報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「エレーナの気遣い」

2019-03-26 19:15:31 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月13日10:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 鈴木:「お世話になりました」
 オーナー:「鈴木さん、いつもありがとうございます」

 鈴木はチェックアウトの為、フロントに立ち寄った。
 部屋の鍵をオーナーに渡す。

 鈴木:「エレーナは部屋にいないんですか?」
 オーナー:「いますよ。鈴木さんが帰られたことは、ちゃんとお伝えしておきます」
 鈴木:「直接言いたかったのになぁ……」
 オーナー:「申し訳無いですね。……あ、これからどこかへお出かけですか?」
 鈴木:「稲生先輩が帰省されたみたいなんで、ちょっと遊びに行ってみようかなと。マリアさんもいらっしゃるみたいですしねぇ……」

 すると、フロントの電話が鳴り出した。

 オーナー:「あ、少々お待ちください。……はい、フロント。……ああ、鈴木さんならいらっしゃるよ」
 鈴木:「!」
 オーナー:「……そうか、分かった。だがキミ、今日は夜勤だぞ?……それならいいが。……ああ、分かった。伝えておく」

 オーナーは電話を切った。

 オーナー:「鈴木さん、エレーナがここで待つようにとのことです。お時間ございますか?」
 鈴木:「無職をナメちゃいけませんよ〜」

 宿泊者カードに記載する際、職業欄に堂々と『無職』と書く鈴木。

 鈴木:「但し、もう少しで無職じゃなくなりますけどね」
 オーナー:「それはつまり……」

 するとその時、エレベーターのドアが開いた。

 エレーナ:「鈴木っ!」
 鈴木:「エレーナ」
 エレーナ:「稲生氏の家に行っちゃダメ!」
 鈴木:「えっ、どうして?」
 エレーナ:「どうしても!」
 鈴木:「俺が同門の先輩の所へ行くのは勝手だろ?」
 エレーナ:「ダンテ一門では許されないこともあるの!」
 鈴木:「俺は日蓮正宗のことを言ってるんだよ」
 エレーナ:「アンタがヒマで稲生氏の家に行くというのなら、アタシが付き合うから」
 鈴木:「ほんと!?」
 エレーナ:「その代わり、デート費用は全部アンタ持ちな?」
 鈴木:「オケっ!」
 エレーナ:「オーナー、マルファ先生達は?」
 オーナー:「ああ。もうチェックアウトされたよ。ご要望があったので、タクシーを呼んで差し上げた」
 エレーナ:「分かりました」
 鈴木:「なになに?」
 エレーナ:「昨夜、シンシアがいただろ?」
 鈴木:「ああ、あの金髪ポニテのコ……。顔色すっごい悪かったけど、大丈夫か?」
 エレーナ:「顔色のいい魔女なんていないから」
 鈴木:「え、でもエレーナは顔色いいよ?」
 エレーナ:「アタシは魔女じゃなくて魔道師!」
 鈴木:「違いがよく分からん。同じ魔法使いだろう?」
 エレーナ:「そうなんだけど……。とにかく、稲生氏の家に今日は出入り禁止だ。どこへ行く?」
 鈴木:「やっぱアキバかなぁ……」
 エレーナ:「よし。一緒に行こう。じゃあ、行ってきます」
 オーナー:「ああ。気を付けて。時間までには戻って来るように」
 エレーナ:「了解です」

 エレーナと鈴木はホテルを出た。

 鈴木:「どういうことなんだよ?稲生先輩の家に行っちゃダメって……」
 エレーナ:「私とアンタがこうして一緒に出掛けようする時、稲生氏が来たらどう思う?」
 鈴木:「デートの邪魔……あ、そういうことか!」
 エレーナ:「帰省というのはプライベートなんだから、向こうも2人っきりにしてやろうぜ」
 鈴木:「了解了解、俺達はアキバに行こう。アキバで2人と会ったりしてな?」
 エレーナ:「どうだかねぇ……」

 エレーナは今朝、既に予知していた。

 エレーナ:(今頃奴らは、羽田空港からバスに乗って首都高の上だな。稲生氏の家の最寄り駅で降りて、そこから家に向かうと……)
 鈴木:「都営新宿線で岩本町駅まで行けば、アキバは近いぞ」
 エレーナ:「いつも通りだな」

 エレーナは頷いた。

 エレーナ:(今日は平日。稲生氏の両親は共働きで、平日は夕方まで誰も家にいない。ということは、だ。『女の味』を知った稲生氏と、『男の美味さ』を知ったマリアンナがそういう状況でやることと言ったら……)
 鈴木:「明日はホワイトデーだ。もし良かったら、今日前倒しでプレゼントしてもいいぞ?」
 エレーナ:「さすが鈴木!太っ腹だぜぇ〜!それじゃ、チャイニーズもビックリの爆買いをさせてもらおうかな?」
 鈴木:「あ、ゴメン。プレゼントする内容はもう決めてあるんだ。デザインとかはエレーナが決めて」
 エレーナ:「は?」
 鈴木:「これからアキバのランジェリーショップに行くから。是非一度、カップルとして入ってみたかったんだ
 エレーナ:「あるんかい!」
 鈴木:「コスプレ衣装の一環としてね」
 エレーナ:「その思考はキモいけど、ま、こっちは金出してもらうんだからな」
 鈴木:「そういうことだよ。じゃ、決まりだな。こんなカワイイ金髪ギャル魔女とデートできて功徳〜〜〜〜!!」
 エレーナ:「ちょっと待て。真ん中の『ギャル』は余計だぜ?ああ?」
 鈴木:「エレーナ、既に魔女のコスプレしてるから、コスプレショップにも堂々と入って行けるぞー」
 エレーナ:「コスプレじゃなくて、本物だっつの!」

 尚、さすがにとんがり帽子は某教会の魔女狩り軍団に見つけてもらうも同然なので、それはさすがに被っていない。
 代わりに中折れ帽子を被っている。

 エレーナ:「ああ、そうそう。私、今日は午後から仕事だから、昼飯食ったら帰らせてもらうよ」
 鈴木:「分かったよ。稲生先輩の家に行くのは、その後で」
 エレーナ:「オマエなぁ……」

 エレーナは呆れたが……。

 エレーナ:(ま、お楽しみは昼過ぎまでにしておくんだな。後で鈴木が向かうことくらい、サービスで稲生氏に教えてやるか)

 マリアに教える気は無いエレーナだった。

 鈴木:「魔女達も春休みとかあるの?」
 エレーナ:「無いけど、今日は偉い先生が来日されてるんだ。だから皆、日本に集まって来てるんだよ」
 鈴木:「そうなのか。それで東京に?」
 エレーナ:「いくら偉い先生っつっても、来日には飛行機で来られる。それが羽田空港に着くってんで、それで稲生氏達は出迎えの為に上京したってことさ」
 鈴木:「そうなのか」
 エレーナ:「まあ、その先生も日帰りってことはなくてだな、何日間か滞在されるから、稲生氏達にとってはいい帰省の口実だぜ」
 鈴木:「なるほどな。エレーナはいいのか?」
 エレーナ:「私は下っ端だから、そんな偉い先生の元に馳せ参じる権利すら無いぜ」

 本当は任意であるのだが、それは内緒である。

 エレーナ:「まあ、あんたの宗派で言えば、管長猊下様が来られるくらいの勢いだぜ」
 鈴木:「それは分かりやすい!」

 本当に分かりやすい。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの修了式」

2019-03-26 10:09:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月25日07:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 それにしても……春は眠いねぇ……。
 もう起きる時間なのに、この誘惑はたまりませんな。
 1000年以上も生きている、とある大魔道師さんの気持ちが分かるというもの。

 愛原:「ん?」

 そこへ私のベッドの中にそっと入って来る者がいた。

 愛原:「な、何だ?」

 私が掛布団を取ると、そこにはバスタオルだけ巻いているリサがいた。

 愛原:「うわっ、何だリサ!?」
 リサ:「愛原さんが気持ち良さそうに寝てるから、添い寝」

 リサはさも当然であるかのように言った。
 全国のロリコンから羨ましがられる光景ですな。
 しかし、私にはそのケは無いので……。

 高橋:「くぉらっ!!」

 と、そこへ高橋がドアを思いっきりこじ開けて飛び込んで来た。

 高橋:「リサっ!てめっ、そこは俺のポジだぞ!あぁっ!?」
 愛原:「アホか!」

 私は急いで飛び起きた。

 愛原:「俺専用だ!お前らにはやらん!」
 リサ:「えー」
 高橋:「えー」

 思いっ切り残念そうな顔をするリサと高橋。

 愛原:「リサは早く服を着ろ!高橋、オマエもな!」
 リサ:「はーい」
 高橋:「はーい」

 高橋は一応、下にボクサーパンツは穿いている。
 顔はイケメンで肉体美もそれだけで落ちる女も多いだろうに、LGBTのGとはな。
 非常に残念だ。

 愛原:「全く……」

 私が洗面所に行って顔を洗ったりヒゲを剃ったりしていると、鏡には白いブラウスだけ着たリサがトイレに行くのが見えた。
 このくらいの歳の女の子って、家族にすら裸体を見せたくなくなると思うのだが、リサだけは別なのか。
 BOWに改造されたことで、その辺の思考が人間とズレてしまっていると思われる。
 BOWが人間に襲って来る時って、もう大体が人間の原型が無くなっている状態だからな。

 高橋:「先生!朝飯できましたよ!」
 愛原:「おーう!」

 高橋は家事全般のスキルも最高。
 実に勿体無い。

 リサ:「愛原さん、今日は修了式」

 学校の制服に着替えたリサが、私の向かいの席に座るとそう言った。

 愛原:「おっ、もうそんな時期か」

 私はついカレンダーを見た。
 そして納得して焼き鮭に箸をつける。

 高橋:「卒業式はもうとっくに終わってる時期なんですよ。いやあ、懐かしい」
 愛原:「リアル尾崎豊のようなことをしたんだろ?」
 高橋:「盗んだバイクで走ったりしてませんよ!」
 愛原:「一応、歌詞は知ってるんかい」
 高橋:「走り屋目指してた俺は、専ら車です」
 愛原:「中卒で車かい!そりゃ少年院送り込まれるわ!」
 高橋:「ありがとうございます」
 愛原:「いや、褒めてねーし!お前は改造バイクを乗り回してたってイメージもあるんだがな」
 高橋:「そういう時期もありましたよ」
 愛原:「あ、やっぱり」
 高橋:「でもバイクだと、できること限られてるんで」
 愛原:「ん?」
 高橋:「バイク飛ばしながらタバコもジュースも飲めないんスよ」
 愛原:「そりゃそうだろ」
 高橋:「オマケに道具(凶器)も積めないから、持てるヤツは限られてるし。そういった意味では車の方がラクでしたね」
 愛原:「案外、実用主義な考えをした暴走族だったんだな」
 高橋:「ありがとうございます」
 愛原:「いや、だから褒めてねーから」
 高橋:「鉄パイプだのバールのようなものだの、結構重いんスよ」
 愛原:「だろうな」
 高橋:「自分ではそれを持てても、いざバイクに積もうとすると、重くて重心が変になっちゃうんです」
 愛原:「ほお……?」

 私はバイクの免許を持っていないから、あまりイメージは湧かないが……。

 高橋:「それでバランス崩してガードレールに突っ込んだバカがいましてね。何回か花を供えに行ったこともありましたよ。で、やっぱバイクより車だなぁとそん時思いました」
 愛原:「お前は尾崎豊よりもチェッカーズの方かな」
 高橋:「ありがとうございます」
 愛原:「チェッカーズで意味分かったのかよw」

 私はリサの方を向いた。

 愛原:「今日が修了式ってことは、昼頃には帰って来るってことか?」
 リサ:「そう」

 リサは大きく頷いた。

 愛原:「お昼はどうしようかな?」
 高橋:「今更弁当は作れませんよ?」
 リサ:「学校終わったら、サイトーの家に遊びに行く。サイトーが御馳走してくれるって」
 愛原:「おっ、そうかそうか。それは良かった。ん?それは埼玉の方?」
 リサ:「こっちの方」
 愛原:「じゃあ、徒歩圏内だな」
 リサ:「埼玉の方も遊びに来てと言ってたけど」
 愛原:「それはまた後日にすればいいさ。どうせ、修了式が終わったら春休みなんだからな」
 高橋:「俺はまたバイクで走りたくなって来ましたねぇ……」
 愛原:「旧車會にでも入ってんの?」
 高橋:「いやいや。今は走り屋のサークルですよ」

 でもコイツの場合、“イニシャルD”みたいなのは想像しない方がいいんだろうな。

[同日09:00.天候:晴 同地区 愛原学探偵事務所]

 高野:「へぇ。リサちゃん、今日が修了式ですか」
 愛原:「そうなんだ。来月から2年生だよ」
 高橋:「フフ……俺が中2の時は……」
 愛原:「オマエのリアル中2は、中二病がリアルになったって話だろ」
 高橋:「何で御存知なんですか!?」
 愛原:「探偵ナメんな!」
 高橋:「すいませんでした!さすがは先生!名探偵っス!」
 高野:(コイツの場合、大体想像つくし、その想像は大体当たりなだけなんだけどね)

 高野君はそのように想像したらしい。
 その上で……。

 高野:「でも2年生になってしばらくしたら、受験のことを気にしなくちゃならなくなりますね」
 愛原:「いや、その心配は無いよ。普段の成績さえ良ければ」
 高野:「と、言いますと?」
 愛原:「いや、東京中央学園は中高一貫教育だから、一定の成績さえ確保できていれば、自動で高等部に上がれるんだ。ま、大学は受験しないといけないけどね。あと、高等部は校舎が違う……くらいかな」

 制服もブレザーがシングルからダブルに変わるんだっけ。
 リサは旧アンブレラの研究所に押し込められていた時、その仲間と共にセーラー服とよく似たデザインの服を『制服』として着せられていた。
 だからリサは、そのデザインの服が嫌いであった。
 もし東京中央学園の女子制服がセーラー服であったら、リサは通うのを嫌がったかもしれない。
コメント (6)
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