3月下旬の午後。ようやく仙台市北部も降るのは雪から雨に変わりつつある頃……。
〔「終点、のぞみヶ丘北です。ご乗車ありがとうございました」〕
1台の路線バスがニュータウンの北外れにある折返し場に到着する。
そこから降りて来たのは敷島とエミリーだった。
「何だか、雨が降ってるねぇ……」
「どうぞ。敷島さん」
「これだけは変わらないな」
エミリーが出した傘に、敷島は思わず苦笑い。
何故ならエミリーは、スリットの深いロングスカートの裾を持ち上げて、脛部分から傘を出したからだ。
「お前と初めて会った時も、こんな感じだったっけ?」
「イエス。……もう少し・強い雨・でした」
「そうだったな」
バスの折返し場は5年前までは砂利道になっていたのが、今はすっかり舗装がされている。
小さな公園が整備されたことと、移設された公民館が隣接された所も変わった。
「アリスの新しい研究所の改築工事は、そろそろ終わる頃か」
「イエス。あとは・引っ越しを・するだけです」
「引っ越しっつっても、今マンションにある荷物と、財団に保管してあるマリオとルイージくらいしかいないだろ?」
バス折返し場裏手にある階段は、研究所の前まで直通だ。
敷島が初めてここに来た時、エミリーが片手で大きなキャリーバッグを抱えて驚いたものだ。
階段を登って、やっと研究所の前に着く。
「見た目の外観は変わらんな。まあ、そんなに工事費用掛けられるわけでもないしな」
所内に置かれていた研究機材もそのまま、修理して使うもよう。
「おーい、アリスー」
敷島は玄関から奥にいるアリスに呼び掛けた。
「Hi.」
奥から工事用のヘルメットを被ったアリスが出て来た。
「陣中見舞いに来たぞー。どうだ?新しい研究所は?」
「さすがはドクター南里ね。このまま使えそうよ」
「まあ、平賀先生がほとんど手つかずにしていたからな。交通の便はちょいと悪いけど、この近くにコンビニもあるし、商店街もあるから、一通りの物は揃うんじゃない?」
「シキシマ、何で来たの?」
「何って、バスだけど?」
「泉中央駅で30分待つって何、そういうこと?」
「お前が勝手に財団の車使ったから、俺らが車で行けなかったからだよ!」
敷島は研究所の前に止まっている1台のライトバンを指さして言った。
「Oh...」
「いつ、どこで国際免許取ったんだ?」
「昨日、駅前のドンキで」
「アホか!!」
そもそも泉中央駅前にドンキホーテはありません。
帰りは敷島が運転する。
「昼飯食って帰るぞ」
「やった!シキシマの奢り!」
「エミリーは充電でもして待っててくれ」
「イエス」
「車から?」
「電気自動車からアンドロイドに電気を融通するという発想、なかなか無いだろ?」
「いずれは、あそこから充電できるといいね」
アリスは頭上を走る仙台市地下鉄南北線の高架を指さして言った。
「まずは、直流1500ボルトを下げる装置が必要になるな。そのまんま流したら、爆発するだろ」
アリス・フォレスト研究所オープンまで、あと僅か。
〔「終点、のぞみヶ丘北です。ご乗車ありがとうございました」〕
1台の路線バスがニュータウンの北外れにある折返し場に到着する。
そこから降りて来たのは敷島とエミリーだった。
「何だか、雨が降ってるねぇ……」
「どうぞ。敷島さん」
「これだけは変わらないな」
エミリーが出した傘に、敷島は思わず苦笑い。
何故ならエミリーは、スリットの深いロングスカートの裾を持ち上げて、脛部分から傘を出したからだ。
「お前と初めて会った時も、こんな感じだったっけ?」
「イエス。……もう少し・強い雨・でした」
「そうだったな」
バスの折返し場は5年前までは砂利道になっていたのが、今はすっかり舗装がされている。
小さな公園が整備されたことと、移設された公民館が隣接された所も変わった。
「アリスの新しい研究所の改築工事は、そろそろ終わる頃か」
「イエス。あとは・引っ越しを・するだけです」
「引っ越しっつっても、今マンションにある荷物と、財団に保管してあるマリオとルイージくらいしかいないだろ?」
バス折返し場裏手にある階段は、研究所の前まで直通だ。
敷島が初めてここに来た時、エミリーが片手で大きなキャリーバッグを抱えて驚いたものだ。
階段を登って、やっと研究所の前に着く。
「見た目の外観は変わらんな。まあ、そんなに工事費用掛けられるわけでもないしな」
所内に置かれていた研究機材もそのまま、修理して使うもよう。
「おーい、アリスー」
敷島は玄関から奥にいるアリスに呼び掛けた。
「Hi.」
奥から工事用のヘルメットを被ったアリスが出て来た。
「陣中見舞いに来たぞー。どうだ?新しい研究所は?」
「さすがはドクター南里ね。このまま使えそうよ」
「まあ、平賀先生がほとんど手つかずにしていたからな。交通の便はちょいと悪いけど、この近くにコンビニもあるし、商店街もあるから、一通りの物は揃うんじゃない?」
「シキシマ、何で来たの?」
「何って、バスだけど?」
「泉中央駅で30分待つって何、そういうこと?」
「お前が勝手に財団の車使ったから、俺らが車で行けなかったからだよ!」
敷島は研究所の前に止まっている1台のライトバンを指さして言った。
「Oh...」
「いつ、どこで国際免許取ったんだ?」
「昨日、駅前のドンキで」
「アホか!!」
そもそも泉中央駅前にドンキホーテはありません。
帰りは敷島が運転する。
「昼飯食って帰るぞ」
「やった!シキシマの奢り!」
「エミリーは充電でもして待っててくれ」
「イエス」
「車から?」
「電気自動車からアンドロイドに電気を融通するという発想、なかなか無いだろ?」
「いずれは、あそこから充電できるといいね」
アリスは頭上を走る仙台市地下鉄南北線の高架を指さして言った。
「まずは、直流1500ボルトを下げる装置が必要になるな。そのまんま流したら、爆発するだろ」
アリス・フォレスト研究所オープンまで、あと僅か。