には既に作り上げた人形達が寛いでいる。
多くはカーペットに座り込んだり、ソファに寝転がったりしているのだが、それが一斉に立ち上がった。
「こんな時間に、また哀れな遭難者かしら?」
稲生ユウタが訪問してくるまでは遭難者は救助していたのだが、昨年までは魔術の実験材料にしていた。
しかしそれも一段落したので、そろそろ救助の方に戻そうか……。
そう思いながらローブを羽織り、右手にはマジック・ロッド(魔法の杖)を持ってエントランスに向かった。
無論、付近には小さな体に不釣合いの大きなサーベルやスピアを持ったフランス人形が数体護衛に付いている。
「って……!」
「こんばんは!」
エントランスにいたのはマリアとは色違いの紫色のローブを羽織り、フードを被った師匠のイリーナ・レヴィア・ブリジッドだった。
「師匠!どうしたんですか、こんな時間に……」
「いやぁ、ウクライナ行こうと思ったんだけど、先越されちゃってさぁ……」
「あの内戦、師匠が仕掛けたんじゃ?」
「違う違う。いやー、アタシもそろそろヤキが回って来たかねぇ……。だからあなたは、もっともっと勉強して、早くアタシを楽隠居させてよね?」
(それ、もう100回以上は言ってますよ?)
しかし、マリアはその言葉を飲み込んだ。
「とにかく終バス逃しちゃったから、今夜泊めて」
「終バス!?……ま、まあ、どうぞ。夕食は?」
「あ、まだ」
「じゃあ、用意させますね」
「ゴメンねー」
「ほら、あなた達、師匠の荷物持ってあげて」
マリアは周囲の人形達に命令した。てきぱきと命令に従う人形達。
「フム。ちゃんと人形達の使役はできているみたいね」
「当たり前です。私も指導通りに鍛練していますから」
「偉い偉い。さすがは私の見込んだ弟子」
イリーナは笑顔を崩さずに言ったが、次の瞬間、若干その笑顔が崩れた。
「さっきの……よく、慣用句で『バスに乗り遅れる』って言うでしょ。そういう意味」
「えっ?」
「『ウクライナ行きのバスに乗り遅れた』のよ」
「師匠……!?」
「あいつ……!」
[同日23:00. 屋敷内リビングルーム マリア&イリーナ]
「ふう……。やっとサッパリした」
風呂上りのマリア。金色の髪をタオルで拭きながらやってくる。
リビングにある大型テレビの画面に食い付いているイリーナ。
「師匠、ズルいですよ。自分だけさっさと入ってテレビ見て……」
「うるさい。師匠の特権よ」
「……あ、テレビじゃなくて、DVDですか」
「そう。街中で借りて来た」
「ウクライナ行くついでに?」
「戻って来たついでに決まってるじゃない。……で、2泊3日で借りて来たもんだから、明日までに全部観ないと……」
「はー……」
ちょうど今、洋画が終わったらしく、エンドロールが流れていた。
「しかし、悠久の時を生きる魔道師が映画なんて……」
「なに?魔道師が映画観ちゃダメだなんて、アタシは教えてないよ?」
「いや、教わってませんけど、何か違和感あるな……」
「世界を股に掛けるんだから、流行とかも熟知しておかないとね」
「映画の流行を追う必要ってあるんですか」
次にイリーナがプレイヤーに入れたのは……。
「『血塗られた学園』!?」
「そう。タイトル通り、ホラーね。えーと……イジメを苦に自殺した女子中学生が、悪霊となってクラスメートを1人ずつ呪い殺していく内容だね」
「そりゃまたベタな学園ホラーですね。実際は霊界的にアウトのはずですが……」
「今の閻魔大王が亡者の幽霊化厳禁だもんねー。アタシが悪魔の囁きをして解禁してやろうかしら」
「だから、そんな無意味なこと……」
「あら?マリア的にはむしろ大歓迎じゃない?」
「え?」
「あなただって、生前はひどいイジメを……」
「師匠!いい加減にしてください!」
「ゴメンゴメン。言い過ぎた。ま、アタシはこれ観てから寝るから、先寝てていいよ」
「……私の隣の部屋、用意しておきましたから」
「うんうん。おやすみー」
マリアは自分の寝室に引っこんで行った。
「おっ……!意外と怖い。最近のホラーも、だいぶリアリズムになってきたねぇ……。まあ、これでも4桁生きるこのアタシの肝を冷やすなんてことは……」
[3月8日02:00.マリアの寝室 マリア]
マリアは軽い寝息を立てて眠っていた。ベッドで添い寝するのは、緑色の髪をツインテールにした人形。
元々はミカエラと名付けていたが、この屋敷に迷い込んできた稲生ユウタが初音ミクと呼ぶので、いつの間にかその名前が定着してしまった。
人形自身もその名前が気に入ってるらしい。
と、その時だった!
「でやあーっ!!」
バーンッ!!(←ドアを思いっきり開けた音)
「わあっ!?……び、びっくりした……!な、な、何ですか!?」
部屋に入ってきたのはイリーナ。左脇には枕を抱えている。
「夜間抜き打ち修行始めるよ!」
「はあ!?私、もう免許皆伝受けてるはずですが……」
「なに言ってるの!免許皆伝後も引き続き鍛練は必要と言ったはずよ!」
「そ、それはそうですけど……」
「それと、アタシの修行は厳しいって最初に言ったでしょ!?」
「いや、それは聞いてません」
「とにかくっ!修行を始めるから!」
「えーっ!」
イリーナはマリアのベッドに潜り込んだ。
「でも内容は簡単!アタシの添い寝をして、師匠の安全確保に努めること!以上!」
「はい?そんな修行無いですよ。この部屋がいいって仰るのでしたら譲りますから、私が師匠の部屋で寝ます」
しかし、イリーナは掛け布団の中から弟子の左手を掴んだ。
「それじゃ修行にならないでしょ?」
「あの、師匠……さっきまで、ホラー映画観てましたよね?もしかして、それで怖くなったとか?」
「先生に向かって何てこと言うの!いくら1人前になったからってね、言っていいことと悪いことが……」
「あっ、師匠の後ろに何か白い影が!」
「きゃーっ!いやーっ!!」
「……あ、すいません。ただのレースのカーテンでした」
「マリア!」
「そうですか。分かりました。お化けさん映画観て怖くなったんですね。そういうことでしたら、ご安心ください。不肖、弟子のこの私が師匠の安全を全力で確保致します」
「何か……弟子のくせに上から目線っぽくない?……まあ、いいわ。立ってるついでに非常灯点けといて」
「非常灯?」
「非常口誘導灯!ちゃんと点けとかないと、消防法違反だよ?」
「消防法!?いやいや、この屋敷は……って、いつの間に!?」
いつの間にか、部屋の入口のドアの上には緑色の非常口誘導灯が煌々と輝いていた。
「うえ……意外と眩しい。私、暗くしないと眠れないんですけど……」
「うるさい。早く寝なさい」
「んもう……。確か、ゴミ箱の隣の宝箱にアイマスクが入ってたな……。あっ、そうだ。師匠、もし怖かったら、カンテラ用意しましょうか?」
「怖くないってば。……でも持ってきて」
「それでも怖ければ、この前修理依頼されていた、テディベアのテッドもありますけど、どうします?」
「だから怖くないって言ってるでしょ!……でも持ってきて」
「少々お待ちください。……はい、お待たせしました」
マリアはスクリームのマスクを被り、下からランタンで照らした。
「うきゃーっ!何、それ!いやーっ!!」
「ただのアイマスクですって」
「何がだ!絶対、ネタでしょ!」
「まあまあ。修理依頼されていたテッドですが、すいません、まだ修理完了していなくて、こんな状態に……」
デローンと片目が飛び出て、首からは綿が飛び出ている状態だった。
「テッドがーっ!てか、何で師匠の依頼を優先させないの!」
「まあまあ。とにかく、これで我慢してください」
「ベッドに押し込むな!マスク外せ!ライト消せーっ!」
そして……。
「日本のホラー怖い……日本の幽霊怖い……日本の呪い怖い……」
「まあ、『血塗られた学園』シリーズは妖狐達も尻尾を巻いたという話ですし」
「それ、早く言って……」
「まあ、寝ましょう」
マリアも枕に頭をつけた。
「……そういえば師匠。私達って、永遠を生きる存在ですよね?仮にあの映画の内容が実際にあるとなると、魔道師としてはどんな影響があるんですか?」
「クカー……クー……」
「師匠、寝付き早っ!?……寝よ」
マリアは目を閉じたが、
「あーっ、もうっ!気になって眠れない!師匠、起きてくださーい!」
[同日10:00.埼玉県さいたま市中央区 ユタの家 稲生ユウタ]
{「……というわけで、申し訳ない……。訪問は来週にして欲しい……」}
「は、はあ……」
本当は今日、ユタの家を訪問するはずだったマリアだった。
しかし、電話で延期を申し入れていた。
「残念ですけど、お大事に」
ユタは首を傾げながら電話を切った。
「ホラー映画って……何か、魔術の実験でもしていたのだろうか???」
終
悠久の時を生きる魔道師。世界の歴史を陰に陽に操ることさえ厭わない、人とも妖とも違う存在。
世界を股に掛けて当然の魔道師だが、1人は日本国内に潜伏している。
その理由は不明だが、それはつい5年前に魔道師になったばかりの新人。
金色の髪を肩まで伸ばし、昼は魔道書を読み漁って日々魔術の鍛練。夜は『人形使い』の名に相応しく、人形作り。
つい昨年まではフランス人形を作るだけだったが、今では日本人の少女をモデルにし、デフォルメ化したものを作っている。
昨日も街まで出かけた時、アイドルもかくやと思う女子中学生くらいの美少女を見たので、それをモデルにしている。
モデルにされた方はその後どうなるか、【お察しください】。
「ん?誰か来たの?」
部屋の中には既に作り上げた人形達が寛いでいる。
多くはカーペットに座り込んだり、ソファに寝転がったりしているのだが、それが一斉に立ち上がった。
「こんな時間に、また哀れな遭難者かしら?」
稲生ユウタが訪問してくるまでは遭難者は救助していたのだが、昨年までは魔術の実験材料にしていた。
しかしそれも一段落したので、そろそろ救助の方に戻そうか……。
そう思いながらローブを羽織り、右手にはマジック・ロッド(魔法の杖)を持ってエントランスに向かった。
無論、付近には小さな体に不釣合いの大きなサーベルやスピアを持ったフランス人形が数体護衛に付いている。
「って……!」
「こんばんは!」
エントランスにいたのはマリアとは色違いの紫色のローブを羽織り、フードを被った師匠のイリーナ・レヴィア・ブリジッドだった。
「師匠!どうしたんですか、こんな時間に……」
「いやぁ、ウクライナ行こうと思ったんだけど、先越されちゃってさぁ……」
「あの内戦、師匠が仕掛けたんじゃ?」
「違う違う。いやー、アタシもそろそろヤキが回って来たかねぇ……。だからあなたは、もっともっと勉強して、早くアタシを楽隠居させてよね?」
(それ、もう100回以上は言ってますよ?)
しかし、マリアはその言葉を飲み込んだ。
「とにかく終バス逃しちゃったから、今夜泊めて」
「終バス!?……ま、まあ、どうぞ。夕食は?」
「あ、まだ」
「じゃあ、用意させますね」
「ゴメンねー」
「ほら、あなた達、師匠の荷物持ってあげて」
マリアは周囲の人形達に命令した。てきぱきと命令に従う人形達。
「フム。ちゃんと人形達の使役はできているみたいね」
「当たり前です。私も指導通りに鍛練していますから」
「偉い偉い。さすがは私の見込んだ弟子」
イリーナは笑顔を崩さずに言ったが、次の瞬間、若干その笑顔が崩れた。
「さっきの……よく、慣用句で『バスに乗り遅れる』って言うでしょ。そういう意味」
「えっ?」
「『ウクライナ行きのバスに乗り遅れた』のよ」
「師匠……!?」
「あいつ……!」
[同日23:00. 屋敷内リビングルーム マリア&イリーナ]
「ふう……。やっとサッパリした」
風呂上りのマリア。金色の髪をタオルで拭きながらやってくる。
リビングにある大型テレビの画面に食い付いているイリーナ。
「師匠、ズルいですよ。自分だけさっさと入ってテレビ見て……」
「うるさい。師匠の特権よ」
「……あ、テレビじゃなくて、DVDですか」
「そう。街中で借りて来た」
「ウクライナ行くついでに?」
「戻って来たついでに決まってるじゃない。……で、2泊3日で借りて来たもんだから、明日までに全部観ないと……」
「はー……」
ちょうど今、洋画が終わったらしく、エンドロールが流れていた。
「しかし、悠久の時を生きる魔道師が映画なんて……」
「なに?魔道師が映画観ちゃダメだなんて、アタシは教えてないよ?」
「いや、教わってませんけど、何か違和感あるな……」
「世界を股に掛けるんだから、流行とかも熟知しておかないとね」
「映画の流行を追う必要ってあるんですか」
次にイリーナがプレイヤーに入れたのは……。
「『血塗られた学園』!?」
「そう。タイトル通り、ホラーね。えーと……イジメを苦に自殺した女子中学生が、悪霊となってクラスメートを1人ずつ呪い殺していく内容だね」
「そりゃまたベタな学園ホラーですね。実際は霊界的にアウトのはずですが……」
「今の閻魔大王が亡者の幽霊化厳禁だもんねー。アタシが悪魔の囁きをして解禁してやろうかしら」
「だから、そんな無意味なこと……」
「あら?マリア的にはむしろ大歓迎じゃない?」
「え?」
「あなただって、生前はひどいイジメを……」
「師匠!いい加減にしてください!」
「ゴメンゴメン。言い過ぎた。ま、アタシはこれ観てから寝るから、先寝てていいよ」
「……私の隣の部屋、用意しておきましたから」
「うんうん。おやすみー」
マリアは自分の寝室に引っこんで行った。
「おっ……!意外と怖い。最近のホラーも、だいぶリアリズムになってきたねぇ……。まあ、これでも4桁生きるこのアタシの肝を冷やすなんてことは……」
[3月8日02:00.マリアの寝室 マリア]
マリアは軽い寝息を立てて眠っていた。ベッドで添い寝するのは、緑色の髪をツインテールにした人形。
元々はミカエラと名付けていたが、この屋敷に迷い込んできた稲生ユウタが初音ミクと呼ぶので、いつの間にかその名前が定着してしまった。
人形自身もその名前が気に入ってるらしい。
と、その時だった!
「でやあーっ!!」
バーンッ!!(←ドアを思いっきり開けた音)
「わあっ!?……び、びっくりした……!な、な、何ですか!?」
部屋に入ってきたのはイリーナ。左脇には枕を抱えている。
「夜間抜き打ち修行始めるよ!」
「はあ!?私、もう免許皆伝受けてるはずですが……」
「なに言ってるの!免許皆伝後も引き続き鍛練は必要と言ったはずよ!」
「そ、それはそうですけど……」
「それと、アタシの修行は厳しいって最初に言ったでしょ!?」
「いや、それは聞いてません」
「とにかくっ!修行を始めるから!」
「えーっ!」
イリーナはマリアのベッドに潜り込んだ。
「でも内容は簡単!アタシの添い寝をして、師匠の安全確保に努めること!以上!」
「はい?そんな修行無いですよ。この部屋がいいって仰るのでしたら譲りますから、私が師匠の部屋で寝ます」
しかし、イリーナは掛け布団の中から弟子の左手を掴んだ。
「それじゃ修行にならないでしょ?」
「あの、師匠……さっきまで、ホラー映画観てましたよね?もしかして、それで怖くなったとか?」
「先生に向かって何てこと言うの!いくら1人前になったからってね、言っていいことと悪いことが……」
「あっ、師匠の後ろに何か白い影が!」
「きゃーっ!いやーっ!!」
「……あ、すいません。ただのレースのカーテンでした」
「マリア!」
「そうですか。分かりました。お化けさん映画観て怖くなったんですね。そういうことでしたら、ご安心ください。不肖、弟子のこの私が師匠の安全を全力で確保致します」
「何か……弟子のくせに上から目線っぽくない?……まあ、いいわ。立ってるついでに非常灯点けといて」
「非常灯?」
「非常口誘導灯!ちゃんと点けとかないと、消防法違反だよ?」
「消防法!?いやいや、この屋敷は……って、いつの間に!?」
いつの間にか、部屋の入口のドアの上には緑色の非常口誘導灯が煌々と輝いていた。
「うえ……意外と眩しい。私、暗くしないと眠れないんですけど……」
「うるさい。早く寝なさい」
「んもう……。確か、ゴミ箱の隣の宝箱にアイマスクが入ってたな……。あっ、そうだ。師匠、もし怖かったら、カンテラ用意しましょうか?」
「怖くないってば。……でも持ってきて」
「それでも怖ければ、この前修理依頼されていた、テディベアのテッドもありますけど、どうします?」
「だから怖くないって言ってるでしょ!……でも持ってきて」
「少々お待ちください。……はい、お待たせしました」
マリアはスクリームのマスクを被り、下からランタンで照らした。
「うきゃーっ!何、それ!いやーっ!!」
「ただのアイマスクですって」
「何がだ!絶対、ネタでしょ!」
「まあまあ。修理依頼されていたテッドですが、すいません、まだ修理完了していなくて、こんな状態に……」
デローンと片目が飛び出て、首からは綿が飛び出ている状態だった。
「テッドがーっ!てか、何で師匠の依頼を優先させないの!」
「まあまあ。とにかく、これで我慢してください」
「ベッドに押し込むな!マスク外せ!ライト消せーっ!」
そして……。
「日本のホラー怖い……日本の幽霊怖い……日本の呪い怖い……」
「まあ、『血塗られた学園』シリーズは妖狐達も尻尾を巻いたという話ですし」
「それ、早く言って……」
「まあ、寝ましょう」
マリアも枕に頭をつけた。
「……そういえば師匠。私達って、永遠を生きる存在ですよね?仮にあの映画の内容が実際にあるとなると、魔道師としてはどんな影響があるんですか?」
「クカー……クー……」
「師匠、寝付き早っ!?……寝よ」
マリアは目を閉じたが、
「あーっ、もうっ!気になって眠れない!師匠、起きてくださーい!」
[同日10:00.埼玉県さいたま市中央区 ユタの家 稲生ユウタ]
{「……というわけで、申し訳ない……。訪問は来週にして欲しい……」}
「は、はあ……」
本当は今日、ユタの家を訪問するはずだったマリアだった。
しかし、電話で延期を申し入れていた。
「残念ですけど、お大事に」
ユタは首を傾げながら電話を切った。
「ホラー映画って……何か、魔術の実験でもしていたのだろうか???」
終