[同日15:00.石川県金沢市 十条の自宅 十条伝助]
「なに?鍵が見つかった?」
十条は自宅で平賀からの電話を受けていた。
{「先生なら何かご存知ではないかと思いまして……。シンディの胸の中からも出て来たことですし……」}
「確かにワシはウィリーと同じ釜の飯を食った仲ではあったが、全てを知っているつもりは無いぞ」
{「ご存知ないですか」}
「キミ達は何か仮説を立てたのかね?その上でワシに質問しておるのかね?」
{「はあ……。シンディの胸の中から出て来たのは黄色い鍵なんです。で、今回、浦安で見つけた鍵は緑でした。まあ、どちらも塗装はだいぶ剥げてますが……」}
「それで?」
{「敷島さんは、JR線や東京の地下鉄のラインカラーと何か関係あるんじゃないかと見ています」}
平賀の回答を聞いて、十条は思わず笑いがこぼれた。
「さすが敷島君じゃ。発想が発明家並みに突拍子も無い。でも、それが何だと言うのかね?」
{「それらのラインカラーが交わる場所というのが新宿。つまり、新宿に何か謎が隠されているのではないかというのが、敷島さんの仮説です」}
「本当に面白い男じゃのう。南里が傍に置いた気持ちも分かるわい。もっとも、寿命の削減と引き換えにはなるじゃろうがな」
{「新宿には財団の本部もありますが、でもだからといって、やっぱりまだ仮説としても弱いですね」}
「いや、意外と灯台下暗しというヤツで、財団本部に隠れてたりするかもしれんぞ?」
{「ええっ!?」}
「まあ、それは冗談じゃがな。しかし、灯台下暗しはあり得る。意外と財団本部の近くにウィリーの隠しアジトがあったのかもしれんぞ?」
{「警視庁など公安関係がガッツリ捜索したはずですが……」}
「その一枚上手を行ったのがウィリーじゃろう?日本の治安当局には1度も拘束されずに済んだのじゃからな。とにかく、浦安で発掘したモノについては、本部に送ったわけじゃな?」
{「はい。自分も後から行きますが、まずは本部のチームにも精査してもらいます」}
「休み返上で大変じゃの」
{「自分は南里先生に師事していた者として、ウィリーの謎を追う義務がありますから」}
「南里のヤツ、偉い弟子を持ったものじゃ。敷島君とアリス嬢はどうするのかね?」
{「今日は市内のホテルに一泊するみたいですよ。で、明日、本部に向かうそうです」}
「おっ、そうかね。それじゃ、気をつけてやってくれ。……うむ」
十条は電話を切った。
「博士。お茶をお持ちしました」
そこへキールが部屋に入ってきた。
「死せる孔明、生ける仲達を走らす、か……」
「は?」
「違うな。死せるウィリー、生ける弟子達を走らす……じゃな」
「???」
[同日同時刻 千葉県浦安市内のビジネスホテル 敷島、アリス、エミリー]
「今日はここで一泊するぞ」
「何だ。オフィシャル・ホテルじゃないのね」
「贅沢言うなや。この3連休で、どこも満室だよ。空いていただけラッキーだと思わなきゃ」
「敷島さんの・仰る通りです」
エミリーは微笑を浮かべて同調した。
フロントでチェック・インの手続きをする。
「それでは敷島様、本日より一泊のご利用ですね」
「はい」
「シングルお一部屋とツインお一部屋を御用意させて頂きました」
「とうもー」
で、部屋に向かう。
「これでも駆け込みセーフだったんだぞ。ネット予約の際、どちらも『残り1部屋』だったんだからな」
敷島はまず1つの部屋のドアを開けた。
「あー……と、こっちはツインか」
「じゃあエミリー、シングルね」
「イエス。ドクター・アリス」
「こら、違うだろ」
「何が?」
「何が、じゃない。マンションと同じ。ここが、オマエとエミリーが使うんだよ。エミリーも頷かない」
「すいません」
「早いとこ、エミリーの整備してやれよ。じゃあ、俺は隣の部屋にいるから」
そう言って、敷島は部屋を出て行った。
「シキシマって、難しいね」
「イエス。ドクター・アリス」
[同日17:30.同場所 アリス・フォレスト&エミリー]
「うん。異常は無いね」
「ありがとう・ございます」
エミリーの整備をしていたアリス。
「あとは充電して……」
そこへ電話が掛かって来た。
「あっ?」
「私が・出ます」
エミリーは電話を取った。
「もしもし」
{「あー、エミリーか。俺だけど……」}
「敷島さん。ドクター・アリスに・替わります」
「ん?アタシ?」
「イエス。敷島さんから・です」
アリスは受話器を受け取った。
「何よ?」
{「エミリーの整備は終わったか?」}
「どこかで監視でもしてんの、アンタは?グッド・タイミングで!」
{「まあ、ただの偶然だ。それより、ディズニー・リゾート行きたいか?」}
「What?」
{「今からならチケット安く買えるから、パレードだけでも見に行けるぞ」}
「……行く!」
{「じゃあ、ロビーで待ってるから。エミリーはどうする?」}
「エミリーは、残りのバッテリーが……」
「ドクター・アリス。私は・ここに・残っています」
「そ、そう?エミリーは充電させておかないとだから」
{「そうか。じゃあ、タクシー呼んどくから急いでね」}
敷島は電話を切った。
「I’m so happy!」
[同日17:45.ホテル前→タクシー車内 敷島孝夫&アリス・フォレスト]
「ディズニーランドまでお願いします」
「はい、ありがとうございます」
敷島はホテルのフロントに頼んで、タクシーを予約していた。
ようやくアリスがやってきて、早速タクシーに乗り込んだ。
「こんなこともあろうかと、ネットでチケット購入しておいたんだ。パレードだけでなく、夕飯もそこで食えるな」
ロビーでのんきに待っていたら、大歓喜のアリスに抱きつかれた。
意外とアリスも腕力が強く、危うく腰を折りそうになったらしい。
今更ながら欧米人の感情表現の強さを思い知った敷島だった。
(しかし、こんなに喜ぶとは……。あっ、そうか)
そこで敷島は気が付いた。
アリスは少なくとも現存している記憶の中で、母国のアメリカではテキサス州から出たことがないという。
アメリカのディズニーランドはフロリダ州にある。ということは、アリスは本家本元のランドには行ったことが無いということだ。
そして、それは同時に……。
「アリス。ディズニーランド自体、初めてか」
「そうなの!シキシマは?」
「俺は3回くらい行ったな」
「そんなに!?」
「1回目は家族旅行。2回目は中学ん時の修学旅行で、3回目は高校の卒業旅行で行った」
「凄い、スゴーイ!」
ホテルからTDLまで、その移置関係上、夕日に向かって進むことになる。
(イクスピアリで茶を濁そうとも思ったけど、これだけ楽しみにしてるんなら、入場までしてもいいな)
敷島は取りあえず、チケット購入を後悔せずに済んだ。
それどころか、アリスの別の一面を敷島は見ることになるのだった。
「なに?鍵が見つかった?」
十条は自宅で平賀からの電話を受けていた。
{「先生なら何かご存知ではないかと思いまして……。シンディの胸の中からも出て来たことですし……」}
「確かにワシはウィリーと同じ釜の飯を食った仲ではあったが、全てを知っているつもりは無いぞ」
{「ご存知ないですか」}
「キミ達は何か仮説を立てたのかね?その上でワシに質問しておるのかね?」
{「はあ……。シンディの胸の中から出て来たのは黄色い鍵なんです。で、今回、浦安で見つけた鍵は緑でした。まあ、どちらも塗装はだいぶ剥げてますが……」}
「それで?」
{「敷島さんは、JR線や東京の地下鉄のラインカラーと何か関係あるんじゃないかと見ています」}
平賀の回答を聞いて、十条は思わず笑いがこぼれた。
「さすが敷島君じゃ。発想が発明家並みに突拍子も無い。でも、それが何だと言うのかね?」
{「それらのラインカラーが交わる場所というのが新宿。つまり、新宿に何か謎が隠されているのではないかというのが、敷島さんの仮説です」}
「本当に面白い男じゃのう。南里が傍に置いた気持ちも分かるわい。もっとも、寿命の削減と引き換えにはなるじゃろうがな」
{「新宿には財団の本部もありますが、でもだからといって、やっぱりまだ仮説としても弱いですね」}
「いや、意外と灯台下暗しというヤツで、財団本部に隠れてたりするかもしれんぞ?」
{「ええっ!?」}
「まあ、それは冗談じゃがな。しかし、灯台下暗しはあり得る。意外と財団本部の近くにウィリーの隠しアジトがあったのかもしれんぞ?」
{「警視庁など公安関係がガッツリ捜索したはずですが……」}
「その一枚上手を行ったのがウィリーじゃろう?日本の治安当局には1度も拘束されずに済んだのじゃからな。とにかく、浦安で発掘したモノについては、本部に送ったわけじゃな?」
{「はい。自分も後から行きますが、まずは本部のチームにも精査してもらいます」}
「休み返上で大変じゃの」
{「自分は南里先生に師事していた者として、ウィリーの謎を追う義務がありますから」}
「南里のヤツ、偉い弟子を持ったものじゃ。敷島君とアリス嬢はどうするのかね?」
{「今日は市内のホテルに一泊するみたいですよ。で、明日、本部に向かうそうです」}
「おっ、そうかね。それじゃ、気をつけてやってくれ。……うむ」
十条は電話を切った。
「博士。お茶をお持ちしました」
そこへキールが部屋に入ってきた。
「死せる孔明、生ける仲達を走らす、か……」
「は?」
「違うな。死せるウィリー、生ける弟子達を走らす……じゃな」
「???」
[同日同時刻 千葉県浦安市内のビジネスホテル 敷島、アリス、エミリー]
「今日はここで一泊するぞ」
「何だ。オフィシャル・ホテルじゃないのね」
「贅沢言うなや。この3連休で、どこも満室だよ。空いていただけラッキーだと思わなきゃ」
「敷島さんの・仰る通りです」
エミリーは微笑を浮かべて同調した。
フロントでチェック・インの手続きをする。
「それでは敷島様、本日より一泊のご利用ですね」
「はい」
「シングルお一部屋とツインお一部屋を御用意させて頂きました」
「とうもー」
で、部屋に向かう。
「これでも駆け込みセーフだったんだぞ。ネット予約の際、どちらも『残り1部屋』だったんだからな」
敷島はまず1つの部屋のドアを開けた。
「あー……と、こっちはツインか」
「じゃあエミリー、シングルね」
「イエス。ドクター・アリス」
「こら、違うだろ」
「何が?」
「何が、じゃない。マンションと同じ。ここが、オマエとエミリーが使うんだよ。エミリーも頷かない」
「すいません」
「早いとこ、エミリーの整備してやれよ。じゃあ、俺は隣の部屋にいるから」
そう言って、敷島は部屋を出て行った。
「シキシマって、難しいね」
「イエス。ドクター・アリス」
[同日17:30.同場所 アリス・フォレスト&エミリー]
「うん。異常は無いね」
「ありがとう・ございます」
エミリーの整備をしていたアリス。
「あとは充電して……」
そこへ電話が掛かって来た。
「あっ?」
「私が・出ます」
エミリーは電話を取った。
「もしもし」
{「あー、エミリーか。俺だけど……」}
「敷島さん。ドクター・アリスに・替わります」
「ん?アタシ?」
「イエス。敷島さんから・です」
アリスは受話器を受け取った。
「何よ?」
{「エミリーの整備は終わったか?」}
「どこかで監視でもしてんの、アンタは?グッド・タイミングで!」
{「まあ、ただの偶然だ。それより、ディズニー・リゾート行きたいか?」}
「What?」
{「今からならチケット安く買えるから、パレードだけでも見に行けるぞ」}
「……行く!」
{「じゃあ、ロビーで待ってるから。エミリーはどうする?」}
「エミリーは、残りのバッテリーが……」
「ドクター・アリス。私は・ここに・残っています」
「そ、そう?エミリーは充電させておかないとだから」
{「そうか。じゃあ、タクシー呼んどくから急いでね」}
敷島は電話を切った。
「I’m so happy!」
[同日17:45.ホテル前→タクシー車内 敷島孝夫&アリス・フォレスト]
「ディズニーランドまでお願いします」
「はい、ありがとうございます」
敷島はホテルのフロントに頼んで、タクシーを予約していた。
ようやくアリスがやってきて、早速タクシーに乗り込んだ。
「こんなこともあろうかと、ネットでチケット購入しておいたんだ。パレードだけでなく、夕飯もそこで食えるな」
ロビーでのんきに待っていたら、大歓喜のアリスに抱きつかれた。
意外とアリスも腕力が強く、危うく腰を折りそうになったらしい。
今更ながら欧米人の感情表現の強さを思い知った敷島だった。
(しかし、こんなに喜ぶとは……。あっ、そうか)
そこで敷島は気が付いた。
アリスは少なくとも現存している記憶の中で、母国のアメリカではテキサス州から出たことがないという。
アメリカのディズニーランドはフロリダ州にある。ということは、アリスは本家本元のランドには行ったことが無いということだ。
そして、それは同時に……。
「アリス。ディズニーランド自体、初めてか」
「そうなの!シキシマは?」
「俺は3回くらい行ったな」
「そんなに!?」
「1回目は家族旅行。2回目は中学ん時の修学旅行で、3回目は高校の卒業旅行で行った」
「凄い、スゴーイ!」
ホテルからTDLまで、その移置関係上、夕日に向かって進むことになる。
(イクスピアリで茶を濁そうとも思ったけど、これだけ楽しみにしてるんなら、入場までしてもいいな)
敷島は取りあえず、チケット購入を後悔せずに済んだ。
それどころか、アリスの別の一面を敷島は見ることになるのだった。