報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「安息の日は訪れない」

2015-06-19 19:27:03 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月14日10:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 敷島家 敷島孝夫、アリス・シキシマ、シンディ]

「こりゃまた面白い動画が撮れたわねぇ……」
 アリスは貨物船スター・オブ・イースタン号に潜入したシンディが撮影した動画を見て言った。
 面白そうに観ていたものだから、敷島は苦い顔をした。
「映画じゃないんだぞ。……てか、俺もエミリーと行動していたから、シンディがどんな行動していたか知らないんだ」
「ほら、ここで“クリムゾン・ヘッド”と交戦してる」
「はあ!?俺、聞いてねーぞ!?」
 クリムゾン・ヘッドとは、敷島達が勝手に付けたイレギュラー・ロボットのことである。
 多くはバージョン・シリーズが攻撃を受けて完全に機能停止する前、自己修復機能の暴走で、人間でいうゾンビ化した現象のことを言う。
 血のように真っ赤なオイルを頭部から吹き出し、それで頭部が赤くなるので、“クリムゾン・ヘッド”と呼ぶことにした。
 人間のゾンビとは違い、彼らは強化・高速化して何の制御も効かなくなる。
 普通の人間が走るくらいのスピードで追い掛けて来る上、人工知能の精度は落ちているのか、装備している銃火器を使わない代わり、何の制御も掛かっていない腕力で殴りかかって来たり、抱きしめて胴体を引きちぎるといった攻撃をしてくる。
 バージョン・シリーズに限らず、東京決戦の終盤で、シンディがこの現象を引き起こし、敷島とエミリーを執拗に追い掛け回したことがある。
 装備していた銃火器やナイフは使わず、素手で敷島達に攻撃してきた。
 その時のことは、基本前期型からのメモリーを引き継いでいるシンディも『覚えていない』という。
 で、そのシンディがクリムゾン・ヘッド現象を起こしたバージョン・シリーズと戦うと、
「……まあ、大して変わらないね」
 素早く動くようになった分、銃の照準を合わせにくくはなったが、別に直接攻撃が効かないわけでもなく、結局シンディの敵ではないという。
「この現象を防ぐには?」
「自己修復機能の暴走が原因だから、それ自体を破壊……まあ、つまり頭脳自体を破壊してやればいいのよ」
 と、アリス。
「なるほど」
「でも、普段は動きの遅いヤツが、どうやったら速く動けるようになるのか興味深いわねぇ……」
「まあ、普通は逆だよな。ゾンビ化したら足の損傷が激しくて、逆に動きが遅くなるものだ。人間はな」
 “バイオハザード”でも、たまに走って追いかけて来るゾンビがいるが、それは発症初期の段階で、まだ足がそんなに腐敗していないゾンビだからだ。
「タカオ。今度潜入したら、クリムゾン・ヘッドを捕まえてきて。サンプルにするから」
「アホか!命が持たんわ!」
「だったらドクター。普通に4.0捕まえてきて、わざとそういう現象を起こさせてやるというのは?」
 と、シンディ。
「それだ!その手があった!」
「じゃあ、今度潜入してきたら4.0捕まえてきて」
「5.0で良かったら、すぐそこにいるけどね」
 シンディは薄笑いを浮かべ、庭を指さした。
 今の敷島達はマンション住まいであるが、マリオ達の性能にマンション管理会社も驚き、マリオ達にマンション管理の一部を任せるという実験に協力してくれている。
 今、マリオ達はマンション敷地内の庭木の手入れを行っていた。
「ダメよ、シンディ。あれでもまだ実験の段階なんだから、実験に実験を重ねるわけにはいかないわ」
「ですよね。かしこまりました。今度の潜入作戦に参加した際、可能な限り、4.0を捕獲してきます」
 シンディは恭しく応えた。
 オーナーの命令は絶対なのである。
 が、ユーザーの命令は相対という……。
「……で、新しく見つけてきた8号機ってのは?」
「もうすぐ出て来るよ」
 ちょうどシンディとエミリーが、件の木箱をこじ開けるシーンが出て来た。
「確かに……完全なフルモデルチェンジね。何か……シンディ達より小型化したみたい」
「リン……いや、ミクくらいの大きさじゃないか。より一層、人間に近づいていると思わないか?」
「そうね」
 ここにいるシンディも、人間と見紛うほどの姿だ。
 だが、どうもよく見ると人形が動いている感も拭えない所がある。
 映像で見ると、まるで本物の人間の少女がそこで寝ているような感じがするのだ。
 それは何故だろう。
「タカオ。このコがこちらでも調査できるようになるまで、あとどれくらい?」
「平賀先生は1週間くらいじゃないかって言ってるよ」
「遅いね。シンディに連れて来てもらおうかしら?」
「御命令でしたら、いつでも」
「やめなさい、2人とも!国家権力にケンカ売ってもロクなことないよ!」
 敷島はツッコみを入れた。
「はーい」
 シンディは首を縦に振ったが、それはユーザーである敷島の指示を聞いて頷いたものなのかは分からなかった。

 尚、エミリーもまたオーナーとユーザーの命令には忠実に従うべきと考えているのだが、シンディのようにオーナーとユーザーを差別化するのではなく、そのどちらの意向にも反しないよう考えることが多い。
 その為、行動力はシンディに劣ることが多い(考えてから行動するため)。

[同日17:00.埼玉県さいたま市中央区内ライブハウス 敷島孝夫、シンディ、井辺翔太、MEGAbyte]

「よっ、陣中見舞に来たぞー」
「うーっス!皆、頑張ってるー?」
 敷島とシンディが控え室にやってきた。
「社長!」
「シンディさん!」
 デビューしたばかりの新人ボカロユニット“MEGAbyte”がいた。
「昨日はライブを見てやれなくて申し訳無い。その代わり、今日はしっかり舞台裏からキミ達の活躍ぶりを見させてもらう」
「はい!」
 井辺も頷いて言った。
「このように、あなた達の活躍ぶりは会社も大きく期待しているということです。小さなライブハウスでのライブですが、全力で頑張ってください」
「はい!」
「だーいじょーぶだって。あの初音ミクも巡音ルカも、最初はこういうライブハウスから始めたんだから。ね?社長?」
 シンディが言った。
「まあ、そうだな。ルカの場合は元からツテがあったみたいだけど、ミクの場合はライブに出すのも大変だったんだ」
 MEGAbyteが小さく、都外とはいえライブハウスでライブができるのも、敷島達の事務所の営業によるものだ。
 あの初音ミク達を抱えている事務所の!ということで、ライブハウスの外では意外にもファンが集まっていた。
 それまでのポスターや雑誌広告、ラジオによる告知も大きかっただろう。

 それから1時間後……MEGAbyteのライブ自体は、何の問題も無く行われた。
 だが、護衛役のシンディが慌ただしく会場の外に出て行くのを井辺は見ている。
 その後で、敷島も。
「井辺君は彼女達を見ててくれ!」
 会場の外に飛び出したシンディは、そこではっきりと信号を受信した。
「やっぱりあの8号機は敵みたい!」
 ケータイ片手に敷島も慌てる。
「何ですって!?8号機が警察署から脱走!?……警察署が損壊ですって!?……シンディ!こっちに来る恐れがある!警戒に当たってくれ!」
「了解!」
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本日の動向 0619

2015-06-19 15:22:38 | 日記
 今日は泊まり勤務明けで、色々と駆けずり回った日であった。
 私の行き着けの病院から、主治医の先生に頼んでいた診断書ができ上がったので取りに来て欲しいという連絡を受けたので、まずはそこに向かった。
 何だかんだいって、今日もまたよくバスに乗った。
 西武と国際興業である。
 雨が降ったり止んだり、強く降ったり弱く降ったりと忙しい空模様だ。
 まるで私の信心の度合いを示しているかのようだ。
 しかし、診断書を書いてもらうのにも、結構高い費用を請求されるものだ。
 こういった文書関係には、保険が効かないので尚更だ。
 医師法では、医師は患者から診断書の作成を依頼された場合、断ってはいけないとされ、当然作成に当たっては不正記載をしてはならないと明言されている。
 それはいい。
 その後はセンター内の食堂で昼食を取っていたのだが、隣のテーブルに座っていた老婦人とその娘または息子夫婦と思しき3人が、気になることを言っていた。
 要約すると、次の通り。

 1:ここいら(家の近所?)に宗教の勧誘が来ることは珍しくないが、ここ最近しつこくなってきた。
 2:以前はキリスト教(エホバ?)が来ていたが、最近よく来るのは仏教関係だ。
 3:昔、勧誘によく来ていた創価学会と似ているが、どうも違う。
 4:創価学会の悪口を良く言うが、どこの宗教か分からない。
 5:「日蓮ダイショーニン」と呼んでいるが、日蓮宗ではないらしい。
 6:薄っぺらいパンフレットのようなものをよく置いて行く。
 7:そのチラシにも創価学会の悪口ばかり。
 8:よく分からない仏教用語が羅列されている。
 9:お坊さんの写真が写っている。
 10:お祖母ちゃんの病気も、入信すれば治ると言っているが何とも怪しい。

 顕正会じゃないのか?あ?坊さんってことは、法華講!?
 何だ、このヒントだけじゃ顕正会と間違われそうな活動は!?
 何だよ!顕正会には訪問折伏を批判してるくせに、自分達はやってるのか!

 このご家族、車で来院していたようだ。
 私はそのご家族の後を追ってみた。
 何故なら、食べた後に車を出して帰るという話をしていたからだ。
 別に車を追うわけではない。
 ただ、どこのナンバーかを確認したかったのだ。
 シルバーのトヨタ・プリウスでおいでのその御家族、ナンバーは熊谷になっていた。
 ……あの辺に武闘派がいるのか?
 何だか知らんが、熊谷ナンバーの地域で訪問折伏されている方、お心当たりがあったら、何か迷惑そうだったから自重した方がよろしいかと思う。
 ただ、顕正会でも宗門批判の一環で御僧侶の写真を掲載することがあるから、その可能性もある。
 よく分からない仏教用語というのは、御金言の引用ではないだろうか。
 いや、無宗教の人に御書を引用しても無駄な抵抗だと思うが。
 創価学会ではないだろう。
 顕正会員の恐れもあるが、新聞ではなくパンフレットと言っている辺りが、どうも気になるんだよな。
 “フェイク”が創価学会の悪口書くわけないし……。
 宗門のリーフレットで、随分と学会を破折してるものがあるじゃない?私はそれをイメージしてしまったのだ。
 正直、あれは無宗教の人には見せられない。
 昔、無宗教の多摩準急先生に、折伏の一環で色々と宗門の資料を渡していたりしていたのだが、創価学会の悪口ばかりでいいイメージが湧かなかったそうだ。
 そこへ、あの“あっつぁブログ”事件である。

 話が逸れてしまった。
 100パーそれが法華講員だったとしたら、私が代わりに謝っておこうと思ったのだが、確信が無いので黙っておいた。
 私も与同罪決定だな。

 再びバスに乗り、大宮駅へ。
 JTBに行って、ナイスギフト券を5000円分購入した。
 旅行券ではなく、商品券である。
 母の日のプレゼントにもこれを送ったので、父親にも同じ物を送った次第だ。

 本当は早く結婚して孫の顔でも見せるのが最大の親孝行なのかもしれないが、無い袖は振れないのである。
 振れる袖を振って、それだということ。
 御本尊に早く振れる袖が頂戴できるようお願いしているのだが、なしのつぶてだ。
 そんなんで折伏しろったってムリだよ。
 先立つモノも無いのにさ。
 ……と、不良信徒らしく愚痴ってみる。

 最後はさいたま新都心駅にケト線で移動し、近くの郵便局から簡易書留で送った。
 大宮高島屋にも郵便局はあるのだが、上階にある上、規模も小さいので、恐らく混雑しているのではないかとの勝手な予想だ。
 ケト線なら定期もあるので、タダである。
 さいたま市からなら、午後に出せば、明後日には仙台に到着すると局員氏。
 書留系なら土日も配達してくれるので、ちょうど父の日に届くという狙いだ。
 これが明日に到着させたかったら、そこへ更に速達というオプションも付けなければならないが、そんなに急ぐことはない。

 ま、せいぜい私にできることはそれだけだ。
 武闘派の皆さん、あまりやり過ぎないようにね。
 宗派のイメージダウンに繋がると、私のような穏健派が“普段着の折伏”すらできなくなるから。
コメント (6)
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“新アンドロイドマスター” 「マルチタイプの価値」

2015-06-19 03:05:53 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月13日07:17.天候:晴 JR総武本線・特急“しおさい”2号・4号車内→東京駅構内 敷島孝夫、平賀太一、エミリー、シンディ]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。新幹線、中央線、京浜東北線、山手線、東海道線、上野東京ライン、横須賀線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。……〕

 地上を走っていた電車であったが、錦糸町駅を出ると、しばらくしてまた地下に入る。
「ううー……!」
 車内で仮眠を取っていた敷島は、ちゃんとそこで起きた。
 さすが電車通勤者だ。
「平賀先生、もうすぐ東京ですよ」
「ん……?ああ……」
 敷島が揺り動かすと、平賀も目を覚ました。
 大きく伸びをして、窓際に置いた眼鏡を取りがてら閉めていたブラインドを上げると、ちょうど新日本橋駅を通過するところだった。
「やはり、中途半端に寝ると、却って眠くなるものですなぁ……」
「ですね……」
「敷島さんは、これからどうされるんですか?」
「まあ週末だし、大宮の家まで帰ろうかな。アリス達も待っているだろうし」
「ああ、それがいいでしょう」

 そして、電車が東京駅の地下ホームに入線する。
 もちろん、往路と同じ総武線ホームの方だ。
「じゃあ、上野までは御一緒ですかね」
「そうですね」
 電車を降りる。
 敷島達が乗ったグリーン車以外は全て自由席ということで、これも往路では5号車が指定席になっていたのとは違う。
 終点である東京駅でぞろぞろ降りて来た乗客の数は結構多い。
「敷島さんはよく眠れましたか?」
 平賀が聞いてきたので、敷島は口元を歪めながら首を傾げた。
「いやー、中途半端に浅く眠ったもんだから、変な夢見ちゃいましたよ。まあ変な夢といっても、霞ヶ関の御役人達と交渉する夢ですが」
「敷島さんも、何だかんだ言って、仕事熱心ですね」
 先に電車を降りて、そんな会話をしていた敷島と平賀。
 1番後に降りてきたのは、エミリーとシンディ。
 何故なら、大きなキャリーケースを転がしていたからである。
「お待たせ・しました」
「ああ。じゃあ、行こうか」

「お前達が張っててくれたおかげで、安心して寝れたよ」
 敷島が地上に向かいがてら、そんなことを言った、
「こちらこそ……私達もいい席に乗せて頂いて……」
 シンディが遠慮がちに言った。
 褒め言葉を掛けられて、照れているのだろうか。
 前期型の時、東京決戦で平賀を殺そうとナイフを振り上げた過去がある為、今では頭が上がらない。
 そのナイフを実際に振り下ろした相手は、作り主であるドクター・ウィリーであったことは皮肉過ぎた。
「いや、いいんだよ。俺達の護衛の為だし、それでなくてもお前達はそれくらいの価値があるんだ」
「そうそう」
 平賀の言葉に同調する敷島。
「それって、50億のこと?」
 と、シンディは敷島を見た。
「まあ、なかなかそんな値は付かないからなぁ……」
「何の・ことですか?」
 事情を知らないエミリーは、首を傾げた。
「前に某霞ヶ関の庁舎に行ったら、シンディを50億円で売ってくれって話があったんだ。それってつまり、エミリーもその値段だってことだよ。正直俺は50億は安いと思ったね。だから俺は、逆ギレして出て行ってやったよ」
「そうですか……。50億ですか……。なるほど……」
 平賀は少し考える素振りをした。
「何か?」
「元々マルチタイプは値段が付けられません。が、もう少し高値が付いても良かったかな。まあ、マルチタイプの製造費は国家機密レベルですがね」
 ボーカロイドが約5億円くらいの価値だという。
「それが、やっと3機目が手に入ったんだ。早いとこ、こっちで面倒見たいですね」
 十条がオリジナルで作ったと思われる8号機だ。
 見た目の規格的には、旧ソ連時代のシリーズである7号機までとは似ても似つかない。
「しかし……」
 平賀は首を傾げた。
「それだけの価値があるマルチタイプを、みすみす見逃すとは思えません。きっと、取り返しに来るかもですよ?」
「オンボロの貨物船で運んでたくらいだからなぁ……。意外とそうでもなかったりして」
「ええっ?」
「ボーカロイドだって、貨物機で運ぶくらいでしょう?ゆかりみたいな新品が、フェデックスで届いたくらいだもんな……。ましてや稼動中は、堂々と旅客機で移動だ」
「見た感じ、8号機のコも新造されたばかりって感じでしたよ?」
 シンディが発言した。
「秘密の輸送だから、わざと偽装貨物船を使っていただけかもしれませんしね。警察にいる間も、自分達の手に渡ってからも、警戒は必要かもですね」

[同日07:34.JR東京駅3・4番線ホーム→京浜東北線車内 上記メンバー]

〔おはようございます。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の3番線の電車は、7時34分発、各駅停車、大宮行きです〕

「平賀先生は上野で?」
「ええ。エミリーは大学の教授室に置いて行きます」
 平賀が上京した際によく利用するサウナというのが、男性専用のため。
「護衛として、そういう所にも入って行ける執事ロボットも必要かもしれませんね」
 と、敷島が言うと、それは薄々感じていたのか、平賀は右手を首の後ろにやった。
「はい。それは企画検討中です」
「井辺君みたいなこと言って~」

〔まもなく3番線に、各駅停車、大宮行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください〕

 電車の接近放送が鳴り響く。
 中距離電車では鳴った後、実際に列車が入線して来るまで多少のブランクがあるが、昔の国電ではすぐに来る。

〔とうきょう~、東京~。ご乗車、ありがとうございます。次は、神田に止まります〕

 電車に乗り込む。
「座っちゃたら寝そうだなぁ……」
 と、敷島。
「私は逆に、こういう電車の方が眠れるんですよ」
「さすが電車通勤の敷島さん」

〔3番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 乗り換えて来た総武線ホームでも流れる賑やかな発車メロディの後、電車が走り出した。
 休日ダイヤと言っても、慌ただしさは平日と大して変わらぬかもだ。

〔この電車は京浜東北線、各駅停車、大宮行きです。次は神田、神田。お出口は、右側です。中央線と地下鉄銀座線はお乗り換えです。……〕

「一休みされた後は、もうお帰りになるんですか?」
「そうですね。エミリーを見たいという希望者がいなければ、帰ります」
 週末なので、あまりいないかもしれない。
 今回は特別捜査への協力で上京したので、関係者に平賀の上京はあまり知られていない。
 なので、エミリーを見たいという希望者はいないだろうというのが平賀の予想だ。
 大学の教授室に置いて来る際に、そこで初めて知られるというオチだろう。
「ちょうど電源もあるから、バッテリーの充電もできますしね」
「そういえばそうだ」

 昨夜と打って変わって、穏やかな朝を迎えている関東地方。
 8の番号を腕に抱える3番目のマルチタイプの上陸は、台風の上陸並みに吹き荒れる結果をもたらすのか?
 この時点で、大きな危機感を持っていた人物はまだ誰もいない。
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