報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 「海底に沈む遺産」 3

2014-03-18 19:33:24 | 日記
[同日08:53.京葉線快速電車内 敷島、アリス、エミリー]

 地下深い東京駅京葉線ホームを出た電車は、しばらくの間、地下を突き進んだ。
 地下にもバージョン・シリーズを配置していたことのあるウィリーの話を聞いた敷島は、まさかここにもと思ったが、アリス曰く、
「知らない」
 とのこと。もっとも、当の本人は孫娘にも十分な情報を伝えないまま(できぬまま)この世を去ってしまったので、アリスのせいでもないだろう。

 敷島の予想通り、一駅前の舞浜で多くの乗客が下車した。彼らの目的地は、言わずもがなだろう。
「舞浜という地名は、フロリダ州のマイアミから取ったんだそうだ」
「フロリダ州にディズニー・ワールドがあるもんね」
「だったら、舞という名前でもいいような気がするんだが……。ガチ過ぎるからか?」
 などと喋っているうちに、次駅の新浦安駅へ。

〔「まもなく新浦安、新浦安です。お出口は変わりまして、左側です。新浦安を出ますと、次は南船橋に止まります。通過する各駅へおいでのお客様、向かい側に停車中の各駅停車、蘇我行きにお乗り換えください」〕

 電車がホームに着いてドアが開くと、敷島は電車を降りがてら平賀に電話を掛けた。
「あ、もしもし。おはようございます。今、新浦安駅に着きました。……あ、そうですか。分かりました。では、今向かいますので。……はい。失礼します」
 電話を切ると、敷島は2人の方を向いた。
「もう平賀先生着いてるって。早いなぁ……」
「東京から・近いですから」
 エミリーは微笑を浮かべた。
「そうだな」

[同日09:00.JR新浦安駅前→平賀のプリウス車中 敷島、平賀太一、アリス、エミリー]

「おはようございます。平賀先生」
「おはようございます」
 一瞬、気まずい空気が流れる。
 アリスと平賀は養祖父と師匠が敵同士だったし、生死の因縁もある。
(※前作オリジナル版では敷島が南里を謀殺したことになっているが、リメイク版ではシンディが刺殺したことになっている)
「お待たせして、すいませんね、先生」
 敷島が取り繕うように割って入った。
「あ、ああ。いや、それほどでもないですよ。じゃ、乗ってください」
「先生は現場を御存知なんですか?」
 敷島は助手席に乗り込みながら聞いた。
「十条先生から聞きました」
 すると後ろの席から舌打ちする音が聞こえた。
「十条の爺さん、余計なことして……!」
 アリスが十条に伝え、そこから平賀に伝わったのだろう。
「まあまあ。調査チームは多い方がいいからさ」
 本来は十条が参加するはずだったところ、諸事情により、平賀が参加することになったのだから。
「七海は来なかったんですね」
「まだ子供達が小さいし、ナツも大変ですからね。こういう時、メイドロボットは役に立ちますね」
「なるほど。平賀先生と赤月先生の子供達です。早くも天才科学者の卵ってところですか?」
「いやいや……。自分もナツも、IQ自体はそんなに高いわけじゃないんですよ。その辺は間違えないようにしませんと」

 
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“アンドロイドマスター” 「海底に沈む遺産」 2

2014-03-18 17:08:43 | 日記
[3月21日 06:00 JR仙台駅新幹線ホーム 敷島、アリス、エミリー]

〔14番線に停車中の電車は、6時6分発、“やまびこ”202号、東京行きです。……〕

「ふわぁ……あふ……。何でこんな朝早くなのよ?」
 アリスは大きな欠伸をして言った。
「ただでさえ学生は春休みで、尚且つ3連休じゃ、新幹線もメチャ混みだろうが。早くから行って並ぶんだよ。日本の新幹線ナメんな、アメリカ人」
「確かに・本日の・自由席の・乗車率は・高めに・予想されて・います」
「ほら、エミリーもそう言ってる」

〔「14番線の“やまびこ”202号、東京行き、まもなくドアが開きます。ドアが開きましたら、前の方に続いてご乗車ください」〕

 ドアが開くと、自由席の乗客はぞろぞろと各車両に乗り込んだ。
「ほらな?あっという間に満席だ」
 敷島は、したり顔でアリスに言った。
「うん、分かったからさ……」
 アリスは金色の髪をかき上げる。
「アタシら、“はやぶさ”に乗るのに、ジユー席で並ぶって必要なの?」
「敷島・さん。“はやぶさ”2号に、自由席は・ありません」
「まずい。こりゃ、発車時間間違えたとは口が裂けても言えねぇ……」
「What’s!?時間間違えただ!?」
「あ、あれ!?言っちゃった!?」
「あと30分は長く寝られたのに!」
「分かった、分かったから!朝飯食ったら、少しは機嫌良くなるんじゃないか?エミリー。駅弁買ってきてくれ」
「イエス」
 エミリーは敷島からSuicaを受け取ると、ホームの駅弁売り場に向かった。
「どうしてJRのSuicaなの?」
 と、アリス。
「いや、何だか良く分からないけど、アンドロイドに買い物に行かせる時はSuicaという習慣なんだ」
「???」
(多分、初出はミクだ。あいつ、俺に何か買ってくる時、Suica貸せって言ってきたもんな……)
 そこでふと気づく。
(そういや、今日はミクも都内で仕事があったか……)

[同日07:00.東北新幹線“はやぶさ”2号、1号車車内 敷島、アリス、エミリー]

 大宮までノンストップの最速列車は南下を続ける。
「デカい駅弁、完食かよ……」
 敷島は呆れた。
 それでいて太らないのだから凄い。
 聞けば研究室で、整備の時に重量のあるロボット達を持ち上げたりしているからということだが、果たしてそんなのが大きな理由なのかは不明だ。
「ああ、そうだ。今回の調査、平賀先生も来るってさ」
「平賀教授が?」
「たまたま都内の大学にいたらしいよ。本当は今日、仙台に帰るつもりだったらしいけど、予定を変更するってさ」
「ふーん……」

[同日08:15.JR東京駅コンコース 敷島、アリス、エミリー]

 京葉線ホームに向かうコンコースは、多くの利用者で賑わっていた。
「皆、TDRに行くんだろうなぁ……。あ、でも、俺達は行かないぞ。下車駅も舞浜じゃなく、新浦安だ」
「分かってるよ」
 とはいえ、どことなく唇を尖らせるアリスだった。

[同日08:30.JR東京駅京葉線ホーム 敷島、アリス、エミリー]

〔「この電車は8時36分発、快速、蘇我行きです。八丁堀、新木場、舞浜、新浦安、南船橋、海浜幕張、検見川浜、稲毛海岸、千葉みなと、終点蘇我の順に止まります。途中の新浦安で、各駅停車の蘇我行きに接続致します。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

「平賀先生は直接、現地に行くようだ。まずは新浦安駅に迎えに来てくれるみたいだから、それで一緒に行こう」
「七海は来るの?」
「七海は今、ヘビーシッター代わりだからな。平賀先生が単独で来てるだけだよ」
「何だ、そうか」
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“アンドロイドマスター” 「海底に沈む遺産」

2014-03-18 10:40:52 | 日記
[3月16日09:00.石川県金沢市 十条伝助の実家 十条伝助&キール・プルー]

「……で、これがワシが開発した最新鋭の感情レイヤーじゃ。これが人間並み喜怒哀楽の感情を持たせ、滑らか且つ豊かな感情表現を……」
 十条は日曜日であるにも関わらず、自宅に訪れた地元の大学生にレクチャーをしていた。
 学生達の目的は、執事ロボットのキールである。
 キールの存在もまた学界では注目度が高いのだ。

「ふう……」
 学生達が帰ってから、十条は少しバラしたキールの部品を元に戻した。
「博士。だいぶ、お疲れです。今日はもうお休みになられた方が……」
 キールが言った。
「いや、なに。レクチャーくらいどうってことないわい。1番疲れたのは、熱海くんだりじゃがな」
「ああ……。何か、エミリーが『キツく・注意します』と言ってきました」
「エミリーが?はて……。エミリーが敷島君に何をするというんじゃ?」
「こんな感じです」
「!」
 キールは両目から画像を出し、白い壁に投影させた。
 そこには、エミリーにチョークスリーパーを食らう敷島の姿があった。
「これはギャグじゃろう?」
「それは分かりませんが……」
「エミリーが無表情だし、背後に鏡音リンとレンが大笑いしながら『おしおき』のプラカードを持っておるし」
「はあ……」
「お前がエミリーをけしかけたな?」
「い、いえ、そのような事実は一切ございません」
「……感情レイヤーには、まだ改良の余地があるな。『咄嗟に嘘をつく』のは要らんじゃろう」
「す、すいません。エミリーに、『博士がお怒りなので、取り急ぎ敷島参事に反省を促した方が良い』と……」
「それが、これか。南里の意向でそのままにしてあるが、いっそのことエミリーも改造しようかの」
「そ、それはダメです!」
「何故じゃ?」
「エミリーのことですから、感情レイヤーを改良しても、往復ビンタは免れないかと」
「随分と確信を持って言うが、されたことあるのかね?」

[同日18:00.宮城県仙台市青葉区 敷島のマンション 敷島孝夫、アリス・フォレスト、エミリー]

「あー、エラい目に遭った。まだ首が痛ェ……」
「申し訳・ありません」
「シキシマが悪い」
 取りあえず、エミリーに首を揉んでもらう敷島だった。
 で、ピシャリと断罪するアリス。
「明日までに治るかなぁ……」
「それよりシキシマ、今週末なんだけど、東京行かない?」
「あ?観光ならしないよ」
「そうじゃないの!じー様の遺産回収に行くから」
「東京にあるの?」
 敷島は意外そうな顔をした。
「んー、正確には東京じゃないんだけど……」
「どこだよ?」
 敷島はタブレットを持ってきた。
「Googleマップ出すから、それで具体的な場所教えてくれよ?」
「…………」
「ん?」
 スッとアリスが出した所は……。
「TDR(東京ディズニー・リゾート)じゃねぇかよ!二次創作でも、オリエンタルランドの規制が厳しいからダメ!」
「規制!?」
 詳細はアンサイクロペディアを参照のこと。ガクブル……。

[同日21:00.同場所 敷島孝夫]

{「あー、もしもし。敷島君か。ワシじゃ」}
「ワシワシ詐欺ならお断りですよ」
{「誰がワシワシ詐欺じゃ!少しは年寄りをいたわらんかい」}
「固くて私には割れません」
{「板割るんじゃない!労わるんじゃ!……それよりアリス嬢から聞いたと思うが……」}
「年度末で忙しいのに、ディズニー・リゾートに行けるかって話ですか?」
{「? そんなこと言ったのかね?」}
「ええ」
{「ならば、連れて行ってあげなさい」}
「本当にそこにウィリーの遺産が!?」
{「いや、ただ単に遊びに行きたいだけじゃろう。まだ嬢は23、4じゃろう?」}
「だから忙しいって」
{「まあ、ディズニーはともかくとして、東京方面にヤツの遺産が隠されているのは本当じゃよ」}
「あ、そうなんですか」
{「遺産の掘り返しなら、キミの業務の1つでもあるじゃろう?」}
「まあ、そうですね。でも、よく今までバレませんでしたね?」
{「ビルの解体工事中に見つかったというんじゃな」}
「そんな、簡単に……」
{「東日本大震災の影響じゃよ。ほら、千葉県の浦安市などは液状化現象が酷かったじゃろう?」}
「そうですね」
{「結局解体することになって、いざ解体工事をしてみたら、出て来たとの情報が入ってきた。それを確かめに行ってくれんか?」}
「行ってくれんかって、理事は来られないんですか?」
{「行きたいのは山々じゃが、ある事故で金沢から静岡の熱海まで往復するハメになっての、そのせいでまだ足が痛むのじゃ」}
「す、すいませんでした」
{「とにかく、アリスが言いたかったのは、TDRのある町にウィリーの遺産が隠されている、ということじゃろう。一緒に行ってあげなさい」}
「分かりました」
 
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