報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「既知の道、バスの旅」

2019-03-24 20:18:28 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月13日08:45.天候:晴 東京都大田区羽田空港・国際線ターミナル→エアポートリムジン車内]

 係員:「8時50分発、大宮方面行きの到着です」

 発車の5分くらい前になると、バスが入線してきた。
 オレンジ色の塗装が目を惹くエアポートリムジン(東京空港交通)である。
 バスが停車すると、入口の前に女性係員が立つ。
 ここで乗車券のモギリをするのだ。
 別の係員が荷物室のドアを開けて、スーツケースなどを入れている。
 ドア横の係員にモギリをしてもらうと、稲生とマリアは車内に入った。
 比較的短距離を走るバスのせいか、車内は4列シート。
 しかし後部にはトイレがあり、Wi-Fiやケータイの充電ポートも付いている。
 “バスターミナルなブログ”様でも取り上げられているが、あいにくと大宮方面の写真が無いので、当ブログへの転載は見送らせて頂く。

 稲生:「先生達、どこへ行くんだろうね?」
 マリア:「私が思うに、海沿いのリゾート地じゃないかな」
 稲生:「海沿い。まだ海開きしていないのに?」
 マリア:「だからこそなんだろう。師匠達の手に掛かれば、冷たい海でも何のそのだ」
 稲生:「海に入るの?寒中水泳?」
 マリア:「違う違う」

 マリアは手を振ってガン否定した。

 稲生:「え?え?え?」

 国際線ターミナルから乗車する利用者は少ない。
 ほんの7〜8人ほど乗っただけだった。
 もちろんその中に稲生達も含まれている。
 発車前に係員が乗り込んで、ボードを掲げながら車内を1往復した。
 日本語はもちろん、数ヶ国語でシートベルトを締めるよう呼びかけるものである。
 係員が降りると、バスが発車した。
 後は国内線ターミナルの2ヶ所に止まって、それから大宮方面まで直行だ。
 え?貨物ターミナル?そんな所に止まる必要があるのかね?

 マリア:「勇太のセックス動画を師匠が覗き見して、『水中セックスも面白そうだねぇ……』とか言ってたから」
 稲生:「ブッ!どうやって!?僕、ネットでしか観ませんよ!?」
 マリア:「うちの屋敷ででしょ?ネット回線、どうやって繋いでる?」
 稲生:「そりゃWi-Fi接続ですよ」
 マリア:「そのWi-Fiルーターを用意したのは?」
 稲生:「! 先生だったーっ!」
 マリア:「勇太の信仰する宗祖とやらより200年以上も年上の師匠が、何でそんな近代的な物を持って来たか理解してなかっただろ?」
 稲生:「もしかして、僕のネット利用履歴は……」
 マリア:「師匠にダダ漏れ」
 稲生:

 稲生は顔を真っ青にしたかと思うと、今度は顔を真っ赤にして頭を抱えてしまった。

 稲生:「エロ動画観てたのもバレてたか……」
 マリア:「師匠はニコニコして監視してたけどね」
 稲生:「に、ニコニコ?」
 マリア:「『健全な男子を入門させることができたわ。功徳〜〜〜〜!!』とか何とか言ってた」
 稲生:「どこかの河童さんみたいなこと言って……」
 マリア:「ねぇ。とにかく、勇太がポルノ観るくらいは想定内だったみたいだよ」
 稲生:「でも、マリアとしては……」
 マリア:「うん。フツーにキモいと思った」
 稲生:「ですよね……」orz

 バスの中でorzの姿勢になり掛けた稲生、しかしすぐパッと顔を上げた。

 稲生:「ん?てことは、マリアも見たの?」
 マリア:「あっ……!」

 マリアはしまったといった顔になった。

 マリア:「し、師匠が水晶球で何見てたのか気になったものだから、つい……」
 稲生:「僕、バスから飛び降りたくなった」

 稲生、バスの窓を開ける。

 マリア:「勇太、早まっちゃダメ!」

 マリア、バスの窓をピシャッと閉めた。
 比較的短距離を走るバスの為、窓を開けることができる。

 マリア:「相変わらず、ハイスクールの女が好きなんだな」

 マリアはローブを脱いだ。
 その下はブレザーとプリーツスカートという出で立ちである。
 18歳で魔道師になり、基本的にそこで肉体の成長が止まったマリアは十分この服装が似合っていた。
 もちろんこんな恰好をしているのは、勇太が好きだからである。

 稲生:「よく似合ってるよ」
 マリア:「Thanks.ま、私としても服選びが楽でいいんだけどね」
 稲生:「でも、魔道師って基本的に服のスタイル変えないよね」
 マリア:「それな!」
 稲生:「何でだろう?マリアさんの場合は、僕の為にってのもあるけど……」
 マリア:「悪魔との契約絡みだろうね。アナスタシア組なんか黒で統一されてるだろう?黒い服のデザインなんて、どれも似たり寄ったりなわけだし……」
 稲生:「更にドレスコードまで決められてるんじゃ、好きな私服も着れないだろうねぇ……」
 マリア:「あと、あれだ」
 稲生:「なに?」
 マリア:「ほとんど女しかいないような所だから、そんなこと気にしない」
 稲生:「た、確かに。共学校より女子校の方が服装の乱れが激しいって聞いたことがある」

 文化の違いもあるのだろうが、プールで最初は水着を着ていたのに、途中からそれも脱いで真っ裸で泳ぎ始めることとか……。

 マリア:「つまりそういうこと。魔女達は勇太を警戒して近づかないけど、魔道師達は勇太を気にして服装キチンとするようになったからね」
 稲生:「そうなんですか?」
 マリア:「エレーナなんかいい例だよ。あのアホ、『ホウキ乗りは元からオーバーパンツを穿くものだ』って豪語してたけど……」
 稲生:「ああ、言ってたね」
 マリア:「私が他のホウキ乗りに聞いたら、『稲生勇太が入門してからだよ』って言われた」
 稲生:「僕は謝りに行った方がいいんだろうか……?」
 マリア:「いや、いいよ。本当はそういうものだから。それまでのホウキ乗りのファッションがだらしなかっただけ……」
 稲生:「いや、鈴木君にw」
 マリア:「そっちかい!」

[同日10:18.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区吉敷町 JRさいたま新都心駅西口]

 バスは激しい渋滞に巻き込まれることもなく、首都高速を軽やかに走行した。
 因みに首都高で渋滞に巻き込まれたり、迷子になったりしたらエアポートリムジンバスの後ろを付いて行けば良いという噂がある。
 真偽のほどは【お察しください】。

 運転手:「さいたま新都心駅西口です。ご乗車ありがとうございました」

 バスはさいたま新都心駅西口1階のバスプールに到着した。
 運転手が真っ先に降りて、荷物室のハッチを開けている。
 さすがにここには係員はいないので、乗客が自分で荷物を降ろさなくてはならない。

 稲生:「えーと……マリアさんのがこれで、僕のがこれと……」
 マリア:「Thanks.」
 稲生:「マリアさんのバッグの方が大きいですね」
 マリア:「そりゃ、私の方が着替えとか多いし」
 稲生:「あっ、そうか。それもそうですね。……あ、ちょうど乗り換えのバスが来ましたから、行きましょう」

 停車中のエアポートリムジンバスを追い抜いて、地元の路線バスがその先のバス停に停車した。
 そこへ向かう。
 しかし、稲生は知っていた。
 マリアのバッグが、大きさの割には、実は中身は案外スカスカなのを。
 それは首都圏での買い物の多さに期待しているからなのを……。
コメント (11)
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