[3月13日01:15.天候:晴 東京都大田区羽田空港 ザ・ロイヤルパークホテル東京羽田]
クラリス:「!」
今は人間形態をしているマリア自作のメイド人形、クラリスが主人の気配を感じ取って足早にドアに向かった。
そして、それが本当に主人だと確認できるとドアを開けた。
マリア:「た……ただいま……」
クラリス:お帰りなさいませ」
マリアはヒョコヒョコと足腰がおぼつかない足取りで部屋に入った。
それは何もシンシアのように、酒が弱い癖に飲み過ぎからではない。
マリア:「はぁぁ……」
そして、空いているベッドに飛び込むようにして横になった。
イリーナ:「ん、どうした?こんな夜中に帰って来るなんて……」
マリア:「すいませんでした……」
マリアは顔を両手で覆って答えた。
イリーナ:「別に、夜遊びを咎めているわけではないよ。あなたも、もうマスターなんだから。アタシが言いたいのは、今まで勇太君の部屋にいたんでしょ?そのまま泊まっていっても、アタシもダンテ先生も咎めないってこと」
マリア:「いえ……。寝坊癖の師匠に対してモーニングコールをするのも、弟子の勤めですから」
イリーナ:「言ってくれるねぇ……。で、どうだったの?勇太君に抱かれて一緒に寝てみてどうだった?」
マリア:「…………」
マリアはうつ伏せになると枕に顔を埋めた。
イリーナ:「『狼に襲われる夢』を見たかい?」
マリア:「……少しだけ」
イリーナ:「辛かったかい?」
マリア:「……辛くはなかったです。勇太が……優しかったから……」
イリーナ:「すぐに『狼』は消えた?」
マリア:「消えました……」
イリーナ:「そう。なら良かった。きっと勇太君が優しい限り、もう『狼』が現れることはないでしょう。……幸せを感じたかい?」
マリア:「感じました……」
イリーナ:「なら、もう少し喜んでもいいんだよ。アタシのことは気にしなくていいからさ」
マリア:「…………」
イリーナ:「まだ照れる感情があるあなたは羨ましいねぇ……。服を着て勇太君の部屋から出て来ただけでしょ?早いとこお風呂入って寝なさい」
マリア:「はい……」
マリアはそう答えると、ようやく力が入るようになった足腰でバスルームに向かった。
だがそこに入る前に振り向いた。
マリア:「私は……魔女でした。でもこれで……私は……」
イリーナ:「感情としては普通の女に戻る。これは快挙だよ」
マリアはすぐにイリーナから顔を背けたが、そこには一瞬、笑顔が浮かんでいたようだった。
イリーナ:(やれやれ……。いつまでも進展しないから少し心配になっていたけど、杞憂に終わったねぇ……)
その時、イリーナは師匠ダンテの言葉を思い出した。
イリーナ:(『親は無くとも子は育つ。新弟子が本当に若い者達であるのならば、自由にやらせてみるのも良い』……先生の仰る通りでしたわ)
バスルームからお湯の出て来る音がする。
マリア:「すいません。少しうるさくて……」
イリーナ:「いいよ。アタシゃ寝る時は寝るから。気にせずお風呂に入って寝なさい」
マリア:「はい」
マリアは着た服を再び脱いで、部屋備え付けのナイトウェアと替えの下着を用意した。
そしてバスタブのお湯が一杯になったことを確認して、バスルームに入っていった。
イリーナ:「フム」
イリーナは枕元に置いた水晶球を見ると、それでどこかと通信を始めた。
それは大師匠ダンテではなく……。
イリーナ:「エレーナ。盗撮の罪をお金で払う覚悟はできているのかしら?」
エレーナ:「ななな、何のことですか!?」
イリーナ:「うちの弟子達の『愛の営み』を盗撮してたでしょう?私には分かってるのよ?」
エレーナ:「わ、私はずっと寝ていましたから……」
イリーナ:「そう。ところで今日、何の日だか分かるわよね?」
エレーナ:「大師匠様が御来日される日です。それに備えて、マルファ先生がうちのホテルにお泊りに……」
イリーナ:「ああ、あの自由人。アンタの所に泊まってるのか。まあ、それはいいのよ。ポーリンも魔界から来るわけだからね?」
エレーナはポーリン組の所属。
つまり、ポーリンの直弟子というわけである。
実はポーリン組は魔界を拠点としており、他の魔女達からも呆れられるほどしょうもない理由で対立していたイリーナとダンテからの圧が掛かった為に仕方なく和解した。
その為、エレーナが人間界に残る理由は無くなっており、魔界に来るよう勧告していた。
ところが人間界の暮らしと魔女の宅急便、そしてホテル勤務が面白い為にそれを無視する有り様であった。
一応、イリーナや人間界を拠点にしている他の大魔道師が宥めている状態なのだが……。
イリーナ:「ポーリンに今回のこと話すからね?ポーリンも大魔道師だから、あなたのウソをすぐに見破るわ。そうなったらあなた、どうなるかしらね?」
エレーナ:「すす、すいませんでしたぁぁぁっ!」
イリーナ:「ポーリンも怒らせると怖いからねぇ……。録画した媒体、全て私に寄越すのよ?誤魔化したってすぐに分かるんだからね?分かった?」
エレーナ:「わ、分かりました……」
イリーナ:「よろしい」
イリーナは水晶球の通信を切った。
因みに通信中、イリーナはいつもは細めている目を開いていた。
これを他の魔道師達は『イリーナの御開眼』と呼んでいる。
御開眼中はダンテ以外、誰もイリーナに逆らってはいけないという不文律があるほどだという。
イリーナ:(あとは『女の嫉妬の炎』の火消しか。ほんと、魔女の世界はメンド臭いねぇ……)
幸いイリーナの契約悪魔は、キリスト教は七つの大罪の悪魔の1つである“嫉妬の悪魔”レヴィアタン。
嫉妬を司る悪魔であるからして、当然イリーナの依頼で『嫉妬の炎』の火消しはお手の物である。
もちろん、逆に点火や放火も大得意であるのだが。
マリア:「うふふふふ……!うふふふふふふふふふふふ!」
マリアはバスタブのお湯に浸かりながら、『女の悦び』に笑っていた。
クラリス:「!」
今は人間形態をしているマリア自作のメイド人形、クラリスが主人の気配を感じ取って足早にドアに向かった。
そして、それが本当に主人だと確認できるとドアを開けた。
マリア:「た……ただいま……」
クラリス:お帰りなさいませ」
マリアはヒョコヒョコと足腰がおぼつかない足取りで部屋に入った。
それは何もシンシアのように、酒が弱い癖に飲み過ぎからではない。
マリア:「はぁぁ……」
そして、空いているベッドに飛び込むようにして横になった。
イリーナ:「ん、どうした?こんな夜中に帰って来るなんて……」
マリア:「すいませんでした……」
マリアは顔を両手で覆って答えた。
イリーナ:「別に、夜遊びを咎めているわけではないよ。あなたも、もうマスターなんだから。アタシが言いたいのは、今まで勇太君の部屋にいたんでしょ?そのまま泊まっていっても、アタシもダンテ先生も咎めないってこと」
マリア:「いえ……。寝坊癖の師匠に対してモーニングコールをするのも、弟子の勤めですから」
イリーナ:「言ってくれるねぇ……。で、どうだったの?勇太君に抱かれて一緒に寝てみてどうだった?」
マリア:「…………」
マリアはうつ伏せになると枕に顔を埋めた。
イリーナ:「『狼に襲われる夢』を見たかい?」
マリア:「……少しだけ」
イリーナ:「辛かったかい?」
マリア:「……辛くはなかったです。勇太が……優しかったから……」
イリーナ:「すぐに『狼』は消えた?」
マリア:「消えました……」
イリーナ:「そう。なら良かった。きっと勇太君が優しい限り、もう『狼』が現れることはないでしょう。……幸せを感じたかい?」
マリア:「感じました……」
イリーナ:「なら、もう少し喜んでもいいんだよ。アタシのことは気にしなくていいからさ」
マリア:「…………」
イリーナ:「まだ照れる感情があるあなたは羨ましいねぇ……。服を着て勇太君の部屋から出て来ただけでしょ?早いとこお風呂入って寝なさい」
マリア:「はい……」
マリアはそう答えると、ようやく力が入るようになった足腰でバスルームに向かった。
だがそこに入る前に振り向いた。
マリア:「私は……魔女でした。でもこれで……私は……」
イリーナ:「感情としては普通の女に戻る。これは快挙だよ」
マリアはすぐにイリーナから顔を背けたが、そこには一瞬、笑顔が浮かんでいたようだった。
イリーナ:(やれやれ……。いつまでも進展しないから少し心配になっていたけど、杞憂に終わったねぇ……)
その時、イリーナは師匠ダンテの言葉を思い出した。
イリーナ:(『親は無くとも子は育つ。新弟子が本当に若い者達であるのならば、自由にやらせてみるのも良い』……先生の仰る通りでしたわ)
バスルームからお湯の出て来る音がする。
マリア:「すいません。少しうるさくて……」
イリーナ:「いいよ。アタシゃ寝る時は寝るから。気にせずお風呂に入って寝なさい」
マリア:「はい」
マリアは着た服を再び脱いで、部屋備え付けのナイトウェアと替えの下着を用意した。
そしてバスタブのお湯が一杯になったことを確認して、バスルームに入っていった。
イリーナ:「フム」
イリーナは枕元に置いた水晶球を見ると、それでどこかと通信を始めた。
それは大師匠ダンテではなく……。
イリーナ:「エレーナ。盗撮の罪をお金で払う覚悟はできているのかしら?」
エレーナ:「ななな、何のことですか!?」
イリーナ:「うちの弟子達の『愛の営み』を盗撮してたでしょう?私には分かってるのよ?」
エレーナ:「わ、私はずっと寝ていましたから……」
イリーナ:「そう。ところで今日、何の日だか分かるわよね?」
エレーナ:「大師匠様が御来日される日です。それに備えて、マルファ先生がうちのホテルにお泊りに……」
イリーナ:「ああ、あの自由人。アンタの所に泊まってるのか。まあ、それはいいのよ。ポーリンも魔界から来るわけだからね?」
エレーナはポーリン組の所属。
つまり、ポーリンの直弟子というわけである。
実はポーリン組は魔界を拠点としており、
その為、エレーナが人間界に残る理由は無くなっており、魔界に来るよう勧告していた。
ところが人間界の暮らしと魔女の宅急便、そしてホテル勤務が面白い為にそれを無視する有り様であった。
一応、イリーナや人間界を拠点にしている他の大魔道師が宥めている状態なのだが……。
イリーナ:「ポーリンに今回のこと話すからね?ポーリンも大魔道師だから、あなたのウソをすぐに見破るわ。そうなったらあなた、どうなるかしらね?」
エレーナ:「すす、すいませんでしたぁぁぁっ!」
イリーナ:「ポーリンも怒らせると怖いからねぇ……。録画した媒体、全て私に寄越すのよ?誤魔化したってすぐに分かるんだからね?分かった?」
エレーナ:「わ、分かりました……」
イリーナ:「よろしい」
イリーナは水晶球の通信を切った。
因みに通信中、イリーナはいつもは細めている目を開いていた。
これを他の魔道師達は『イリーナの御開眼』と呼んでいる。
御開眼中はダンテ以外、誰もイリーナに逆らってはいけないという不文律があるほどだという。
イリーナ:(あとは『女の嫉妬の炎』の火消しか。ほんと、魔女の世界はメンド臭いねぇ……)
幸いイリーナの契約悪魔は、キリスト教は七つの大罪の悪魔の1つである“嫉妬の悪魔”レヴィアタン。
嫉妬を司る悪魔であるからして、当然イリーナの依頼で『嫉妬の炎』の火消しはお手の物である。
もちろん、逆に点火や放火も大得意であるのだが。
マリア:「うふふふふ……!うふふふふふふふふふふふ!」
マリアはバスタブのお湯に浸かりながら、『女の悦び』に笑っていた。