報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「羽田空港の朝」

2019-03-22 19:15:48 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月13日06:00.天候:晴 東京都大田区羽田空港 ザ・ロイヤルパークホテル東京羽田]

 イリーナ:「さあさあ。朝もしっかり食べて、ダンテ先生をお迎えするのよ」

 昨夜夕食を取ったレストランで朝食を取るイリーナ組。
 バイキング形式である。

 稲生:「マリアさん、何か取って来ましょうか?」
 マリア:「いい。自分で行く」

 イリーナがヒョイヒョイと皿に料理を山盛りにする中、稲生とマリアも銘々に料理を取って行く。
 マリアが洋食中心なのに対し、稲生は和食の割合が多い。

 稲生:「先生はすぐに起きたの?」
 マリア:「むしろ私が起こされた」
 稲生:「えっ!?」
 マリア:「『今日が楽しみだから、ちゃんと起きられた』って言ってたけど……」
 稲生:「ま、気持ちは分かるけど……って、そんなに楽しいパーティーなんですか」
 マリア:「簡単な話、昨夜の私達みたいなことを師匠達もするってこと」
 稲生:「ええっ!?」
 マリア:「ま、驚くのも無理は無い」

 マリアはチラッと、先に席に着いて食べているイリーナを見た。
 イリーナは上機嫌そうに目を細めながら、

 イリーナ:「んー!このオムレツとベーコン美味しい!」

 なんてやっている。

 マリア:「後で説明するよ」
 稲生:「た、大変失礼な話、年齢的に……」
 マリア:「勇太はまだ見習で、まだまだ考えが普通の人間に近いからね、無理も無い。てか、私もまだそういう気持ちがあって、未だに信じられない」
 稲生:「マリアさんは見たことすら無いわけですか」
 マリア:「無い。エレーナのアホは水晶球で実況してるよ」
 稲生:「ユーチューバーか!……も、もしかして昨夜のこと……エレーナに……」
 マリア:「最初そうして来ようとしたからブロックしたけど、あいつのことだから何度もしようとしたはずだよ」
 稲生:「うあー……」
 マリア:「さっき師匠が、何も心配しなくていいと言ってたから大丈夫だと思うけど……」
 稲生:「先生が?先生も御存知なんですか?」
 マリア:「師匠に隠し事は無理だよ」
 稲生:「そ、それもそうか……」
 マリア:「別に私があなたとセックスしようが、それだけで怒られたりはしないよ。ダンテ門流綱領『仲良き事は美しき哉』の一環と見なされるからね」
 稲生:「そ、そうですか」
 マリア:「でも他の魔女達の中にはそう思わない奴らもいるから気をつけないと……」

 そう言いながらマリアは、イリーナが陣取っているテーブルへ向かった。

 イリーナ:「もっと食べないと、マリアは大きくならないよ」
 マリア:「太るから結構です」
 稲生:(リリィから『マリアンナ先輩は、本来ならもっと肉付きの良い人です』って言われたのを気にしてるのかな?)
 イリーナ:「あ、そうそう、勇太君」
 稲生:「な、何でしょう?」
 イリーナ:「昨夜はマリアとお楽しみだったみたいだけど……」
 稲生:「!」
 イリーナ:「マリアが幸せなら別にいいからね。但し、正式に婚約でもしない限りは避妊すること。マリアの肉体はまだ若いんだから、アタシと違って妊娠できるんだからね」
 稲生:「わ、分かっております!」

 稲生は大きく頷いた。

 稲生:「あ、あの……先生」
 イリーナ:「なぁに?」
 稲生:「先生はこれから大師匠様をお迎えして、パーティー会場に向かわれると伺っています」
 イリーナ:「そうね。会場は基本的に教えないんだけど、アタシはそんなの気にしないから、知りたかったら教えてあげるよ?」
 稲生:「あ、いえ、そういうことじゃなく……」
 イリーナ:「ん?」
 稲生:「パーティーの内容の中に、昨夜の僕とマリアさんの……ああいうのがあると聞いたんですけど……」
 イリーナ:「ああ、なるほどね。アナタ達には刺激が強いと思って黙ってたんだけど、昨夜のことがあって、それが逆にマリアには良い治療になったみたいだから教えてあげようかな」

 イリーナは周りを見渡した。

 イリーナ:「もちろん、あまり大きな声で言えるものじゃないよ。アタシ達はもう1000年以上生きてる。ダンテ先生なんて、私ですら正確な年齢が分からないくらい。さすがに恐竜の話はしてくれなかったから、そんな時代から生きていたわけではないみたいだけどね」
 稲生:(日蓮大聖人御在世の時には、既にイリーナ先生はこの世にいた。だけど、その時代から生きていた魔道師は誰も日本に見向きもしなかったから、大聖人様のことは誰も知らない……)

 釈尊の時代にも他の魔道師がいたと思われるが、釈尊の話すら誰もしない。
 そして、キリストの話もだ。

 イリーナ:「それくらい生きると、悲しみも楽しみも無くなってしまうの。涙なんて、とっくに枯れ果てたくらいよ。でもね、こんな私達にもリアルタイムで楽しめる方法が見つかったの。私達、こうして魔法とはいえ、肉体を若返らせることができるでしょう?最初は魔法で肉体だけ若返らせるのが精一杯だったの」
 稲生:(それで他にやっていることはお婆ちゃんだったわけか……)
 イリーナ:「ポーリンが試しに新しく作った精力剤とかを使ってみたら、これが当たり。こりゃ気持ちも若返って、色んな意味でのパーティーが楽しめることが分かったのよ」
 マリア:「ヤバい薬じゃないですよね?」
 イリーナ:「マリア。魔道師が作る薬で、『ヤバくない』ヤツなんてあると思うの?」
 マリア:「いや、そりゃそうですけど……」
 イリーナ:「大丈夫。ダンテ先生も使っているくらいだから」
 マリア:「楽しむこと自体はいいと思います」
 イリーナ:「おっ、分かってくれる?もちろん、弟子のアナタ達に迷惑は掛けないからね?」
 マリア:「それはいいんです。だから師匠、もう少し私達の面倒を看てください」
 イリーナ:「ん?どういうこと?」

 マリアの言わんとしていること、稲生が先に気づいた。

 稲生:「先生。1000年以上も生きられて、生きるのに飽きたということは理解できます。ですが、楽しみができた以上、その体の耐用年数が過ぎたら死ぬのはやめてください。僕達の成長を見ていてください」
 イリーナ:「ああ、そういうこと。そうだねぇ……。あなた達の仲も進展したみたいだし、こりゃ『法統相続』まで何だか見てみたくなったねぇ……。あなた達がそれぞれ自分の組を立ち上げて、弟子を取る所までね。でも、そこまで欲張れるかねぇ……」

 イリーナは微笑を浮かべながら考え込む素振りをした。

 イリーナ:「ま、いずれにせよ、もう少し指導はしていかなきゃとは思うね。特に勇太君はまだ見習なんだから、最低でもあなたをマスターに認定されるまでは指導しないと、ダンテ先生に怒られちゃう」

 弟子が一人前になっても、まだ師匠の元から独立できるわけではない。
 それは一人前に成り立ての状態で、弟子は取れないからだ。
 少なくとも、イリーナが魔道師を辞めて冥界に赴くことになるのは、稲生達が独立できるまでになってからのようだ。
コメント
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