[3月11日08:00.天候:晴 長野県北部山中 マリアの屋敷]
稲生:「ごちそうさまでした」
稲生達は朝食を終えた。
イリーナ:「いよいよ明日出発だね。先生は色々と準備の為に出掛けて来るから、2人は家の中で自習しててね」
稲生:「分かりました」
マリア:「師匠、私の場合は……」
イリーナ:「おー、確か同期のコ達が遊びに来るんだったね。いいわよ。長い生涯、たまには同年のコ達と楽しむのも悪くはないからね」
マリア:「ありがとうございます」
イリーナ:「ま、今は晴れてるけど、午後からまた雪になるから、今日は家にいた方がいいね」
稲生:「先生の予知ですか?」
イリーナ:「たまには自分の運勢を占ってみるのも面白いものだよ」
イリーナはそう言って食後の紅茶を飲み干すと、一旦は自室に戻っていった。
というか、恐らくそのまま瞬間移動の魔法で出掛けるつもりだろう。
ダンテの移動も商業便だし、そこまで行くのも高速バス。
しかしイリーナが個人的に出掛ける時は魔法と、何だか魔法の使用基準が今1つまだ理解できない稲生だった。
稲生:「マリアさん、先輩方が来られるのは何時頃ですか?」
マリア:「一応、10時に約束している」
2人は大食堂内に設置されている時計を見た。
振り子が左右に揺れる度にカッチコッチ言っている。
英語ではティック・タックか。
マリア:「全員男嫌いだから、勇太には申し訳無いけど2階に避難してて」
稲生:「分かりました。僕も命は惜しいので」
マリア:「帰ったら教えるから」
稲生:「はい」
ダンテ一門の魔女は多くが人間時代、酷い性被害を受けた者達である。
男女比が物凄く偏っているのは、力を付けた魔女が男性の新弟子を追い出しているからというのもある。
アナスタシア組ではそれを厳しく取り締まっている為、まだ少ないものの、一応それなりに男性魔道師もいる。
というか、独立した者以外で、イリーナ組の稲生とアナスタシア組の数人以外、男性魔道師がいるのかどうかといった有り様である。
マリアもただの新弟子なら追い出すほどの勢いであったが、それまでの稲生との関係もあるので、そこまでには至っていない。
というかマリアもまた、稲生を追い出す動機を失っている。
稲生:「因みに……因みにですよ?他に、どういった場所には行かない方がいいかも教えてもらえますか?」
マリア:「そうだな……。まず、この食堂でお茶とかするから、ここはダメだね。昼食は部屋に運ばせるよ」
稲生:「そうしてもらえると助かります」
マリア:「あとは図書室もダメだな。表向き『勉強会』ってことになってるから、いざ勉強しようとすると、そっちの部屋に行く可能性が高い」
稲生:「図書室ですね。あとは?」
マリア:「もちろん私の部屋もだな。……うん、ものの見事に屋敷の西側で完結してる。だから勇太は東側に避難しておけばいいさ」
稲生:「了解です」
稲生の自室は屋敷東側の2階にある。
イリーナとマリアの部屋は西側だ。
マリア:「あっ、忘れてた!あそこもだ!」
稲生:「どこですか?」
マリア:「東側じゃないんだけど、地下のプール」
稲生:「プールですか?いくら暦の上では春でも、外はまだ雪ですよ?」
マリア:「分かってる。ここのプールは温水プールにもできるから、それで入ろうと思えば冬でも入れるの」
稲生:「スキーとかやらないんですか」
マリア:「ダンテ一門でスキー場やってるのはいないから」
稲生:「ん???」
マリア:「ほら、スキー場に女だけで行くと、男に声を掛けられるだろう?それがアウト」
稲生:「あ、なるほど!」
ここなら完全に専用施設であるから、そのような心配も無いわけだ。
マリア:「勇太が変な気を起こさなければ大丈夫」( ̄ー ̄)
稲生:「マリアさんにも殺されてしまいますので、肝に銘じておきます」
[同日10:00.天候:曇 同屋敷]
エントランス前に魔法陣が表れ、そこから現れる魔女もいれば、ホウキに跨って舞い降りる魔女もいる。
尚、“魔女の宅急便”を見て頂ければ分かるが、柄に跨ると股が痛くなるので、股に負担の掛かりにくいふさの部分に跨っている。
ホウキに跨る魔女が現れたが、これはエレーナではない。
エレーナは厳密に言えば3期生に当たる為、実はマリアの後輩になり、稲生と同期ということになる(但し、稲生と比べれば弟子入りの時期は明らかに早い為、3期生の中では稲生の先輩になる)。
マリアの方も番狂わせがあったので2期生となっているが、3期生という見方もあり、この辺は混乱している。
だからエレーナもこの番狂わせの混乱を利用して、マリアの同期になってみたり、稲生の先輩になってみたりしている。
ジーナ:「こんにちは」
クリス:「日本は凄い雪だねぇ」
シンシア:「マリアンナ、久しぶり!」
マリア:「おー!皆、元気そうじゃない!」
欧州人らしく盛大にハグする魔女達。
これだけ見ると、魔道師の恰好をしただけの普通の若い白人女性達のようにしか見えない。
マリア:「入って入って」
ジーナ:「あの男はいる?」
マリア:「分かってる。勇太は部屋に閉じ込めておいた」
マリアはしたり顔で同期生達にそう説明した。
マリア:「お茶とお菓子を用意してるから、そっちで話そう」
マリアは大食堂を指さした。
メイド人形が恭しく観音開きのドアを開ける。
クリス:「! ちょっと待って!」
ロングの黒髪をしたクリスが立ち止まった。
マリア:「なに?」
クリス:「あの男が覗いてるわ!!」
マリア:「部屋に閉じ込めてるはずだよ!?」
クリス:「水晶球で覗き見してるわ!!」
稲生:「やばっ、バレた!!」
慌てて水晶球の画像を消去する稲生だった。
直後、室内の内線電話が鳴る。
西洋風の黒電話(北の国の委員長さんじゃないよ)といった形であり、古風のジリジリベルが鳴り響く。
稲生:「は、はい!稲生です!」
マリア:「何やってんの!見習のやってることなんて、すぐにバレるんだからね!余計なことしないで!!」
稲生:「すす、すいませんでしたぁ!」
全力土下座ばりに謝る稲生だった。
マリア:「一応言っといたから、これで勘弁してくれ」
クリス:「マリアンナも後輩の躾がなってないね」
ジーナ:「いくらマリアンナを振り向かせたからって、ちょっと調子に乗らせ過ぎじゃない?」
シンシア:「少しは興味あるけどね。日本人の方がマリアンナを振り向かせただなんて」
クリス:「シンシア!」
シンシア:「あー、喉乾いた!ダージリンの紅茶が飲みたいね」
マリア:「用意してあるから」
マリアは魔女仲間3人を案内しながら思った。
マリア:(昔の私も、こんな感じだったのかなぁ?)
と。
稲生:「ごちそうさまでした」
稲生達は朝食を終えた。
イリーナ:「いよいよ明日出発だね。先生は色々と準備の為に出掛けて来るから、2人は家の中で自習しててね」
稲生:「分かりました」
マリア:「師匠、私の場合は……」
イリーナ:「おー、確か同期のコ達が遊びに来るんだったね。いいわよ。長い生涯、たまには同年のコ達と楽しむのも悪くはないからね」
マリア:「ありがとうございます」
イリーナ:「ま、今は晴れてるけど、午後からまた雪になるから、今日は家にいた方がいいね」
稲生:「先生の予知ですか?」
イリーナ:「たまには自分の運勢を占ってみるのも面白いものだよ」
イリーナはそう言って食後の紅茶を飲み干すと、一旦は自室に戻っていった。
というか、恐らくそのまま瞬間移動の魔法で出掛けるつもりだろう。
ダンテの移動も商業便だし、そこまで行くのも高速バス。
しかしイリーナが個人的に出掛ける時は魔法と、何だか魔法の使用基準が今1つまだ理解できない稲生だった。
稲生:「マリアさん、先輩方が来られるのは何時頃ですか?」
マリア:「一応、10時に約束している」
2人は大食堂内に設置されている時計を見た。
振り子が左右に揺れる度にカッチコッチ言っている。
英語ではティック・タックか。
マリア:「全員男嫌いだから、勇太には申し訳無いけど2階に避難してて」
稲生:「分かりました。僕も命は惜しいので」
マリア:「帰ったら教えるから」
稲生:「はい」
ダンテ一門の魔女は多くが人間時代、酷い性被害を受けた者達である。
男女比が物凄く偏っているのは、力を付けた魔女が男性の新弟子を追い出しているからというのもある。
アナスタシア組ではそれを厳しく取り締まっている為、まだ少ないものの、一応それなりに男性魔道師もいる。
というか、独立した者以外で、イリーナ組の稲生とアナスタシア組の数人以外、男性魔道師がいるのかどうかといった有り様である。
マリアもただの新弟子なら追い出すほどの勢いであったが、それまでの稲生との関係もあるので、そこまでには至っていない。
というかマリアもまた、稲生を追い出す動機を失っている。
稲生:「因みに……因みにですよ?他に、どういった場所には行かない方がいいかも教えてもらえますか?」
マリア:「そうだな……。まず、この食堂でお茶とかするから、ここはダメだね。昼食は部屋に運ばせるよ」
稲生:「そうしてもらえると助かります」
マリア:「あとは図書室もダメだな。表向き『勉強会』ってことになってるから、いざ勉強しようとすると、そっちの部屋に行く可能性が高い」
稲生:「図書室ですね。あとは?」
マリア:「もちろん私の部屋もだな。……うん、ものの見事に屋敷の西側で完結してる。だから勇太は東側に避難しておけばいいさ」
稲生:「了解です」
稲生の自室は屋敷東側の2階にある。
イリーナとマリアの部屋は西側だ。
マリア:「あっ、忘れてた!あそこもだ!」
稲生:「どこですか?」
マリア:「東側じゃないんだけど、地下のプール」
稲生:「プールですか?いくら暦の上では春でも、外はまだ雪ですよ?」
マリア:「分かってる。ここのプールは温水プールにもできるから、それで入ろうと思えば冬でも入れるの」
稲生:「スキーとかやらないんですか」
マリア:「ダンテ一門でスキー場やってるのはいないから」
稲生:「ん???」
マリア:「ほら、スキー場に女だけで行くと、男に声を掛けられるだろう?それがアウト」
稲生:「あ、なるほど!」
ここなら完全に専用施設であるから、そのような心配も無いわけだ。
マリア:「勇太が変な気を起こさなければ大丈夫」( ̄ー ̄)
稲生:「マリアさんにも殺されてしまいますので、肝に銘じておきます」
[同日10:00.天候:曇 同屋敷]
エントランス前に魔法陣が表れ、そこから現れる魔女もいれば、ホウキに跨って舞い降りる魔女もいる。
尚、“魔女の宅急便”を見て頂ければ分かるが、柄に跨ると股が痛くなるので、股に負担の掛かりにくいふさの部分に跨っている。
ホウキに跨る魔女が現れたが、これはエレーナではない。
エレーナは厳密に言えば3期生に当たる為、実はマリアの後輩になり、稲生と同期ということになる(但し、稲生と比べれば弟子入りの時期は明らかに早い為、3期生の中では稲生の先輩になる)。
マリアの方も番狂わせがあったので2期生となっているが、3期生という見方もあり、この辺は混乱している。
だからエレーナもこの番狂わせの混乱を利用して、マリアの同期になってみたり、稲生の先輩になってみたりしている。
ジーナ:「こんにちは」
クリス:「日本は凄い雪だねぇ」
シンシア:「マリアンナ、久しぶり!」
マリア:「おー!皆、元気そうじゃない!」
欧州人らしく盛大にハグする魔女達。
これだけ見ると、魔道師の恰好をしただけの普通の若い白人女性達のようにしか見えない。
マリア:「入って入って」
ジーナ:「あの男はいる?」
マリア:「分かってる。勇太は部屋に閉じ込めておいた」
マリアはしたり顔で同期生達にそう説明した。
マリア:「お茶とお菓子を用意してるから、そっちで話そう」
マリアは大食堂を指さした。
メイド人形が恭しく観音開きのドアを開ける。
クリス:「! ちょっと待って!」
ロングの黒髪をしたクリスが立ち止まった。
マリア:「なに?」
クリス:「あの男が覗いてるわ!!」
マリア:「部屋に閉じ込めてるはずだよ!?」
クリス:「水晶球で覗き見してるわ!!」
稲生:「やばっ、バレた!!」
慌てて水晶球の画像を消去する稲生だった。
直後、室内の内線電話が鳴る。
西洋風の黒電話(北の国の委員長さんじゃないよ)といった形であり、古風のジリジリベルが鳴り響く。
稲生:「は、はい!稲生です!」
マリア:「何やってんの!見習のやってることなんて、すぐにバレるんだからね!余計なことしないで!!」
稲生:「すす、すいませんでしたぁ!」
全力土下座ばりに謝る稲生だった。
マリア:「一応言っといたから、これで勘弁してくれ」
クリス:「マリアンナも後輩の躾がなってないね」
ジーナ:「いくらマリアンナを振り向かせたからって、ちょっと調子に乗らせ過ぎじゃない?」
シンシア:「少しは興味あるけどね。日本人の方がマリアンナを振り向かせただなんて」
クリス:「シンシア!」
シンシア:「あー、喉乾いた!ダージリンの紅茶が飲みたいね」
マリア:「用意してあるから」
マリアは魔女仲間3人を案内しながら思った。
マリア:(昔の私も、こんな感じだったのかなぁ?)
と。