報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「初日の夜」

2019-03-28 19:11:44 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月13日18:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 寿司屋:「毎度ー、報恩寿司です」
 稲生勇太:「はーい」

 勇太は出前の寿司を取りに行った。
 今日はマリアの歓迎会の為、寿司やオードブルを注文している。

 稲生宗一郎:「そうですか。今日は偉い先生が御来日で」
 マリア:「はい、そうです」
 宗一郎:「これはまた、日本語が上手くなりましたなぁ」
 マリア:「話すのは何とか上手くなりましたが、まだ文字の方が難しくて……」
 宗一郎:「日本語は漢字やら平仮名やら片仮名までありますからな、その気持ちは分かります」

 因みに顔文字もまた日本オリジナルらしく、アメリカのCIAが本気でスパイの暗号だと思って調査したらしい。

 勇太:「父さん!酒屋さんも来たよ!お金ちょうだい!」
 宗一郎:「ほら、財布ごと持ってけ」

 稲生は大きな寿司桶をテーブルの上に置いた。

 宗一郎:「確か生魚は苦手でしたね。オードブルも、もうすぐ届くと思うので、それで……」
 マリア:「いいえ。チャレンジしてみます」
 宗一郎:「無理しなくていいんですよ」
 マリア:「少しずつトラウマを解消して行きたいんです」
 宗一郎:「素晴らしい向上心だ。しかし、アレルギーの場合は別ですよ?」
 マリア:「大丈夫です。アレルギーではありませんので」
 宗一郎:「それならいいんですが……」

 また勇太が両手に酒瓶抱えてダイニングにやってくる。

 勇太:「はい、ワインとビール!あとは……」
 宗一郎:「ああ、適当に置いてくれ」

 ピンポーン♪

 勇太:「今度はオードブル来たーっ!」キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!(←これがCIAにはスパイの暗号に見えるらしい)
 宗一郎:「騒がしいヤツめ」
 稲生佳子:「一気に注文したものだから、一気に来ましたねー」
 宗一郎:「そりゃそうだろ。到着時間指定まで一緒にしたんだから」
 マリア:(やっぱり勇太のダディだわ……)

 今度は両手にオードルブルの載った大皿を持って来た稲生。

 勇太:「到着です!」
 宗一郎:「よし。じゃあ、早速食べよう」

 グラスにワインやビールを注ぐ。
 そして、皆で乾杯。

 勇太:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。頂きます」
 宗一郎:「相変わらず、信心深いヤツだな」
 勇太:「父さん達はいつ御受誡してくれるの?」
 宗一郎:「そうだなぁ……。今度は勇太がキリスト教でも始めて、今度こそ家庭不和にしそうになったら考えるよ」
 勇太:「“となりの沖田くん”のネタだね!あれは統一教会だったけど……。その手があったか!」
 宗一郎:「いや、本当に実行したら勘当モノだぞ?」
 マリア:「ついでにダンテ門流も破門になるぞ」

 魔女狩りを過去進行形・現在進行形不問で関わった宗教の信仰は厳禁とされている。
 その為、その証拠が無い仏教だけは例外的に認められている。
 だから稲生もダンテ一門に入門するに当たり、日蓮正宗の信仰を禁止されることは無かったのだが……。

 勇太:「それは困ります!僕の信仰は日蓮大聖人一筋ですって……」
 マリア:(どうしてブッダだけはOKなのかも疑問なんだが……)

 ダンテの姿は褐色肌のアジア系だという。
 つまり、仏教圏の国と深く関わっているからだと言われるが……。

 宗一郎:「マリアさん、イリーナ先生はこちらに寄られるの?」
 マリア:「あ、はい。そのつもりです。大師匠様がいつ日本を出発されるか分からないので、それを教えてもらうことになっています」
 宗一郎:「そうなのか」
 勇太:「あ、補足補足。出発予定日は聞いてるんだけど、どの飛行機に乗るかまでは聞いてないから、それを教えてもらおうかと思って」
 宗一郎:「そういうことか」
 勇太:「先生もこちらに寄られるよ。なに?また占いしてもらうの?株価?」
 宗一郎:「内緒だよ。それにしてもマリアさんは、会う度に日本語は上手くなっても、体は大きくならないねぇ……」
 佳子:「そういうこと言っちゃ失礼でしょ」
 マリア:「結構です。事実ですから」
 佳子:「でも、少しだけ背が伸びた気はするわ」
 宗一郎:「そうだねぇ……」
 佳子:「マリアさんはおいくつになったの?」
 マリア:「あ、えーと……それは……」
 宗一郎:「おいおい、欧米では女性に歳を聞くのは失礼なんだ。佳子も人のことは言えないぞ」
 佳子:「あら、ごめんなさい」
 稲生:(魔の者と北海道で戦った時、マリアさんは実年齢25歳になったはず。あれから、何年経ったんだ?)

 魔道師の肉体の成長並びに老化は極端に遅い。
 今の体を200年から300年くらい使うほどだという。
 これをダンテ一門では『耐用年数』と呼んでいる。
 まるで機械のようだ。

 稲生:(いずれは父さん達に、魔道師のからくりを話さないといけないな)

 多分、日蓮正宗の折伏より強い怨嫉が待っていることだろう。
 しかし、どうしようもない。

[同日20:00.天候:晴 稲生家]

 佳子:「あら?マリアさん、1階のお風呂に入ったの?」
 勇太:「そ、そうなんだ。たまには普通のお風呂に入りたいって」

 勇太は何故か動揺しながら答えた。
 マリアは2階のシャワールームを気に入って使っていた。
 それは勇太の部屋の、ほぼ真向いにある。
 元々はトイレの横に設置されていた洗面台があった場所だった。
 過去に妖狐の威吹が逗留している間、威吹と敵対する妖怪や勇太の霊力を狙う妖怪の脅威に晒された稲生家。
 その対策として洗面台をシャワールームに改装する必要に迫られる事態に陥ったことがあり、その名残である(その経緯については省略する。まあ、“ゲゲゲの鬼太郎”辺りで取り上げられてそうなネタだ)。
 母親にそう答えた勇太は、そそくさと2階に上がった。
 そして、シャワールームを開ける。
 そこは使った形跡があった。

 勇太:(危ない危ない。マリアと一緒に使ったのがバレるところだったよ……)

 意味は【お察しください】。
 と、そこへ勇太のスマホに着信が入る。

 勇太:「はい、もしもし?」

 電話に出ながら部屋に入った。

 鈴木:「稲生先輩、鈴木です」
 勇太:「あー、鈴木君、久しぶり。なに?4月から都内の電子専門学校に入るんだって?これで『職業:無職』から『職業:専門学校生』って書けそうだね」
 鈴木:「おかげさまで。エレーナと付き合うにも無職男じゃカッコ悪いんで、親に頼んで通わせてもらうことにしましたよ」
 勇太:「で、卒業後はSEかゲームクリエイターってところかい?」
 鈴木:「一応そのつもりです」
 勇太:「キミは元々パソコンのスキルがずば抜けて高いんだから、専門学校に通わなくても大丈夫だと思うけどね?」
 鈴木:「モラトリアム期間ですよ。ニートがいきなり就職して上手く行くはずがないと思って。猶予期間として、学生の期間を設けようと思ったんです」
 勇太:「なるほど。専門学校だと2年間?」
 鈴木:「そうです。先輩の大卒学歴には足元にも及びませんけど……」
 勇太:「いや、いいんだよ。魔道師の世界は、別に大卒の学歴なんて必要無いんだから」
 鈴木:「それで先輩、用件ですが……」
 勇太:「おー、そうだ。何の用だい?」
 鈴木:「先輩の通ってた東京中央学園上野高校に伝わっている『飴玉婆さん』について知っていることを教えてもらえませんか?」
 勇太:「何だって?」
コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“魔女エレーナの日常” 「飴玉婆さん」

2019-03-28 10:08:26 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月13日13:00.天候:晴 東京都台東区上野]

 エレーナと鈴木は秋葉原から御徒町へ移動し、そこで昼食を取った。
 御徒町〜上野まで商店街があり(アメ横とは逆の東側)、そこで食べた。

 エレーナ:「まさかランチにステーキが食えるなんて、さすが鈴木だぜ。ごちそーさん!」
 鈴木:「稲生先輩から聞いたんだ。秋葉原にも姉妹店があるんだけど、こっちにもあるって。で、こっちの方がテーブル席もあるから、ゆっくり食えるだろうと思って」
 エレーナ:「なるほど。アキバだけではなかったか」
 鈴木:「もち」👍
 エレーナ:「御徒町には私も色々と魔法具の仕入れに行ったりもするけど、この店はノーマークだったな」
 鈴木:「魔法具売ってる店なんてあるの?」
 エレーナ:「内緒だぜ?あとは錦糸町にもある」
 鈴木:「へえ……。その人達も魔法使い?」
 エレーナ:「とは限らないぜ。単なる『協力者』ってなだけの場合が殆どだ」
 鈴木:「そうなんだ」
 エレーナ:「うちのホテルのオーナーだってそうだろ?」
 鈴木:「あのオーナー、魔法使いじゃないの?」
 エレーナ:「違う違う。どういう経緯だか知らんが、『協力者』なだけだ。“魔女の宅急便”でいうところの、パン屋さんみたいなものだな」
 鈴木:「なるほど。それは分かりやすい」
 エレーナ:「もっとも、キキみたいに行き当たりばったりで住み込んだわけじゃないんだが……」
 鈴木:「その魔法具屋っての、見てみたい」
 エレーナ:「ああ?フツーの人間が見たって、ただのガラクタだぜ?」
 鈴木:「いいよいいよ。エレーナがどんなのを欲しがるのか見てみたい」
 エレーナ:「うーん……。まあ、いいか。どうせ魔法使いのセンスなんて、ただの人間には分からないぜ」
 鈴木:「是非!」
 エレーナ:「分かったから、ここの支払いもよろしくだぜ」
 鈴木:「了解!」

 鈴木はエレーナの分のステーキ代もしっかり支払った。

 鈴木:「この近くなの?」
 エレーナ:「ああ。とんだ『灯台下暗し』だぜ」

 本当に徒歩数分の御近所さんであった。
 店の佇まいは、よくあるリサイクルショップである。
 昔は古道具屋とか古着屋とか言ったものだ。

 エレーナ:「ちぃーっス!」
 店長:「あら、エレーナちゃん。いつも御贔屓にね」
 エレーナ:「こいつが魔法具を見たいって言ってるもんで、フツーの人間でも分かるものでも見せてくれだぜ」
 店長:「あら?エレーナちゃんが男の子を連れて来るなんて、きっと明日は雪が降るわね」
 エレーナ:「うるせーよw」
 鈴木:「ど、どうも……」

 まるでエレーナを老婆にしたかのような、高齢の店長であった。
 この店長自身が、まるで魔法使いのお婆さん的な……。

 エレーナ:「せっかく来たんだ。何か掘り出し物でもあったら紹介してくれだぜ」
 店長:「『飴玉婆さんの飴の材料』とかどう?」
 エレーナ:「鈴木にはインパクト強過ぎだぜ。次!」
 鈴木:「え?なになに?」
 店長:「『逆さ女のぶら下がり健康器』とか」
 エレーナ:「マニアック過ぎだぜ」
 鈴木:「見た目はただのぶら下がり健康器だけどねぇ……」
 エレーナ:「水晶球とか、タロットとか無いのか?」
 店長:「『悪魔の二対のトランプ』が最近入ったわよ?」
 エレーナ:「ギャンブル好きの男子高校生には売るなよ?……でも、少し興味があるな」
 鈴木:「見た目はただのトランプ……うわっ!」

 鈴木がトランプを手に取って絵柄を見てみた。
 そこにあったのは、顔が半分ドクロになっている女の絵柄であった。
 もう一対のトランプを見ると、そちらは顔が半分ドクロになっている男の絵柄。
 物凄く不気味である。
 ただ、ドクロになっていない人間の顔を見ると、女の方はギャル系、男の方はギャル男といった感じだった。

 鈴木:(AVに出て来そうな男女の顔だなぁ……)
 エレーナ:「鈴木、悪いこと言わないから、オマエはどれにも手を付けない方がいいぜ。あくまで、見るだけだ」
 鈴木:「分かったよ」
 エレーナ:「でも私はこのトランプ、買いだぜ」
 店長:「毎度あり。どっちにする?」
 エレーナ:「そりゃ、魔女としては男の方だぜ」
 店長:「さすがエレーナちゃん、目が高いねぇ」
 鈴木:「あ、あの、支払いなら俺が……」
 エレーナ:「ああ、これはいいぜ。これはあくまでも、魔女の買い物だ。人間は引っ込んでくれだぜ」

 『悪魔のトランプ』だけはエレーナが自腹で購入した。

 エレーナ:「あれの『女の方』を手にしたヤツの地獄絵図が楽しみだぜ」
 鈴木:「一体、何なんだい?そのトランプは?」

 するとエレーナはズイッと顔を鈴木に近づけた。
 あと数センチでキスしそうな勢いだ。

 エレーナ:「死にたくなかったら、これ以上手を突っ込むのはやめておけ」
 鈴木:「う、うん……分かった……」

 エレーナの緑色の瞳に見据えられ、鈴木は頷かざるを得なかった。

 店長:「手じゃなくて首ね。あ、そうそう、エレーナちゃん。新情報を手に入れたんだけど聞く?」
 エレーナ:「何かあるのか?」
 店長:「さっき『飴玉婆さん』を出したでしょう?」
 エレーナ:「正体はうちの先輩のキャサリンだぜ。それがどうした?」
 店長:「また最近、東京中央学園に現れてるみたいよ?それで、うちも材料を仕入れてみたんだけどねぇ……」
 エレーナ:「ほお……?シマ荒らしか?」
 店長:「エレーナちゃんの知り合いで、『飴玉婆さん』を始めた人がいないのであれば、そうなるわね」
 エレーナ:「分かった。ちょっとだけ調査してみるぜ」

 2人はここから近い東京中央学園上野高校に行ってみることにした。

 鈴木:「ここは稲生先輩の母校じゃないか」
 エレーナ:「昔は怪奇現象のイオンモールみたいな学校だったんだぜ?」
 鈴木:「どんな学校だよ!よくそんな所に先輩通ったな!」
 エレーナ:「『飴玉婆さん』も、その怪奇現象の1つだ。もっとも、その正体は私の先輩だったんだがな」
 鈴木:「それって……?」
 エレーナ:「前に言わなかったか?私達は怪奇現象を『起こす側』だって。怖くなったら先に帰っていいぜ?」
 鈴木:「いや、乗り掛かったバスだ。最後まで行ってみるさ」
 エレーナ:「乗り掛かった舟だろ?まあ、いいや」
 鈴木:「で、どうするの?」
 エレーナ:「どうもこうもないさ。『婆さん』は学校の中には入らない。学校から出て来る生徒を狙って、飴玉を渡すんだ。そこを現行犯で捕えるしかない。……って、こりゃ時間掛かりそうだな」
 鈴木:「そう簡単に尻尾を出すような『婆さん』でも無いんだろ?まずはあの店長の情報が本当なのかどうか、調べてからでもいいんじゃないか?」
 エレーナ:「で、どうするんだ?私はもうホテルに戻らないといけない」
 鈴木:「だから、ホテルに戻るんだよ」
 エレーナ:「は?」
 鈴木:「ホテルに併設しているレストランの店長さんって、エレーナの先輩だろ?」
 エレーナ:「あっ、そういうことか!」

 エレーナはポンと手を叩いた。

 エレーナ:「そういうことなら、早いとこ戻ろうぜ」
 鈴木:「あ、何かもう一泊したくなってきた」
 エレーナ:「おあいにく様、今日は満室だぜ」
 鈴木:「ちっ。……儲かりまっか?」
 エレーナ:「ぼちぼちでんな。って、何だこのやり取りw」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする