[3月14日07:00.天候:曇 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]
勇太:「おはよう……」
宗一郎:「おう。眠そうだな」
勇太:「昨夜はもう……いや、何でもない」
佳子:「早く顔洗っといで」
勇太:「うん……。マリアさんは……今日は2階のシャワー使ってたな……」
〔「……昨夜8時頃、東京都江東区のマンションで、男子高校生が何者かに両目を繰り抜かれるという猟奇事件が発生しました」〕
宗一郎:「朝からエグいニュースが流れるな」
勇太:「両目……?」
〔「男子高校生は両目を失う重傷を負い、病院で手当てを受けています。尚、警察が駆け付けた時、繰り抜かれた両目は行方不明となっており、被害者の男子高校生はしきりに『飴玉婆さんに目玉を取られた』と話しているということですが、部屋には侵入された形跡が無いことから、男子高校生が何らの事情で自ら両目を繰り抜いた疑いが……」〕
勇太:「『飴玉婆さん』!?」
勇太は目を丸くした。
宗一郎:「思春期の錯乱かねぇ?春休みの時期、学生は色々と不安な時期でもあるからねぇ……」
勇太:(まさか鈴木君はこのことを言ってたのか!?)
〔「……この事件なんですが、実は1995年にも似たような事件が発生しておりまして、まず第一の事件が千葉県松戸市にあります私立鳴神学園高校で、第二の事件が2008年頃に都内の東京中央学園上野高校で発生しております。……」〕
勇太:(2008年の事件は僕が追い掛けたんだよ!)
そしてその事件の犯人は、ポーリン組のキャサリンであった。
魔法使いの老婆に化けていた(のか今の若い姿が世を忍ぶ仮の姿なのかは不明だが)キャサリンに対し、暴行を働こうとしたり、飴玉を強奪しようとした輩に対しての報復であった。
もしもキャサリンが稲生に関心を持って近づいていたら、稲生はイリーナ組ではなく、ポーリン組に所属していたかもしれない。
当時のキャサリンは東京中央学園にも愛想を尽かして離れた直後であった為、稲生が遭遇することはなかったし、仮に遭遇していたとしても、当時は威吹が付いていた(憑いていた?)から、威吹が冷たくあしらったかもしれない。
稲生は洗顔した後、再びダイニングに戻って来た。
既にマリアがそこにいた。
佳子:「早いとこ食べなさい」
勇太:「はーい。いただきます」
マリア:「いただきます」
勇太は朝食の焼き鮭に箸をつけながらマリアに言った。
勇太:「あ、マリアさん。さっきテレビでやってたんですけど、どうやらキャサリン先生の同類が現れたらしいですよ?」
マリア:「キャサリンというと、ポーリン組に所属していた人だね。今はハイマスター(High Master)になったことで、独立した人だろう?」
勇太:「そうです。昨夜、鈴木君から連絡があって、キャサリン先生の後釜のような人が『飴玉婆さん』をやるって話、マリアさんは聞いてますか?あの、高校の門の近くに張り付いて、下校する生徒の中から寂しそうなコに対して魔法の飴を配るというものなんですが」
マリア:「さあ、知らないな。師匠はロクに手紙も読まないんで、私が代読することになってるんだ。師匠の利権に預かりたいという手紙は数多くあるが、そういう手紙は無かったなぁ……」
勇太:「先生が直接聞いて、マリアさんに教えていないという可能性は?」
マリア:「無きにしもあらずだけど、そういう場合は師匠が率先して動くからね。でも今は、大師匠様とのパーティーに耽ってる。だから違うと思う」
勇太:「そうですか。つまりそれは『無断活動』ということになりますよね?」
マリア:「一体誰なんだ?」
勇太:「それが分からないから、きっと鈴木君は僕に電話して来たんだと思いますよ?」
マリア:「あの鈴木という男、私のことは諦めて、今度はエレーナに乗り換えただろ?」
勇太:「そうですね」
マリア:「エレーナも狡賢いヤツだから、鈴木を上手く利用してるかもしれないな」
勇太:「鈴木君、可哀想だな」
マリア:「まあ、魔法使いに惚れても大変なだけってことさ。勇太みたいに魔道師にでもならなきゃ」
マリアはニッと笑った。
マリア:「師匠の計画通りだったかもしれないね」
勇太:「それでもいいんです。僕はマリアさんと一緒になれれば」
マリア:「うちの師匠はまだその辺優しいから、それで良かったけどね。他の師匠達だったら、きっと利用されるだけされて、あとはポイかもしれないよ」
勇太:「怖っ!」
マリア:「同じ女の私でも、『そこまでやるか?』というくらいエグいやり方をするヤツもいるからね。勇太も気をつけなよ」
勇太:「同じ魔道師なのに?」
マリア:「同じ魔女の私も裏切り者扱いされて、イジメられたんだから」
勇太:「そ、それもそうか……。それで、どうします?『飴玉婆さん』の件」
マリア:「大師匠様とのパーティーはまだもう少し続くから、私達でやるか。どうせエレーナも報酬目当てで動くだろうから」
勇太:「分かりました」
マリア:「で、『飴玉婆さん』が出たのはどこ?」
勇太:「えーと……多分、東京中央学園かと」
マリア:「何それ?」
勇太:「鈴木君、東京中央学園に現れた『飴玉婆さん』の話について僕に聞いてきましたから」
マリア:「キャサリン師に聞けば良かったのに。本人なんだから」
勇太:「きっとその辺、鈴木君は知らなかったんでしょうね。もう被害者も出てしまったみたいですから、急いで探しませんと」
マリア:「今なんて言った?」
勇太:「さっきのニュースで、飴玉婆さんに目玉を繰り抜かれてしまった男子高校生がいたらしいんですよ。きっと、東京中央学園のコです。第二の被害者が出る前に……」
マリア:「あのさ、もしその2代目飴玉婆さんがキャサリン師のやり方を踏襲しているのだとしたら、被害者を出した後は2度と出没しないぞ?」
勇太:「あ゛っ……!」
盲点であった。
マリア:「で、次いつどこの高校に現れるか分からないんでしょ?」
勇太:「そ、そうですねぇ……」
もしかしたら、来年度になるのかもしれない。
勇太:「ダンテ門内の誰かですかね?」
マリア:「キャサリン師のマネなんて、誰でもできるわけじゃないからな。一応、あの学校に行ってみるか」
勇太:「そうですね。そうしましょう」
勇太:「おはよう……」
宗一郎:「おう。眠そうだな」
勇太:「昨夜はもう……いや、何でもない」
佳子:「早く顔洗っといで」
勇太:「うん……。マリアさんは……今日は2階のシャワー使ってたな……」
〔「……昨夜8時頃、東京都江東区のマンションで、男子高校生が何者かに両目を繰り抜かれるという猟奇事件が発生しました」〕
宗一郎:「朝からエグいニュースが流れるな」
勇太:「両目……?」
〔「男子高校生は両目を失う重傷を負い、病院で手当てを受けています。尚、警察が駆け付けた時、繰り抜かれた両目は行方不明となっており、被害者の男子高校生はしきりに『飴玉婆さんに目玉を取られた』と話しているということですが、部屋には侵入された形跡が無いことから、男子高校生が何らの事情で自ら両目を繰り抜いた疑いが……」〕
勇太:「『飴玉婆さん』!?」
勇太は目を丸くした。
宗一郎:「思春期の錯乱かねぇ?春休みの時期、学生は色々と不安な時期でもあるからねぇ……」
勇太:(まさか鈴木君はこのことを言ってたのか!?)
〔「……この事件なんですが、実は1995年にも似たような事件が発生しておりまして、まず第一の事件が千葉県松戸市にあります私立鳴神学園高校で、第二の事件が2008年頃に都内の東京中央学園上野高校で発生しております。……」〕
勇太:(2008年の事件は僕が追い掛けたんだよ!)
そしてその事件の犯人は、ポーリン組のキャサリンであった。
魔法使いの老婆に化けていた(のか今の若い姿が世を忍ぶ仮の姿なのかは不明だが)キャサリンに対し、暴行を働こうとしたり、飴玉を強奪しようとした輩に対しての報復であった。
もしもキャサリンが稲生に関心を持って近づいていたら、稲生はイリーナ組ではなく、ポーリン組に所属していたかもしれない。
当時のキャサリンは東京中央学園にも愛想を尽かして離れた直後であった為、稲生が遭遇することはなかったし、仮に遭遇していたとしても、当時は威吹が付いていた(憑いていた?)から、威吹が冷たくあしらったかもしれない。
稲生は洗顔した後、再びダイニングに戻って来た。
既にマリアがそこにいた。
佳子:「早いとこ食べなさい」
勇太:「はーい。いただきます」
マリア:「いただきます」
勇太は朝食の焼き鮭に箸をつけながらマリアに言った。
勇太:「あ、マリアさん。さっきテレビでやってたんですけど、どうやらキャサリン先生の同類が現れたらしいですよ?」
マリア:「キャサリンというと、ポーリン組に所属していた人だね。今はハイマスター(High Master)になったことで、独立した人だろう?」
勇太:「そうです。昨夜、鈴木君から連絡があって、キャサリン先生の後釜のような人が『飴玉婆さん』をやるって話、マリアさんは聞いてますか?あの、高校の門の近くに張り付いて、下校する生徒の中から寂しそうなコに対して魔法の飴を配るというものなんですが」
マリア:「さあ、知らないな。師匠はロクに手紙も読まないんで、私が代読することになってるんだ。師匠の利権に預かりたいという手紙は数多くあるが、そういう手紙は無かったなぁ……」
勇太:「先生が直接聞いて、マリアさんに教えていないという可能性は?」
マリア:「無きにしもあらずだけど、そういう場合は師匠が率先して動くからね。でも今は、大師匠様とのパーティーに耽ってる。だから違うと思う」
勇太:「そうですか。つまりそれは『無断活動』ということになりますよね?」
マリア:「一体誰なんだ?」
勇太:「それが分からないから、きっと鈴木君は僕に電話して来たんだと思いますよ?」
マリア:「あの鈴木という男、私のことは諦めて、今度はエレーナに乗り換えただろ?」
勇太:「そうですね」
マリア:「エレーナも狡賢いヤツだから、鈴木を上手く利用してるかもしれないな」
勇太:「鈴木君、可哀想だな」
マリア:「まあ、魔法使いに惚れても大変なだけってことさ。勇太みたいに魔道師にでもならなきゃ」
マリアはニッと笑った。
マリア:「師匠の計画通りだったかもしれないね」
勇太:「それでもいいんです。僕はマリアさんと一緒になれれば」
マリア:「うちの師匠はまだその辺優しいから、それで良かったけどね。他の師匠達だったら、きっと利用されるだけされて、あとはポイかもしれないよ」
勇太:「怖っ!」
マリア:「同じ女の私でも、『そこまでやるか?』というくらいエグいやり方をするヤツもいるからね。勇太も気をつけなよ」
勇太:「同じ魔道師なのに?」
マリア:「同じ魔女の私も裏切り者扱いされて、イジメられたんだから」
勇太:「そ、それもそうか……。それで、どうします?『飴玉婆さん』の件」
マリア:「大師匠様とのパーティーはまだもう少し続くから、私達でやるか。どうせエレーナも報酬目当てで動くだろうから」
勇太:「分かりました」
マリア:「で、『飴玉婆さん』が出たのはどこ?」
勇太:「えーと……多分、東京中央学園かと」
マリア:「何それ?」
勇太:「鈴木君、東京中央学園に現れた『飴玉婆さん』の話について僕に聞いてきましたから」
マリア:「キャサリン師に聞けば良かったのに。本人なんだから」
勇太:「きっとその辺、鈴木君は知らなかったんでしょうね。もう被害者も出てしまったみたいですから、急いで探しませんと」
マリア:「今なんて言った?」
勇太:「さっきのニュースで、飴玉婆さんに目玉を繰り抜かれてしまった男子高校生がいたらしいんですよ。きっと、東京中央学園のコです。第二の被害者が出る前に……」
マリア:「あのさ、もしその2代目飴玉婆さんがキャサリン師のやり方を踏襲しているのだとしたら、被害者を出した後は2度と出没しないぞ?」
勇太:「あ゛っ……!」
盲点であった。
マリア:「で、次いつどこの高校に現れるか分からないんでしょ?」
勇太:「そ、そうですねぇ……」
もしかしたら、来年度になるのかもしれない。
勇太:「ダンテ門内の誰かですかね?」
マリア:「キャサリン師のマネなんて、誰でもできるわけじゃないからな。一応、あの学校に行ってみるか」
勇太:「そうですね。そうしましょう」