[2月22日16:00.天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
愛原:「よし、高橋。明日は泊まり掛けになるかもしれないぞ。準備しておけよ」
高橋:「はいっ!」
高野:「泊まり掛けだと張り切るんだから……。それに、もしかしたら日帰りになるかもしれないんでしょう?」
高橋:「あぁ?」
愛原:「事件解決の進捗具合にもよるな、それは」
私はコホンと咳払いをした。
愛原:「いいか、高橋?今度の仕事は慰安旅行じゃないぞ。分かってるな?」
高橋:「メモっておきます!」
何でわざわざこんなものをメモる必要があるんだ、こいつは……。
と、そこへリサがやってきた。
リサ:「ただいまー」
高橋:「オマエんちか、ここは!」
リサの挨拶に、すかさずツッコミを入れる高橋。
高橋:「事務所だっつの、ここは!」
リサ:「え?え?」
愛原:「高橋、いいから」
高野:「どうせマンションに帰っても誰もいないんだから、ここにいさせてあげてもいいじゃない」
愛原:「そうだな」
リサは通学カバンの中から1枚のプリントを取り出し、私に差し出した。
リサ:「愛原さん。いよいよ明日、出発」
愛原:「おお、そうか」
高野:「なに?どこか行くの?」
愛原:「リサ達、明日から学校主催のスキー教室に行くんだよ。色々と行事の多い学校だなぁ」
高野:「どこへ行くんですか?」
リサ:「ガーラ湯沢。新幹線で」
高野:「新幹線で行くの。凄いねぇ。……って、先生達の行かれる所と近くありません?」
愛原:「えっ?……あっ、そうか!」
リサ:「なーに?愛原さん達もどこか行くの?」
愛原:「仕事の依頼があってさ、俺と高橋は明日、越後湯沢まで行くところだ」
リサ:「おー!リサ達と一緒!」
愛原:「行くタイミングは違うと思うぞ」
リサ達は朝の新幹線で出発し、夕方の新幹線で帰って来る日帰りコースだったはず。
一方、私達は……。
愛原:「とある会社の社員旅行について行くわけだから、まずガーラ湯沢は無いしな」
高橋:「オッサン達の社員旅行じゃ、誰もスキーになんか行かねーよ」
愛原:「温泉でマターリがメインだろうからねぇ。せっかくだから、リサ達も温泉でマターリしてくればいいのに」
リサ:「マターリ?」
高野:「1年生は日帰り、2年生は1泊2日でどこかで野外活動みたいなことをして、3年生で2泊3日の修学旅行らしいですよ」
愛原:「そうなんだ。何か、学年が上がる毎に受験で忙しいから、逆に掛ける時間を減らして行きそうなものだけど」
高野:「東京中央学園は中高一貫校なんですよね?そのせいもあると思いますよ」
愛原:「あ、なるほどな」
でも高等部は高等部で、やっぱり別に修学旅行があるんだよな。
聞いた話だと、中等部は国内一辺倒だが、高等部になると海外の選択肢もあるとか。
そう言えば私が高校生だった頃、シンガポールに行った連中とかいたなぁ……。
当初は南朝鮮だったんだけど、そこへの謝罪ツアーをゴリ押ししていた日教組の教師が不祥事で懲戒免職になり、シンガポールに変更になったという経緯があったのを覚えている。
ザマァ見さらせ!日狂祖め!!
愛原:「それにしても、リサももうすぐ2年生か」
高野:「リサちゃんの場合、秋から転入しましたからね。メインは2年生からですよ」
愛原:「そういう見方もできるか。えーと……リサ達が乗る新幹線は……やっぱり朝の電車か。あの企業さんのツアーが乗る列車は?」
高橋:「12時40分発、“Maxとき”321号、新潟行きですね」
高橋はクライアントからもらった新幹線のチケットを見て答えた。
何でもその会社は中小企業ではあるのだが、福利厚生の一環と社員同士の親睦を深める為に毎年社員旅行を行っているらしい。
社長さん自ら幹事となって、社員達を連れて行くのだそうだ。
話だけ聞いているとアットホームな雰囲気の会社さんのようだが、ここ最近、社長宛に脅迫状が届いているらしい。
どうも、会社の運営方針に対しての不満が理由のようだ。
もちろん警察には相談したが、だからといって警察が24時間社長さんを見張っていてくれるわけではない。
しかも、社員旅行の時期が迫っている。
毎年楽しみにしている社員も多い中、中止にするのは申し訳無いが、しかし脅迫状の内容からして犯人は社員の中にいる恐れも高い。
そこで私達、探偵の出番なんだそうだ。
社長の身の安全を守りつつ、犯人を突き止めて欲しいというんだな。
愛原:「昼過ぎに出発か。本当に越後湯沢の温泉でマターリがメインだな」
高野:「か、もしくは作者の会社みたいにコンパニオン付きの宴会がメインでしょうね」
愛原:「いい会社じゃないか。うちの事務所もあやかりたいものだ」
高橋:「先生、この前、銚子に連れて行ってくれたじゃないですか。それで十分ですよ」
高野:「そうですよ」
愛原:「そうか?そう言ってくれると嬉しいな」
もっとも、今となっては斉藤社長の手の上の孫悟空だったことに気付かされたが。
やっぱり、日本の企業ってのは大企業にあやからないと持たないようになっているのかねぇ……。
善場さんの所属する政府機関とは事実上の随意契約状態だし(リサの面倒を看るという業務の入札に参加する所が他にあるわけないだろう)、斉藤社長ともやっぱり随意契約だ。
愛原:「リサは8時台に出発か。朝早いな」
リサ:「お昼はスキー場で出るけど、朝は食べて来るか用意して新幹線の中で食べるんだって」
愛原:「東京駅日本橋口、7時半集合とあるぞ?」
リサ:「サイトーの車に乗せてもらえることになった。そこは大丈夫」
愛原:「そうか」
因みにスキー用具は、自分で持っている人はそれを持って行き、リサみたいに持っていない人はレンタルになるそうだ。
……って、それもそうか。
リサ:「向こうで会える?」
愛原:「いや、どうだろ」
高橋:「ムリに決まってんだろーが」
高野:「マサ、そういう言い方しない!」
高橋:「ちっ」
社員旅行の人達がスキーでもやろうということになれば話は別だが、もらった行程表のどこにもスキーのことは書いていなかった。
それにしても、会社の運営方針を巡って脅迫状が発生するなんて、凄い会社だな。
ヒラ社員はどうあがいても会社の運営方針に従わざるを得ないし、役員ならそれに面と向かって異議ありを唱える権限はあるから、逆に脅迫状を送る必要は無い……と。
はてさて、動機のある人間は誰なのやら。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
愛原:「よし、高橋。明日は泊まり掛けになるかもしれないぞ。準備しておけよ」
高橋:「はいっ!」
高野:「泊まり掛けだと張り切るんだから……。それに、もしかしたら日帰りになるかもしれないんでしょう?」
高橋:「あぁ?」
愛原:「事件解決の進捗具合にもよるな、それは」
私はコホンと咳払いをした。
愛原:「いいか、高橋?今度の仕事は慰安旅行じゃないぞ。分かってるな?」
高橋:「メモっておきます!」
何でわざわざこんなものをメモる必要があるんだ、こいつは……。
と、そこへリサがやってきた。
リサ:「ただいまー」
高橋:「オマエんちか、ここは!」
リサの挨拶に、すかさずツッコミを入れる高橋。
高橋:「事務所だっつの、ここは!」
リサ:「え?え?」
愛原:「高橋、いいから」
高野:「どうせマンションに帰っても誰もいないんだから、ここにいさせてあげてもいいじゃない」
愛原:「そうだな」
リサは通学カバンの中から1枚のプリントを取り出し、私に差し出した。
リサ:「愛原さん。いよいよ明日、出発」
愛原:「おお、そうか」
高野:「なに?どこか行くの?」
愛原:「リサ達、明日から学校主催のスキー教室に行くんだよ。色々と行事の多い学校だなぁ」
高野:「どこへ行くんですか?」
リサ:「ガーラ湯沢。新幹線で」
高野:「新幹線で行くの。凄いねぇ。……って、先生達の行かれる所と近くありません?」
愛原:「えっ?……あっ、そうか!」
リサ:「なーに?愛原さん達もどこか行くの?」
愛原:「仕事の依頼があってさ、俺と高橋は明日、越後湯沢まで行くところだ」
リサ:「おー!リサ達と一緒!」
愛原:「行くタイミングは違うと思うぞ」
リサ達は朝の新幹線で出発し、夕方の新幹線で帰って来る日帰りコースだったはず。
一方、私達は……。
愛原:「とある会社の社員旅行について行くわけだから、まずガーラ湯沢は無いしな」
高橋:「オッサン達の社員旅行じゃ、誰もスキーになんか行かねーよ」
愛原:「温泉でマターリがメインだろうからねぇ。せっかくだから、リサ達も温泉でマターリしてくればいいのに」
リサ:「マターリ?」
高野:「1年生は日帰り、2年生は1泊2日でどこかで野外活動みたいなことをして、3年生で2泊3日の修学旅行らしいですよ」
愛原:「そうなんだ。何か、学年が上がる毎に受験で忙しいから、逆に掛ける時間を減らして行きそうなものだけど」
高野:「東京中央学園は中高一貫校なんですよね?そのせいもあると思いますよ」
愛原:「あ、なるほどな」
でも高等部は高等部で、やっぱり別に修学旅行があるんだよな。
聞いた話だと、中等部は国内一辺倒だが、高等部になると海外の選択肢もあるとか。
そう言えば私が高校生だった頃、シンガポールに行った連中とかいたなぁ……。
当初は南朝鮮だったんだけど、そこへの謝罪ツアーをゴリ押ししていた日教組の教師が不祥事で懲戒免職になり、シンガポールに変更になったという経緯があったのを覚えている。
ザマァ見さらせ!日狂祖め!!
愛原:「それにしても、リサももうすぐ2年生か」
高野:「リサちゃんの場合、秋から転入しましたからね。メインは2年生からですよ」
愛原:「そういう見方もできるか。えーと……リサ達が乗る新幹線は……やっぱり朝の電車か。あの企業さんのツアーが乗る列車は?」
高橋:「12時40分発、“Maxとき”321号、新潟行きですね」
高橋はクライアントからもらった新幹線のチケットを見て答えた。
何でもその会社は中小企業ではあるのだが、福利厚生の一環と社員同士の親睦を深める為に毎年社員旅行を行っているらしい。
社長さん自ら幹事となって、社員達を連れて行くのだそうだ。
話だけ聞いているとアットホームな雰囲気の会社さんのようだが、ここ最近、社長宛に脅迫状が届いているらしい。
どうも、会社の運営方針に対しての不満が理由のようだ。
もちろん警察には相談したが、だからといって警察が24時間社長さんを見張っていてくれるわけではない。
しかも、社員旅行の時期が迫っている。
毎年楽しみにしている社員も多い中、中止にするのは申し訳無いが、しかし脅迫状の内容からして犯人は社員の中にいる恐れも高い。
そこで私達、探偵の出番なんだそうだ。
社長の身の安全を守りつつ、犯人を突き止めて欲しいというんだな。
愛原:「昼過ぎに出発か。本当に越後湯沢の温泉でマターリがメインだな」
高野:「か、もしくは
愛原:「いい会社じゃないか。うちの事務所もあやかりたいものだ」
高橋:「先生、この前、銚子に連れて行ってくれたじゃないですか。それで十分ですよ」
高野:「そうですよ」
愛原:「そうか?そう言ってくれると嬉しいな」
もっとも、今となっては斉藤社長の手の上の孫悟空だったことに気付かされたが。
やっぱり、日本の企業ってのは大企業にあやからないと持たないようになっているのかねぇ……。
善場さんの所属する政府機関とは事実上の随意契約状態だし(リサの面倒を看るという業務の入札に参加する所が他にあるわけないだろう)、斉藤社長ともやっぱり随意契約だ。
愛原:「リサは8時台に出発か。朝早いな」
リサ:「お昼はスキー場で出るけど、朝は食べて来るか用意して新幹線の中で食べるんだって」
愛原:「東京駅日本橋口、7時半集合とあるぞ?」
リサ:「サイトーの車に乗せてもらえることになった。そこは大丈夫」
愛原:「そうか」
因みにスキー用具は、自分で持っている人はそれを持って行き、リサみたいに持っていない人はレンタルになるそうだ。
……って、それもそうか。
リサ:「向こうで会える?」
愛原:「いや、どうだろ」
高橋:「ムリに決まってんだろーが」
高野:「マサ、そういう言い方しない!」
高橋:「ちっ」
社員旅行の人達がスキーでもやろうということになれば話は別だが、もらった行程表のどこにもスキーのことは書いていなかった。
それにしても、会社の運営方針を巡って脅迫状が発生するなんて、凄い会社だな。
ヒラ社員はどうあがいても会社の運営方針に従わざるを得ないし、役員ならそれに面と向かって異議ありを唱える権限はあるから、逆に脅迫状を送る必要は無い……と。
はてさて、動機のある人間は誰なのやら。